顧客の特徴に応じたコンテンツで購買欲を促進
では「コンテンツ」をどのように活用すれば購買に結び付くのか。
コンテンツが果たす役割は、Webサイトを訪れた人に対し、商品の良さを訴求すること。もともとサイト訪問者は、商品について深く知りたいと思っている。そこで有効なのが、顧客のライフサイクルに合わせて最適なメッセージを送ることだ。
前述の消費者行動調査でもあったように、商品を買う際に「購入した後の生活やライフスタイル」、つまり利用シーンなどがイメージしやすいと購買意欲が湧きやすくなる。つまり、購買意欲を促すコンテンツを、顧客のライフサイクルに合わせて最適なメディアで提供することで購買に結び付ける戦略が有効となる。
たとえばルノージャパンでは、車の色や内装を画面上で自由に変更することで、質感の違いを確認できるというコンテンツを提供している。日産の英国用サイトでは、車を360度ぐるぐる回しながらデザインを確認することで、あたかも店舗で車を眺めているようなエクスペリエンスを実現しているそうだ。
自動車会社でいえば、アウディのWebサイトは「メカ好き」に焦点を合わせたコンテンツを準備。たとえばエンジンを回して眺めたり、当然ながら車体の色を自由に変更できたりといった機能のほか、コンフィギュレーターページで自分好みに車を改造することも可能だ。なお、この改造データは保存もできるので、次にサイトを訪問した時に確認できる。アウディでは商品画像を回して見ることはできないが、内装から外観までクリックひとつでチェックできるのも利便性が高い。もちろん、シートの色を変えることも簡単にできる。
少ない投資でさまざまなチャネルの体験を最適化
こうした多彩なコンテンツ表示を実現しているのが、アドビが提供するCMSソリューション「Adobe Experience Manager」だ。Experience Managerは、画像をドラッグ&ドロップで簡単にCMSに登録することができ、プレビューやタグ付け管理も容易。これらのコンテンツ資産(アセット)を使ってページを編集できる。
同ツールの管理画面で「新規ページ」を選択し、レイアウトを選ぶと、編集画面と登録したアセット一覧が表示される。ページで使いたいアセットを選び、キャッチコピーなどテキストを編集することで簡単にコンテンツを用意できるという。
松原氏によると、コンテンツ施策においてポイントとなるのが、アイディアを形にしていくことだという。その中心で、コンテンツ施策具現化に貢献するのがデジタルアセット管理だ。アドビはもともとPhotoshopやIllustratorなどのクリエイティブ領域に強みがあり、その強みとデジタルマーケティング領域を組み合わせることで、顧客のデジタル戦略を総合的に支援しているという。
松原氏は、アドビの計測ツールやターゲティングツール、CMSツールなどを導入した企業に対し、実装やテスト、構築支援などのコンサルティングサービスを提供している。この中でデジタルマーケティングやコンテンツマーケティングにおける知見、ナレッジを提供するという。このソリューション提供体制について、アドビでは「People(人材)」「Product(製品)」「Process(運用)」という3つのPで表現しているそうだ。
一方で、「デジタルやクリエイティブに精通しているマーケターがいれば、アドビの製品やコンサルティングは不要なのでは」というマーケターもいるかもしれない。これに対し松原氏は、「多様なタッチポイントが次々に生まれている今、できるだけ効率的な投資で顧客にベストな体験を提供できる環境作りが重要」と説明し、「デジタルマーケティングに最適化したソリューションを選択することは、少ない投資で効果を最大化させることにつながる」と語る。
今の時代、デジタルチャネルに不備があれば、それがビジネスを大きく阻害するのは間違いない。そんな状態で認知度向上のためにマスマーケティングに莫大な投資をしても、無駄に終わる可能性が高い。「個客理解と、個客の体験をテクノロジーでつなぐ」という理念の下、顧客の期待にどう応えるか。企業に求められるマーケティング戦略は、マスマーケティングの中でデジタルチャネルを通じ、顧客のエンゲージメントを高めていくための「データ」と「コンテンツ」の活用なのだ。
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