SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

イベントレポート

ネットのフレキシビリティをテレビの商流へ/テレビとネットの融合のカギを握るテレビ局の戦略


コンテンツそのものの価値に広告が紐づく時代に

野村:以前、DMP事業者さんに「プラスセブン」においてはデータのない人の割合がとても大きいと言われたことがあります。

境:データのない人ですか。

野村:つまり、初めて動画を見る人の割合が非常に大きいそうです。

ビデオリサーチインタラクティブ 営業企画部マネージャー 深田 航志氏

深田:その話は、すごく印象的ですね。データがない人たちは、すなわちこれまでクッキー情報をトラッキングできていなかった人たちです。その人たちが初めてこのような行為に及んだと考えると、逆にそれはとてもプレミアムなことでは。ここは大きなポイントだと思います。

境:ところで日本における大きな動画メディアの一つに「GyaO!」があります。日本テレビさんは、どのようにお付き合いされているのでしょうか。

太田:2009年に日本テレビとフジテレビは、「Gyao!」にそれぞれ出資しています。その当時から、きちんと適正な広告単価を保つことができる市場をつくっていきたいという話をしていました。適切な市場をつくることができれば、コンテンツの作り手側にもお金をきちんと還元できます。それは長い目でみると、ユーザーにとっても、クライアントにとってもいい環境をつくることにつながります。そういうのもあって、しばらくは一緒に日本の市場を一緒につくっていければと。

境:一方で「TVer」については、どうですか。

蜷川:5社で集まってスタートした取り組みということもあって、テレビ局がネットで番組の無料配信をするという認知は広がっっていると思います。ただ現状では、テレビ東京の番組を見るためには、「TVer」のアプリとは別に、「テレビ東京動画プレイヤーアプリ」をダウンロードする必要があります。ユーザーの方には非常に不便を掛けているのですが、我々としてはいろんなデータを取ったり、広告の出し方を変えたり新しい開発をする際に、他社へ何かしらの悪影響が出てしまう恐れを懸念して、システムの統一はしていません。

 またこれからはその次のフェーズとして、どこまでが共通領域で、どこからが競争領域なのか、その線引きも必要になるでしょう。もちろんコンテンツは競争領域だと思いますが、ネットの世界ではUI/UXの部分も含めて競争領域です。例えば、僕が一番危惧しているのは、5局のコンテンツをまとめているために回線のスピードが遅くなってしまうのは大きなデメリットでは。この辺りをどう考えていくのかということでしょうか。

境:でも「TVer」という新しい入り口ができたからこそ、自社へのアクセスが増えたという側面はあるでしょう?

蜷川:そういう意味で言うと、「TVer」ではドラマを見ている方が多いと思うので、私たちにとっては「GyaO!」のほうがインパクトが大きいですね。少し話が戻りますが、テレビ東京が「GyaO!」にコンテンツを出している理由は、僕らが自社のプラットフォームを持ってないからです。今はまだ「YouTube」には出していませんが、できるだけ大きなプラットフォームに出していきたいなと。どこに行ってもテレビ東京の動画があるね、という状態にしたいですね。

境:なるほどね。そうすると局によって、あるいはコンテンツによって、今後動画プラットフォームとの付き合い方は結構違ってきそうですね。

蜷川:これからは戦略が全然違ってくると思います。「TVer」のようなプラットフォームは、本当にある意味カタログというか、入り口のような役割になってくのでは。どこでマネタイズするかといったビジネスモデルの戦略は、各社でますます分かれていくのでは。

野村:フジテレビはADVODやSVODにも自社で取り組んでいるので、「GyaO!」をはじめとした外のプラットフォームはある意味競合でもあります。でも、ケース・バイ・ケースでいろんな組み方をしてみて、まずは動画配信の文化を一緒につくっていければと思います。

太田:事業目線では、本業の地上波は重要ですが、広告ビジネスだけに軸足を置いていると、ここから先は大変になるかと、リーマンショックの時も、テレビ広告をはじめ、一気に広告費が削減されましたし。そのような状況に備えて、BtoCの課金モデルを構築していくことも重要だと考えています。

 先ほど話が出た「TVer」は、すごくうまくいっています。非常にいいサービスでやるべきだと思っている一方で、テレビのコンテンツを全部「TVer」におくという論調には危機感を持っています。どんなにテレビ局のコンテンツを集めても、「LINE」や「Facebook」、アプリゲームみたいに、日常使いのメディアにはおそらくならないなと。朝から晩までずっと「TVer」をみている人はたぶんおそらくいないでしょう。

 なので僕らのコンテンツを「LINE」や「C CHANNEL」などに流したりして、コンテンツ単体が広がっていくような世界観を作らないと、おそらく今の地上波をカバーするような世界は生まれないでしょう。なので広告ビジネスの動画に関して言えば、いろんなメディアにアメーバのように広げていくようなイメージでしょうか。

境:海外では最近、「コンテンツ360度」と言われているそうです。テレビや映画といったプロフェッショナル映像を、オールプラットフォーム、オールデバイスへ展開していくという意味だそうで、まさに太田さんが言われているのを同じことかと。

太田:今までの固定概念もあって、このように頭を切り替えるはなかなか簡単なことではありません。一番大事なことは、プロフェッショナルなコンテンツを作れば、どこのメディアにおいてもおそらくきちんとした見方をされるはずだということ。特に動画広告に関しては、コンテンツの中に広告が仕込んであるので、コンテンツそのものの質さえ担保しておけば広告の効果はついてきます。今のネット世界は、その場に対しての広告価値がほとんどですが、これから先はコンテンツそのものの価値に対して広告が紐づいてくると思います。昔のテレビと同じように。

境:去年のInter BEEで、米国在住のITジャーナリストの小池良次さんに聞いたのですが、番組が視聴されるタッチポイントごとにそれぞれのマネタイズを考えていくことを「番組のオムニマーケティング」という言い方をするそうです。多かれ少なかれ、このような流れにあるのは間違いないでしょうね。今日は本当に長い時間、お付き合いいただきありがとうございました。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
イベントレポート連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2017/09/07 09:12 https://markezine.jp/article/detail/24172

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング