社内を動かせるかはマーケターの「翻訳力」次第
友澤:広告主としての意向を明確にした上で、媒体社と直接話をしているから、スピード感があるんですね。
西村:そう思います。施策の運用を支えてくれている全日空商事のメンバーとも、ヤフーさんの営業担当が膝を突き合わせて議論をしてくれて、心強いですよ。
もちろん、議論を重ねた上で実現が難しいこともありますが、極力僕らの要望を満たす策を考えたいという姿勢を示してもらえる。ヤフーさんが掲げる「課題解決エンジン」という言葉が、僕には響いているんです。逆に、データはあくまで素材なので、広告主が何をしたいのかしっかり意志を持っていないと、何も進まないと考えています。
友澤:新しい取り組み、特にデータ関連は、社内の理解が得られずに進まないケースもあります。御社ではどうされているんですか?
西村:そこは私の場合、徹底的に噛み砕いて社内に説明するようにしています。今回の施策については「DMPとは、ただの箱なんです。格納庫なんですよ。そこにデータを設置しないとこの施策はできないんです」と目線を合わせて説明するようにしましたね。
先行者メリットを考えると、前例のない取り組みも多くなる分、社内への啓発や浸透は重視しています。いくら施策自体がすばらしくても、社内の理解を得て動かさないと成果につながらない。それで会社が前進するかどうかは、マーケターの腕次第かなと思います。
友澤:翻訳する力、大事ですね。
役員から現場まで理解を得て取り組みたい
西村:どの施策も顧客満足度の向上のために行っていますが、お客様にはすぐにご理解いただけないこともあります。例えばコールセンターにバナー広告について意見が届くこともまれにあります。お客様第一で必要としている人にそのようなお知らせをしている点、センターのスタッフにも僕らの考えを伝え、それを踏まえて対応してもらっています。
やるからには担当役員を含む上層部から現場にまで理解してもらって、皆で気持ちよく取り組みたい。こそこそしたくないんですよ、性格的に(笑)。
友澤:なるほど(笑)。経営層への説得は、具体的にどういう点がポイントになりますか?
西村:まずは、メリットを明確にすること。「実現したい」という熱量と、メリットの提示は、常にセットです。コストセーブも含めたメリットを定量化した上で、トレンドを説明します。
ヤフーさんからはいち早くご提案いただくことも多いので、逃す手はないと力説することもあります。今回の場合は、「不可能が可能になる」とも説明しましたね。加えて大事なのは、リスク管理です。想定される事態と対策を明確にしています。
友澤:最先端を押さえながら、社内のコミュニケーションに労を割くと。両方ともマーケターがすべきことですが、後者は最先端への反発も大きかったりして相容れないので、両立が難しい。
その点、西村さんはANAがデジタルマーケティングですべきことを強い思いをもって推進し、同時にリスク管理も含めて関係者をコミュニケーションでまとめていく、完全に二刀流だと思いました。このバランスが、御社の成果につながっているんですね。