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Makuakeに聞く、マーケティングツールとしてのクラウドファンディングの可能性

Makuakeで開花したさまざまなプロジェクト

MZ:これまで手掛けてきた中で、Makuakeらしいプロジェクトだというものはありますか?

坊垣 たくさんあるので、どこから説明しましょう(笑)。こちらは元アップルの社員の方が独立して立ち上げた「まごチャンネル」というプロジェクトで、テレビにつないだ機材によって、スマホで撮った動画をおじいちゃんやおばあちゃんにテレビの大きな画面で見せることができます。これならスマホが苦手な方でもテレビで見られる。孫専用チャンネルというイメージで「まごチャンネル」と名づけられました。

これはおじいちゃん、おばあちゃんが支援するというよりも、機材をプレゼントしたい若い夫婦が支援しています。サポーターになると、実家に受信用のボックスが届き、月額料金が1年分の前払いで少し割引になるといったリターンになっています。料金をお得に設定することで、試しに使っていただけるようにする。テストマーケティングも兼ねて活用しているケースです。サービスの正式リリース前に具体的な意見をいただくことで、マーケティングにも役立っているようです。

MZ:資金調達だけでなく、そうした情報収集も含めてマーケティングツールとして使っているのですね。

坊垣 そうですね。「まごチャンネル」だったら、支援してくれた人たちのうち、どのくらいの割合がターゲットである若い夫婦だったのかというのも含めて知りたいじゃないですか。そういうデータは、Makuakeのデータを整理してアナリティクスツールで提供しているので、ターゲット分析も可能です。

たとえば、私がしているこの腕時計はイタリアのものなのですが、海外で商品を展開する場合、ユニセックスな製品が売れるのか、どの色が人気なのか、女性に反応がいいのか国よっても違ったりしますよね。この場合は、クラウドファンディングをマーケティングも兼ねて実施し、その結果をもって、日本への参入を決めたという流れがありました。

いま伊勢丹新宿本店では、Makuakeのプロジェクトの製品や試作品を実際に手に取れる展示コーナーを展開しています。この木製の腕時計はこの展示で反響があったので、じゃ販売もやりましょうということになりました。

MZ:木製の時計だったら、どんな質感なのか触ってみたくなりますよね。Makuakeは、いろんな人や可能性とつながる場になっているんですね。

坊垣 金融機関の融資の判断が下りていなかった案件で、クラウドファンディングをやったあと、その反響を見てうちも融資しますよという話になったこともあります。世の中の反応がダイレクトに数字で表れるので、クラウドファンディングをやってみてうまくいかなかった場合は、たぶんなにか改善が必要なんだと思うんです。

MZ:仮にプロジェクトが成立しなかったとしても、何を改善するべきかがわかる。

坊垣 実行者の皆さんの多くは、そういう姿勢で活用いただいているかなと思います。

大手企業も活用

MZ:Makuakeでプロジェクトを立ち上げるのは、どのような人たちが多いのでしょうか。

坊垣 個人や中小企業だけでなく、大手企業が関わる事例もいくつか出てきています。たとえば、ソニーとWiLの合弁会社Qrio(株)によるスマートロックのプロジェクトがあります。

ソニーとWiLの合弁会社Qrio(株)による既存の錠をスマートロックにするIoT製品「Qrio Smart Lock」を展開するプロジェクト
ソニーとWiLの合弁会社Qrio(株)による既存の錠をスマートロックにするIoT製品
「Qrio Smart Lock」を展開するプロジェクト

MZ:ニッチな製品が多いIoTとクラウドファンディングは相性が良さそうですね。こうした大企業なら自前でやりそうな気もしますが、なぜMakuakeを利用するのでしょうか。

坊垣 たとえば、知名度のある大企業が自社でやる場合、どうしても自社製品のユーザーの声が集まりやすく、広いマーケティングになりづらいと思うんです。そういう意味では、こうした公けのフラットな場に出して、どういう反応があるのかを見たいという思いがあったのではないかと思います。

飲食業では、お客さんを先に囲い込むスキームも

MZ:今まで扱ったことのない業界からも、問い合わせが増えていますか。

坊垣 初期は飲食店関係の事例がなかったのですが、この馬肉専門店のプロジェクトが成功してから一気に飲食店から問い合わせが増えています。これは、支援すると会員券がもらえる仕組みで、会員になると6500円からの定額で1年間食事ができます(2014年12月のオープン後、1年間の価格設定)。Makuakeで支援した方しかこのお店の予約ができない、いわば「Makuake限定会員」というかたちです。このスキームはうまくいっていて、いくつかこの業態のお店ができています。

MZ:外食産業は店づくりや話題づくりを本当に熱心にやっているところが多いですが、できることにも限界があると思うので、ちょっと違うアプローチを模索しているときにMakuakeを使うというのはありそうですね。

坊垣 この場合、先にお客さんを囲い込むという感じに近いと思うんですよね。お店ができる前に、もう来てくれる人が決まっているという。支援した人も、会員券や食事券がもらえるということであれば、やっぱりお店に来ますよね。こうしたかたちで、お店のオープン前にお客様を獲得できるツールというのはこれまでなかったので、飲食業界からの注目度もいま非常に高くなっています。

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マーケティングツールとしてのクラウドファンディング

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

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MarkeZine(マーケジン)
2016/02/10 09:00 https://markezine.jp/article/detail/23727

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