翔泳社では1月28日(木)、SEO初心者から脱するための『効果がすぐ出るSEO事典』を刊行しました。本書では最新のSEO対策を58項目に渡って解説。サイト構築、コンテンツ作り、ソーシャルメディアの利用、Googleによるペナルティの対処まで、SEOを軸にウェブマーケティングを学べる1冊です。
SEOといえば、昔は小手先のテクニックが重要でした。しかし、いまではGoogleの検索アルゴリズムが進化したことにより、ユーザーのためになるコンテンツを作ることが最も優先すべきSEO対策となってきたのです。そうした意味で、皆さんはきちんとSEO対策ができているでしょうか。
今回、著者でSEO対策会社のユナイテッドリバーズの取締役・岡崎良徳さんにインタビューをお願いしました。基礎知識を身につけたい方はもちろん、知識はあってもうまくいかない、初心者を脱したい皆さん、ぜひ参考にしてみてください。
実践で学んだSEOの知識が1冊の本に
――SEOはインターネット初期、Google検索が出てきた頃からありますが、岡崎さんがSEOなどウェブマーケティングの仕事を始めたのはいつからなのでしょうか。
岡崎:僕はもともと新卒で家電量販店のECサイトを担当していました。Yahoo!ショッピングの中の店舗ですが、2005年頃というのはまだSEOが一般的ではなく、僕自身も強く意識はしていませんでした。とにかく商品のメンテナンスをしたり、メルマガを書いたりしていたんですね。そのあとWeb求人媒体のコンサルティング営業に転職したんですが、リーマン・ショックでプロジェクトが消滅してしまいまして、前職となる不動産会社の株式会社ネクストに移りました。
この会社で「Lococom」という地域情報サイトに携わることになり、SEOを本格的に覚え始めました。ちょうどバズマーケティングやバイラルマーケティングが流行し出していた頃です。自分でも個人ブログを始めてみて、はてなブックマーク(はてブ)で3桁、TwitterやFacebookでリツイートやいいねを4桁取れるようになっていきましたね。
そんな折に、知人が経営するSEO会社(現職の株式会社ユナイテッドリバーズ)から、「自然リンクを得るためにバズのノウハウやアイデアを教えてほしい」と相談を受けました。自分の勉強にもなるからと週末にその会社を手伝っていたのですが、だんだんとSEOが面白くなってきてしまいまして、2014年12月に退職して、昨年1月からユナイテッドリバーズでSEOの仕事をしています。
――職種に変遷はあれど、一貫してウェブに関連するお仕事をされてきたとのことで、本書にはご自身の経験が詰め込まれているわけですね。
岡崎:実践というのがキーの一つだと思っています。SEO会社によっては、アドバイスはしても手を動かさないところがありますよね。一昔前だと、自動生成したサイトを大量に作り、そこから外部リンクを張って、検索順位が上がったらお金をもらうという会社も多かったんです。
「リンクを張る」というのは、少し前までは自分でウェブサイトを作っている方がたまたま張ってくれることを期待しなくてはならず、獲得の難易度が高いものでした。またGoogleのアルゴリズムも現在ほど優秀ではないので、自作自演のリンクが横行していました。いまはソーシャルメディアが普及したこともあって、それに頼らない健全な方法で自然リンクを集めることができるようになっていますし、低質な自演リンクはGoogleに見破られて逆に評価を落とす原因になります。
弊社の場合はデザイナーやエンジニアを抱えていますので、お客さんのウェブサイトに実際に手を入れて直していくことができます。その中で、どこで困っているのかを探ります。基本的なことは分かっていても、そこから先で何をすればいいのか分からない、どうしてもつまづいてしまう方がとても多いんですね。本書にはそうした方のための解決策を盛り込んでいます。
SEO=コンテンツマーケティング? いまも細かいテクニックは重要
――岡崎さんの会社に相談に来られる方が読者イメージなんですね。
岡崎:そうですね、中小企業のウェブ担当者というイメージです。そういう方の場合、SEOだけにリソースを割くわけにはいきませんし、サイト改修やコンテンツ制作にかけられる予算も限られています。ないない尽くしで戦っていくための手法、そしてSEOの面白さを書いています。初心者は抜けているけれど、次はどうしたらいいのかと困っている方がメインのターゲットと考えています。
最近はGoogleのアルゴリズムが進化して、小手先のテクニックが効かなくなってきています。そのため、最近のSEO関連の書籍では、「ユーザーに喜ばれるコンテンツを作れば順位が上がる」の一言に要約できてしまうものがあり、これだと現場の方は困ってしまいます。本書では、コンテンツを作るために外注をするにはどうすればいいのか、ペナルティを受けたときはどうすればいいのかなど、実践にまで踏み込んでいます。
――いまはSEO=コンテンツマーケティングのイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。それぞれ別個で考えるべきなのか、あるいは同じようなものとして捉えても構わないのでしょうか。
岡崎:一体で考えていかないといけませんね。SEOのテクニカルな部分に関しては、大規模なウェブサイトでは細かいチューニングが必要ですが、そこまでいかないウェブサイトでしたら基本を押さえれば80点90点まで整えられます。その先をどうするかというと、コンテンツマーケティングの視点、つまりいい記事を作って多くの人に見てもらう施策が必要です。
――テクニカルな部分といえばmetaタグの設定が重要だったと思いますが、そうしたテクニックはいまも注意する必要がありますか?
岡崎:いまはdescriptionは順位にまったく関係ありませんが、titleタグは最低限、OGPの設定はしっかりやったほうがいいですね。PC向けページとスマートフォン向けページでURLを分けている場合には特に気をつけましょう。通常、スマートフォンからは元ページがPCのほうにあることをcanonical属性で示し、PCにはスマートフォン向けのページがあるとalternate属性で示さなければなりません。これが入れられていなかったり、向きが逆だったり、ミスが非常に多いんです。
はてブ抜きには語れないソーシャルメディアマーケティング
――本書ではSEO対策にはリスティング広告費などの予算がかからない点がメリットとして挙げられていますが、予算をかけないマーケティングというとソーシャルメディアの活用を思いつきます。その中で、SEOは施策としてまだまだ有用ということでしょうか。
岡崎:意識の高いといいますか、アンテナを張っている担当者は皆さんSEOに注目していますね。例えば、本書で紹介しているはてなブックマークのPR枠は、SEO業者が買い占めているという噂もあったほどです。いまは大手企業がはてなブログMediaで施策を行ない、コンテンツを拡散していますよね。
実は声高に「はてなブックマークがいい」と言っている方はまだ少ないんですが、日本のソーシャルメディアで最も拡散力が強く再現性が高いのはこのはてブを利用する施策です。SEOに対して意識の高い企業は、ここを確実に捉えています。ただ、それが情報として出てくることはまずありません。講演で話される方もほとんどいませんね。
――ほかの書籍や記事では、たしかにTwitterやFacebook、あるいはInstagramの活用法は目にしますが、はてなブックマークについてはあまり見かけません。本書では突っ込んで解説されていますよね。
岡崎:おそらくスパム行為と隣り合わせの施策をしている企業が多いので、口に出せないのではないでしょうか。実際、企業によっては何十個もアカウントを作ってはてブをつけるという方法を行なっているという噂も聞きます。真っ当な方法ではてブを獲得するにはどうしたらいいのか、解説されていることはほとんどありませんよね。
――はてブは記事に対していくつかお気に入りがつかないと新着エントリにすら入らないですよね。だからこそ、新着エントリやホットエントリに入れば話題になりやすいです。
岡崎:この3年くらいの経験則ですが、はてブは三つか四つつかないと新着エントリに入らないですね。見る側としても情報をまとめて見やすいですし、API連携をしていろんなサービスに繋がっていますので、1回掲載されれば非常に拡散されやすいと思います。
はてブで注目されるには実用系記事を狙え
――企業のはてブ活用事例はあまり見かけないのでここを深くお尋ねしたいのですが、コンテンツを制作するうえで、はてブで受けやすいネタはどういうものがあるのでしょうか。
岡崎:フリーランスやIT周りのネタはヒットしやすいですね。IT系のユーザーが多いというのもありますが、いつか独立したいと考えている方も潜在的に多いので受けやすいのかもしれません。
――退職ネタも多いですよね。
岡崎:そうですね。僕も退職エントリを書いたんですが、毒が足りなかったのか9ブックマークしかつきませんでした(笑)。
――イメージとしては、一過性の面白ネタはあまり話題にならず、実用的な記事が伸びてくる気がします。
岡崎:僕の書いた「長崎の伝統芸能「鳥刺し踊り」の破壊力」という記事がありますが、これが典型的で、TwitterやFacebookでは4桁級のシェアがあるのに、はてブだと80くらいしかないんですね(※URLを変更されたため正確な数字は反映されていません)。
ですから、はてブでは役に立つ記事や社会問題系の記事が伸びやすいのだと思います。文房具ネタが流行ったこともありますし、漫画・雑誌・映画などを紹介するまとめ記事も人気です。実用的で共感を呼びやすいコンテンツがいいんでしょうね。
本書でも書いていますが、はてブ狙いの場合、面白ネタはあまりおすすめしていません。面白ネタを突き詰めているバーグハンバーグバーグみたいに尖りきっていれば構いませんが、真似をするのは難しいですね。同系統のウェブライダーさんでもまず実用性の高い記事を作って、その中に面白ネタを入れたコンテンツを作られています。ウェブライダーさんの再現性の高さはそこにあると思います。
あとはファッションネタ、真面目な恋愛ネタも注目されづらいです。……はてなブックマークの話ばかりですが大丈夫でしょうか(笑)。
FacebookよりTwitterのほうが難しい
――はてブのお話は、要は、コンテンツを作るときにどのソーシャルメディアでバズを狙うかを先に考えておくのが大事ということですよね。
岡崎:そうですね。難易度が低いのはFacebookです。バズらせるというよりはソーシャルシグナルを獲得するという意味では、広告を出せば1いいねを30円くらいで取れるので、それが最も簡単ですね。Twitterは難しくて、媒体と紐づくアカウントをしっかり育てる必要があります。一番手間暇がかかるのがTwitterでしょう。
――最も手軽だと思えるのがTwitterですが、実際は逆に最も手間がかかるんですね。
岡崎:シェアを取ろうとすると難しいと思います。はてブにあるホットエントリのような機能がないので、コンテンツをフォロワーの外に出そうとすると結局は広告を打つか、フォロワーにリツイートしてもらう必要がありますから。
その代わり、有名人に拾われれば一気に拡散する可能性があります。例えば、佐々木俊尚さんはURL短縮にbitlyを使っているのでクリック数が確認できるのですが、1度URL付きでツイートしていただけるだけで1,000近いクリックをされることも珍しくないようです(なお、bitlyはURLの末尾に+をつけるとクリック数を確認できます)。
そういう方の書籍や発言を紹介したり、何か参考にさせてもらったりして、「ここで使わせていただきました、問題あればご指摘ください」と暗にシェアを促すのもテクニックの一つですね(笑)。もちろん直接インタビューをするのもありです。フォロワーが多い方に寄稿をお願いするのもいいかもしれません。
――バズマーケティングとはいえ口コミですから、とても人間的な感じがします(笑)。
岡崎:定量的にできることではないので、ひたすらウォッチを続けて感性を磨く必要はどうしてもあると思います。弊社のお客さんでも、あまり詳しくない方が多いので、バズを狙うとなるとまず面白系のコンテンツに気が向いてしまうんです。それだけではないので、本書を読んでみてもらいたいですね。
SEOを軸にウェブマーケティングの全体を掴む
――本書の内容に関してうかがっていますが、SEOというキーワードはいまやウェブマーケティングの中心にあると強く感じます。サイト構造からコンテンツ作り、さらにソーシャルメディアの利用まで、SEOはかなり広い概念なんですね。
岡崎:SEO対策は、刈り取りに近いユーザーを集めてくることが大きな目標です。ですが、一つのジャンルに特化したウェブページを1枚だけ作っても検索順位は上がりません。ドメイン全体の評価を上げないといけないので、メインで狙うキーワードの周辺のコンテンツを厚くしていく必要があります。そうすると、コンテンツマーケティングやオウンドメディア、さらに被リンクを集めていこうという施策に繋がっていくわけです。
――その全体像をどう構築していくかを、本書では58項目に分けて解説されているんですね。SEOはもはやウェブマーケティングそのものに近いと言える気がします。
岡崎:一昔前のSEOのテクニックだけではもう使いものになりません。そういう意味では、数年前のSEO対策の知識で止まっている方にもぜひ本書をおすすめします。SEOを軸にウェブマーケティングの全体が分かるのではないでしょうか。
――岡崎さん、本日はありがとうございました。翔泳社では『Facebook広告運用ガイド』を刊行しましたが、本書でもFacebook広告の利用が解説されていますので、合わせて読むとさらに知識が深まるでしょう。
※ちなみに、本記事のタイトルはインタビューの際に岡崎さんに考案していただきました。狙いたいキーワードである「SEO」「基礎知識」「初心者」を使いつつ、適切な言葉を補って冒頭30文字くらいで引きを作るのがポイントです!