ジャーニーマップを俯瞰すると、打つ手が見えてくる
カスタマージャーニーステージを把握したら、いよいよカスタマージャーニーマップの作成に入る。加藤氏は例として、旅行会社を想定した場合を解説する。
旅行前・旅行中・旅行後というステージを時間軸で置き、「顧客の行動・顧客感情の変化・現在の顧客接点・提供価値・機会とリスクの発見」について、考える。例えば、旅行先の検討から出発準備をする旅行前、私たちは候補地やホテル、移動手段を考える。その際、旅行会社はソーシャル広告や予約サイト、リマインドメールなどでコミュニケーションが可能だ。旅行を終えて帰宅すると、宿泊後のポイント付与や次の旅行のレコメンデーションがやってくる。
このように見ていくと、下の図のように旅行中の接点がすっぽりと抜け落ちていることが見えてきた。例えば、旅行中に現地の人気レストランを探すサポートをすれば、さらにエンゲージメントを高めることができるかもしれない。
「マーケティング業務は細分化されているため、マーケティングの担当者はビジネスを俯瞰的な観点で考える機会は多くありません。カスタマージャーニーマップを作成することで、体系的にビジネスを捉えることができ、自分たちの施策における課題や改善の余地が浮き彫りになるのです」(加藤氏)
施策検討に有効な「カスタマージャーニー4象限」
カスタマージャーニーが描けたら、次は打つべき施策の検討に移る。その際に有効なものがカスタマージャーニー4象限だ。
横軸にこれまでのジャーニーと今後追加すべきジャーニーを、縦軸に施策のスパンがとられている。それぞれ詳しく見ていこう。
ゴールデンパス型
現在のジャーニーにおいて短期間で実行できるもの、つまり現在結果が出ている部分を強化する施策だ。例えば、日本ロレアルでは調査結果によって、“オンラインで購入後、店舗で購入したお客様”が、最も顧客満足度が高い優良顧客であることがわかった。そこで、オンラインで購入した商品に店舗で利用できるクーポンを同梱して送ることにした。
最適改善型
これは、現在のジャーニーの中で結果を出せていない部分を改善する考え方だ。先ほどのジャーニーマップの中で、接点を用意しているはずなのに作用していない部分を探し最適化する方法を検討する。この場合は、チーム内でディスカッションすることで改善されていく。
Newパス追加型
先ほどの旅行会社の例で示した「旅行中」のように、顧客接点が欠落している部分を補強し、新たなチャネルやジャーニーを加える方法だ。例えば、カーシェアリングサービス「カレコ」では、カスタマージャーニーの中で、自動車を利用する前のきっかけ部分が手薄であることに気付いた。そこで、山へ写真を撮りに行く・環七沿いのラーメン屋巡りといった車で出かけたくなるキャンペーンを仕掛け、新たな顧客接点を創出している。
イノベーティブ型
この場合は、既存のカスタマージャーニーを根本から再設計する。代表的な事例がVAIOだ。もともと一般向け製品を提供していた同ブランドは現在、ポジショニングを変え、プロユースのハイスペックモデルに大きくシフトしている。これにより、利用者層も顧客接点も大きく変化させた。
「このようにカスタマージャーニーを4象限で考えると、様々な方向性が見えてくることがわかります」(加藤氏)
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著者 :加藤 希尊/出版社:宣伝会議
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