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Yahoo!広告活用の今を追う(AD)

自社とYahoo! JAPANデータの掛け合わせでコミュニケーションを進化させるANAのデジマ戦略

 新たな広告ソリューションやデータ活用サービスの開発にも力を入れているYahoo! JAPANによる本連載。この数年の“爆速”的な変革に加え、2015年4月にはマーケティング機能をセントラライズ化し、ドラスティックなマーケティング活動を推進している。今回は、数年前よりヤフーと協業してデータを活用した施策に取り組むANAから西村健氏を迎え、顧客満足の考え方と前例のない施策の実現方法に迫った。

“深い”自社データד広い”ヤフーデータ

友澤:今回は、もう5年近く協業させていただいているANAから、デジタルマーケティングを牽引する西村さんにお越しいただきました。顧客満足のために、早くからデータ活用によるCRMに注力されていますが、近年は特に、言い表すなら“深い”自社データとデイリーハビットのような“広い”ヤフーのデータに注目しアプローチを実践されています。ぜひ、そのあたりのお考えをうかがいたいと思います。

西村:よろしくお願いします。ヤフーさんにはやはり、相当な量と種類のデータが蓄積されていますよね。実際、当社サイトへの流入をみても、Yahoo! JAPANからが多いんです。顧客への訴求を考えると、媒体としてだけでなく、日ごろからデータ面でもしっかり組ませてもらわないと遅れを取ると思っています。

ヤフー株式会社 マーケティング&コミュニケーション本部 本部長 友澤大輔氏 全日本空輸株式会社 マーケティング室 マーケットコミュニケーション部 デジタルマーケティングチーム 西村健氏
ヤフー株式会社 マーケティング&コミュニケーション本部 本部長 友澤大輔氏(写真左)
全日本空輸株式会社 マーケティング室 マーケットコミュニケーション部 
デジタルマーケティングチーム 西村健氏(写真右)

友澤:そう言っていただけると、うれしいですね。直近では、Yahoo! DMPを使ってYahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)を配信したANAカードのアップグレード施策を実施されましたが、手応えとしてはどうでしたか?

西村:クレジットカード会員のアップグレード促進というのが目的だったので、「一般カード会員へゴールドカード会員の提案」「ゴールド会員へプレミアム会員の提案」と、絞り込んだ訴求をしたかったんです。結果からいうと、これまでの無駄が省けた分、予算配分の最適化も含めて効率としては5~6倍効率化できました。もちろん、獲得数も増えています。

「ANAとして実現したいこと」を常に明確に

友澤:もともと、Yahoo!ディスプレイアドネットワーク(YDN)ではアプローチされていたんですよね。

西村:ええ。ただ、リターゲティングなのでリーチが不十分だったんです。自社に来ない人についてがわからないというのが課題としてありました。そういう人とコミュニケーションをとりたいというのが今回の施策の背景です。

 弊社のCRMデータとヤフーさんのデータをYahoo! DMPで掛け合わせ、そこで抽出したリストにクリエイティブも分けた上でYDNでアプローチすることで、相当な成果を得られました。リーチを最大化し、かつ細かくセグメント設定した上でクリエイティブの出し分けができたことも大きかったです。

友澤:弊社もデータ活用に対して相当厳しいですが、ANAさんも取得できる顧客情報が深いだけに、これ以上ないくらいデータ活用には厳しいですよね。

西村:はい、そうですね。お客様の大事なデータですので、施策の度に法務には何度も確認しています。

友澤:最近はメディアとしてのYahoo! JAPANだけでなく、データ面での協業に興味を持たれる企業様も増えてきたんですが、実際に取り組むとなると、一足飛びにはいかないことが多いんです。その点、御社が踏み出せた理由は何でしょうか?

西村:当社の場合、「顧客満足が第一」という横串が全社を貫いています。データ活用もそのための取り組みなので、迷いはなかったですね。今も社内調整は出てきますが、ヤフーさんの営業担当には常に「こういうことをしたいんだけど、できる?」とぶつけています(笑)。

社内を動かせるかはマーケターの「翻訳力」次第

友澤:広告主としての意向を明確にした上で、媒体社と直接話をしているから、スピード感があるんですね。

西村:そう思います。施策の運用を支えてくれている全日空商事のメンバーとも、ヤフーさんの営業担当が膝を突き合わせて議論をしてくれて、心強いですよ。

 もちろん、議論を重ねた上で実現が難しいこともありますが、極力僕らの要望を満たす策を考えたいという姿勢を示してもらえる。ヤフーさんが掲げる「課題解決エンジン」という言葉が、僕には響いているんです。逆に、データはあくまで素材なので、広告主が何をしたいのかしっかり意志を持っていないと、何も進まないと考えています。

友澤:新しい取り組み、特にデータ関連は、社内の理解が得られずに進まないケースもあります。御社ではどうされているんですか?

西村:そこは私の場合、徹底的に噛み砕いて社内に説明するようにしています。今回の施策については「DMPとは、ただの箱なんです。格納庫なんですよ。そこにデータを設置しないとこの施策はできないんです」と目線を合わせて説明するようにしましたね。

 先行者メリットを考えると、前例のない取り組みも多くなる分、社内への啓発や浸透は重視しています。いくら施策自体がすばらしくても、社内の理解を得て動かさないと成果につながらない。それで会社が前進するかどうかは、マーケターの腕次第かなと思います。

友澤:翻訳する力、大事ですね。

役員から現場まで理解を得て取り組みたい

西村:どの施策も顧客満足度の向上のために行っていますが、お客様にはすぐにご理解いただけないこともあります。例えばコールセンターにバナー広告について意見が届くこともまれにあります。お客様第一で必要としている人にそのようなお知らせをしている点、センターのスタッフにも僕らの考えを伝え、それを踏まえて対応してもらっています。

 やるからには担当役員を含む上層部から現場にまで理解してもらって、皆で気持ちよく取り組みたい。こそこそしたくないんですよ、性格的に(笑)。

友澤:なるほど(笑)。経営層への説得は、具体的にどういう点がポイントになりますか?

西村:まずは、メリットを明確にすること。「実現したい」という熱量と、メリットの提示は、常にセットです。コストセーブも含めたメリットを定量化した上で、トレンドを説明します。

 ヤフーさんからはいち早くご提案いただくことも多いので、逃す手はないと力説することもあります。今回の場合は、「不可能が可能になる」とも説明しましたね。加えて大事なのは、リスク管理です。想定される事態と対策を明確にしています。

友澤:最先端を押さえながら、社内のコミュニケーションに労を割くと。両方ともマーケターがすべきことですが、後者は最先端への反発も大きかったりして相容れないので、両立が難しい。

 その点、西村さんはANAがデジタルマーケティングですべきことを強い思いをもって推進し、同時にリスク管理も含めて関係者をコミュニケーションでまとめていく、完全に二刀流だと思いました。このバランスが、御社の成果につながっているんですね。

「実現したい」熱量を持って、悩まずに前へ進む

西村:コミュニケーションは、あくまでマーケティングを展開するための手段ですから。実現したい施策が明確なら、あとは実現に向けて手を尽くすのみです。やりたいことが実現できるなら、すぐにチャレンジする。そこに時差があると、新しい施策が見つかったときに悩んでしまうので、私は常に「やりたいこと」と「できること」を一致させておきたいんです。

 また、新たな施策を進めるにあたっては、常にPDCAサイクルを回していくことが重要だと思っています。経験則にこだわらず、まずはやってみよう、という土壌はつくるようにしています。

友澤:デジタルならではの利点を活かせるスタンスですね。

西村:右肩上がりが続く施策はないので、頭打ちになる前に仕組み化して維持しながら、次の策を打つ。決断が遅いとその間に先行者メリットもなくなってしまうので、悩まずにシンプルに回したいんです。

友澤:先ほど“熱量”と言われましたが、泥臭いかもしれないけど、当人の熱量は大事ですよね。なおかつ、自分の主張に巻き込むよりも、ときには相手が発散していることに意図的に巻き込まれながら、目的に近づく方がスムーズだったりする。私は最近、実は“巻き込まれ力”が大事だと各所で話しているんです。

「一人十色」の時代、瞬間のモチベーションをどう捕らえるか

西村:なるほど、相手の主張に“巻き込まれ”ながら、うまく着地点へ誘導するようなやり方ですね。

友澤:その力が、社内だけでなく社外にも働いているから、グループ会社や我々のようなパートナー企業もドライブしているのだと感じました。

 今、CRMの意味合いがすごく広がっていますよね。以前はDMのような、自社データを使った深いコミュニケーションを指していました。これは今後も大事だと思いますが、加えて冒頭でお話いただいたANAカードの施策のように、Yahoo! JAPANで分かるユーザーの興味関心データとの掛け合わせで、潜在顧客層へのアプローチまでCRMの範疇になってきています。

西村:まさに、そこがヤフーさんとの協業の醍醐味だと思っています。リーチを確保しつつ、自社データと付き合わせれば縦に深くなる。これが大きいです。

友澤:今は「十人十色」を超えて「一人十色」と言ってもいいくらい、一人のユーザーの中にさまざまなパーソナリティーがあり、時と場合によってモチベーションも変わります。そうすると、趣味趣向や過去に見てきたものが、効果のあるターゲティングやクリエイティブを見出すのにさらに重要になると思います。

西村:同感です。現状、ヤフーさんとの取り組みでは検索など行動ベースでセグメントしていますが、今後は逆に「こういうセグメントの人がどんな行動をとっているのか」という、セグメントベースでの施策も探りたい。当然、こちらも仮説を持つことが前提ですが、そういうキャッチボールもできるといいですね。

参考リンク:Yahoo! DMP

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この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2016/02/09 23:53 https://markezine.jp/article/detail/22783