カスタマージャーニーに対して高まる期待値、踏み出せない一歩
このパネルディスカッションでは、“事業貢献を実現する”という点に主眼を置き、アウディジャパンとベネッセコーポレーション両社におけるカスタマージャーニーの取り組みについて語られた。
各社の取り組みの紹介に入る前に、モデレーターの菅氏はカスタマージャーニーの現状を次のように整理した。
しかし、実際やってみようとすると、次のような壁にぶつかることになりがちだと言う。
- 壮大化、複雑化しすぎて打ち手としてのリアリティが全然ない
- 効果が読めないので、結局いつもの打ち手に着地してしまう
- プロジェクト化して頑張ったが、出口が見えずに迷路入り
- 社内のいろんな部署で取り組んでいて、既に食傷気味
- カスタマージャーニーは成果に繋がるアプローチなのだろうか?
「なんとなくこういった疑問があって、実際に着手できていない状況なのではないか。今日ご登壇いただいたお二人は、それぞれ少し違う視点でアプローチされているので、参考にしていただければ」と菅氏は語りディスカッションを進めた。
氾濫する“カスタマー不在”のジャーニーマップ
まずは「テーマ1:現実的な打ち手に繋げて成果を上げるには?」と題し、ベネッセコーポレーションの橋本氏が自社の取り組みについての紹介をはじめた。
「カスタマージャーニー」という言葉に対して、いろんな解釈がある中で、ベネッセコーポレーションでは「顧客への価値提供を最適化していくための手段」と捉え、次の3つをポイントにしているという。
- 『顧客』と『自社の商品・サービス』の接点ごとの行動プロセス(Consumer Processing Model)
- 「各接点での体験(Experience)
- データ活用が進むことで仮説ではなく、事実が明らかにしやすくなった(Data&Fact)
「中でも一番重要なのは『Data&Fact』。データの活用が進んでいることで、お客様の行動の事実が明らかになってきたので、事実ベースでお客様にとって意味のあることをやり続けていこうと。その結果が売上につながるのかなと思っています」(橋本氏)
カスタマージャーニーを活用する上での課題として、マーケターが抱えがちな悩みを身近な人にヒアリングした結果、次の3つのポイントにおいて疑問が出てきたと橋本氏は説いた。
設計
- チャネルとデバイスが多岐にわたり、ジャーニーが複雑になる
- ご都合主義になりがち(自社の重点メディアを中心に据える)
活用
- チャネル横断した連携が必要、プロジェクトも大きくなり進まない
- プロセスをつくっても、最終コンバージョンへの投資が中心になる
検証
- データが取得しづらい、まとめづらい
- 複数のチャネル・デバイスが絡むので、評価が難しい
橋本氏は、ここ1~2年くらいの間に、ツールベンダーやコンサル企業などからカスタマージャーニーに関する様々な提案をもらっていると語り、「決して否定するわけではないが、はたしてこれでいいのかと疑問を感じずにはいられない」とした。
「カスタマージャーニーなのに“カスタマー”が抜け落ちているものは、カスタマージャーニーマップとして失格だと思います。カスタマー不在の中でカスタマージャーニーを作ると、『大上段に構えて、机上の空論になる』『分析に時間をかけ、実施までに時間がかかる』『数字を見すぎて、そもそもの目的を忘れる』といった典型的な失敗パターンに陥ってしまいます」(橋本氏)。