世界と異なる発展を遂げる日本市場
古後:香川さんはFacebookを退社してアンルーリーの代表取締役に就任されましたが、今回の日本進出は、日本の動画マーケティングにどの様な期待をされてのことだったのでしょうか?
香川:日本は海外と比較してネット予算に占める動画の割合が、まだ極端に小さいですね。裏を返すと今後の日本市場の成長に期待して進出しています。今回私が代表取締役に就任したのも、動画マーケティングに大きな可能性を感じているからです。動画を専門とした様々なスキルやナレッジが得られるとともに、世界最大の動画ビッグデータとユニークなテクノロジーを持つ企業を探した結果、アンルーリーにたどり着きました。
小川:日本はやはり海外に遅れを取っているのでしょうか?
香川:そうですね。データを見る限り欧米の3、4年近くは遅れています。日本のデータを見ると、昨年1年間で企業動画の数は対前年比1.6倍になっているのですが、世界の平均は1.2倍。世界では少し落ち着いてきているのに対し、日本は急速に伸びており、まだまだこれから伸びる見込みがあります。ただ、成長は著しいのに対し遅れている部分があるのも事実です。特にソーシャルメディアで多くシェアされるような動画がまだまだ海外に比べ少ないですね。
古後:日本の動画マーケティングが海外に比べ遅れている要因は、何だとお考えですか?
香川:日本はテレビの影響力が強く、デジタルでブランドマーケティングを行う企業はこれまで少なかったです。このため、世界とは異なる発展を遂げているのではないでしょうか。アンルーリーの本社があるイギリスでは、すでにデジタル予算の方がテレビよりも大きくなっています。
古後:日本でも最近はテレビを“まったく見ない派”と“よく見る派”の二極化が進んでいます。そうなると、テレビCMでは“まったく見ない派”にリーチできなくなってしまいます。その辺りの動向はきちんと捉えておかないといけないでしょうね。
日本のバイラル動画はこれから
古後:日本の動画マーケティングにおいて、必要なポイントを教えてください。
香川:まず、昨年日本国内でウェブ上にアップされている企業の広告動画を見ると、テレビCMの流用が大半で、オンライン向けに作成された動画コンテンツは少ないですね。視聴者が共感し、支持したいと思う、つまりシェアしたくなるような動画コンテンツも少ないです。SNSの爆発的な普及を背景に、海外のマーケターには消費者が自ら拡散してくれるような動画を作ろうという考え方が浸透しています。
小川:そもそも、「日本人は動画をシェアするのに慎重だからシェアが少ないのでは」という意見もあるかと思いますが、香川さんはどのように考えていますか。
香川:確かに、日本人の動画のシェアが少ないのは「シェアすることで自分がどう見られるのか」という周りの目を気にするという理由もあると思います。ただ、「シェアしたいと思うようなコンテンツを企業が出していない」ということも一因と考えます。
海外ではバイラル動画は完全視聴率が高く、ブランド好意度や実際の売上につながるのでトレンドとなっていますが、日本では始まったばかり。そこに企業にとってビジネスチャンスがあると思っています。ちなみに、昨年日本で最もウェブ上でバイラルした動画は資生堂「High School Girl?メイク女子高生のヒミツ」でした。
古後:バイラル動画を作りたいと思っていながらも、目先の費用対効果にとらわれて、なかなか投資に踏み込めない企業が多いと思います。海外では実際に売上につながった事例はありますか?
香川:ある酒類グローバルメーカーでは、動画マーケティングの成果を測るために、一定期間テレビCMを止めて、オンライン動画だけを出す期間を作って調べたところ、オフラインでの売上が6%アップしたという事例があります。
古後:我々も、今の事例や海外の事例を見ていると、テレビCMと同等かそれ以上の可能性が動画マーケティングにはあると感じています。テレビCMは受動的ですが、オンライン動画は自分で検索して見に行ったり、友達がシェアしたものをクリックして視聴するという能動的な要素が入るという違いも持っていますしね。
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