データとコンテンツの有効活用で購買を促進
商品を調べに来た消費者の行動を、いかに購買に結び付けるか。これを考える際にポイントとなるのが、「どのような相手に」「どのような体験を提供するか」という2つのステップだ。
まず「どのような相手か」を知るには、顧客を全面包囲で理解すること=360度のビューで顧客を見なくてはならない。これを知るには「データ」が必要になる。次に、そういった顧客にどのような体験をさせるかを考える。商品について初めて知ったのか、これまで何度も検討を重ねてきたのか、どのフェーズにいても満足させる経験をさせなければならない。そこで、ここでも360度の体験を提供するという意識が必要になる。これを実現するのが「コンテンツ」だ。つまり、デジタル戦略において「データ」と「コンテンツ」の2つを活用することは必須要件といえる。
では、具体的にどのようにデータとコンテンツを活用すれば良いのか。松原氏はその一例として、アドビが提供するオーディエンス情報一元管理の「Adobe Audience Manager」を導入しているDeNAの事例を紹介した。
DeNAの主要事業は、ゲームプラットフォーム事業。当然、ユーザーにはより頻繁なゲーム参加を期待している。そこで同社は、かつてゲームをプレイしていたけれど現在は利用していない顧客に、再度ゲームをしてもらうためのマーケティング戦略を立案した。
まず、実際にゲームをプレイしている顧客のアクティビティデータを収集し、ゲームから離脱している期間でプロファイルを開始。ゲーム離脱後「2週間以内」「30日以内」「30日以降」と分け、同社のサイトに再訪した顧客に対し、各セグメントに応じた最適なコンテンツを表示するようにした。具体的には、ゲームから離れてしばらく経ったユーザーには「おかえりなさい」と表示し、さらに一定期間以上経って戻ったユーザーには「おかえりボーナス」という名称の特別ポイントを出すなどし、ゲームへの復帰を誘導。これにより、ゲーム復帰率は67%アップできたという。
松原氏は、「重要な点は、Webサイトを訪問している顧客を理解することです」と語り、そのために必要なデータとして「行動データ」と「属性データ」、そして「心理データ」の3種類を挙げる。
行動データとは、「どんな商品を見たのか」「何を入力したのか」「店舗では何を買ったのか」など、オンライン/オフラインを含めた顧客の行動履歴のこと。属性データとは、年齢や性別など、いわゆるデモグラフィック(デモグラ)データを指す。心理データは顧客のレビューなどブランドに対する意識や好悪の感情だ。これらのデータを集約することで、顧客のプロファイリングを行い、セグメント化していく。そのセグメントに対し、あらゆるチャネルで最適なコンテンツを提供できるようにデジタルチャネルを整備するわけだ。
データを使ってWebサイトの表示を最適化
松原氏は、ここでパナソニックのWebサイト事例を紹介する。パナソニックでは、Webで商品のリッチな世界観を伝えたいという目的の下、アドビが提供するCMSや計測ツール、ターゲティングツールなどを71の国・地域で導入しているという。デモで紹介したのは、中東地域で展開するパナソニックのサイトだ。
中東地域のパナソニック商品サイトに初めてアクセスすると、普通に新商品の大きなトップ画像が表示される。その後、興味ある商品を見るとその行動履歴がデータとして蓄積される。たとえば中東地域では、男性用家電製品としてシェーバーの人気が高い。そこでシェーバー商品を閲覧すると、次回にサイトを訪問した時にはシェーバーがトップのメイン画像に表示されるわけだ。女性ならドライヤーやまつげカーラーなどの美容家電が人気で、これも閲覧履歴に応じてトップメイン画像が変わる。これだけでも、顧客の購買意識に与える影響は大きいのだ。
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