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MarkeZine Day 2016 Spring(AD)

良品計画のデジタルマーケティング、支えるMicrosoft Azureの分析基盤

 今、デジタルマーケティングに有効なツールは多種多様なものが登場しているが、ツールやデータが複雑化しているだけに、データ分析や施策の連携が簡単にはいかないのが現状だ。3月3日に開催されたMarkeZine Day 2016 Springでは、日本マイクロソフトと良品計画により「良品計画CMTが語る。『MUJI DIGITAL Marketing 3.0』のデータ分析」と題した講演が展開。Microsoft Azureでのデータ分析を通して、どのような店舗支援を行っているのかが語られた。

先進企業はデジタルマーケティングでどう成果を上げている?

 日本マイクロソフトでは、デジタルマーケティングプラットフォームとして利用できる「Microsoft Azure」を活用して同プラットフォームの販売促進を行っている。あらゆるタッチポイントを徹底的に把握し、すべてをデータ化した後分析、ナーチャリング。最終的には、デジタル上でのクロージングを実現するものだ。

日本マイクロソフト株式会社 クラウド&エンタープライズビジネス本部
エグゼクティブプロダクトマネージャー 相澤克弘氏

 同社にて「Microsoft Azure」のプロダクトマネージャーを務める相澤克弘氏は、企業がマーケティング予算の大半をデジタル関連に費やしている流れを受け、同製品も年々倍増の勢いで企業での活用が進んでいると明かす。

 「データ分析をうまく活用する企業が好業績を上げているのは、調査からも明らかになっています。それに関連して、CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)やCMT(チーフ・マーケティング・テクノロジスト)のような、マーケティングとテクノロジーの両方のバックグラウンドを持つ人材が求められています」(相澤氏)

 一方で、多くの企業がデジタルマーケティングに課題を抱えているのも事実だ。ツールが次々と登場し、データの種類も複雑化しているのに加えて、デジタルマーケティングが成熟するほどに組織が分断化していく難しさもある。

 こうした問題を、先進企業はどのように解決しているのだろうか? 本講演では相澤氏に続き、Microsoft Azure活用企業でもある良品計画から、Web事業部CMTの濱野幸介氏が登壇。同社のこれまでのマーケティング変遷を踏まえた実例が紹介された。

店舗とネットが対立していた1.0時代

株式会社良品計画 Web事業部 CMT 濱野幸介氏

 濱野氏は、2013年に小売業などの経営支援を行う企業のCTOに就任し、スマートフォンアプリ「MUJI passport」の企画開発や運営に携わる。その後、2015年より良品計画のCMTとして活躍している。本講演のタイトルに冠された「MUJI DIGITAL Marketing 3.0」という呼称からも分かるように、同社は早くから熱心にデジタルマーケティングに着手。1.0、2.0の時代を経て、現在では3.0としてソーシャルメディアの活用や最新のデータ分析を交えながら、デジタルを通した店舗送客や売上向上に取り組んでいる。

 元々、西友のプライベートブランドから始まった「無印良品」は、現在では生活雑貨から食品、家具家電まで約7,000品目を展開する。最近では家の販売、キャンプ場の運営と新事業も展開・拡大し、海外への進出も目覚ましい。

 濱野氏は、過去の笑い話として、デジタルマーケティングを模索し始めた「1.0」時代のこんなエピソードを紹介する。2000年代初めにネットストアを開設したころ、とある店舗の店長が、カタログ内のネットストア紹介ページを切り取ってしまっていたのだ。

 「店長いわく、店の売上が取られてしまうからと。当時はまだまだEC利用者は少なかったですが、店は店、ネットはネットとまったく融合ができていなかったので、そのように思われてしまったのでしょう」(濱野氏)

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オンラインとオフラインの行き来が増加した2.0時代

 「2.0」時代と位置づけるのは、2004年から2008年。「2004年は、無印良品のデジタルマーケティングにおけるターニングポイント」と濱野氏は語る。

 当時のネットストア購入経験者は、無印良品全体の顧客の約4割だったが、その割にはネットストアのアクセス数が多い。ヒアリングすると、実は購入よりも「店舗で買う前に商品をチェックする」目的でサイトを訪れている人のほうが多かったという。

 「新商品やセール情報もサイトで確認されていて、ユーザーは必ずしも購入のためだけにネットストアに来ているのではない、と分かりました」(濱野氏)

 そこから、デジタルマーケティングを担うWeb事業部のミッションが改められた。ネットストアの売上向上はもちろんのこと、店舗送客とデジタルメディアを用いたコミュニケーションの2つを強化し、依然全体の売上の9割を占める店舗へ貢献する方針が立てられた。

 来店を促すクーポンの配信などを通じて、次第にオンラインとオフラインを自由に行き来するようなユーザー行動が増えた結果、2004年を境に、ネットストアの売上と会員数が右肩上がりに伸長した。

 そして、2009年から2015年までが「MUJI DIGITAL Marketing 3.0」。FacebookやTwitterに加え、ユーザーとの共創を実現するサイト「IDEAPARK」やコミュニティサイト「myMUJI」といったオウンドメディアに注力し始め、ユーザーとの双方向のやり取りを促進していった。

「MUJI passport」で得られる膨大なデータを精緻に分析

 SNSの活用やユーザーとの共創に関する取り組みは、異業種を含めても非常に早期の試みだといえるだろう。今やFacebookのファン数は102万、LINEの友だち数は303万を数える。ただし、実際にSNS上のシェアを売上に反映できるかは「試行錯誤中」だと濱野氏。シェア数が爆発的な店頭販売につながった商品もあれば、期待とは異なるものもあったそうだ。

 ほかにもSNS上での反応を実店舗へ反映したり、店舗の状況をWebでストリーミング配信したりと、デジタルとリアルを融合させた多くの企画を展開してきた。しかし、それぞれ手応えはあるものの、効果が局所的で店舗売上に直結しづらい、という課題を抱えていた。

 そこで2013年にリリースしたのが、スマートフォンアプリ「MUJI passport」だ。店舗で購入時の提示やチェックイン機能によって、リアルとネットの顧客IDが一元化し、購買履歴以外のさまざまなユーザー情報が横断的に把握できるようになった。

 「顧客に一層寄り添った提案ができるようになりました。現在1,300万の会員から、店舗での購買データが年間2億件、ネットストアでの購買データが700万件など、膨大なデータを集積しています」と濱野氏は語る。

 これらをMicrosoft Azureで分析し、クーポン配信をはじめ各種企画の効果を把握しながら、店舗側がアプリによる送客効果をはっきりと実感するまでに売上を押し上げている。

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「Microsoft Azure」でダッシュボードを作成、店舗支援へ

 良品計画では現在、Microsoft Azureでのデータ分析を通してさまざまな施策を展開する傍ら、店舗の店長やエリアマネージャーの営業支援になるような分析結果やツールを提供している。

 たとえば同社のヒット商品「体にフィットするソファ」、通称“人をダメにするソファ”の売上を分析すると、特に20代から30代の男性が2014年春の増税後にも関わらず、購買するケースが多かったという。「全商品でみると男性は購買の波が少ないため、これは意外だった」と濱野氏。

 レトルトカレー「マッサマン」の割引クーポンを配信した際には、利用者のリピート状況を追跡。10%が同商品を、34%が同商品を含むカレーを購入していた。こうしたデータを次の施策に活かしているという。

 また、店舗への営業支援として、たとえば店長には来店客の属性や購買状況を週次や月次でレポート化し、印刷して確認できるようになった。商品担当者には簡単に高度な分析ができるダッシュボードを用意し、先のソファの分析のように、特異的な売れ行きの確認や商品間の比較ができるように整備している。

 「今、Microsoft Azureのデータウェアハウスには2億件から4億件ものデータが蓄積されている状態です。それでも、約15種のピボットテーブルを更新するのに1、2分ほど。商品担当者など誰にでも使いやすく、ボタンひとつで操作できるのも重要です」(濱野氏)

機械学習機能「Azure Machine Learning」に熱い期待

 濱野氏は今後の展望について「機械学習などを用いて、より無印良品らしいレコメンデーションの開発や需要予測に取り組みたい。また、カスタマイズしたツールの提供を強化して、現場の分析力も高めていきたいですね」と語る。膨大なデータを直感的かつスムーズに分析できるだけでなく、自社の状況に合わせて柔軟に次の取り組みを描けるところも、Microsoft Azureの利点だといえるだろう。

 今回、良品計画が主に活用を紹介したのは、Microsoft Azureのさまざまな機能のうちの「Microsoft Power BI」という分析システムだ。日本マイクロソフトの相澤氏は、「ほかにも大量なデータをスケーラブルに蓄積しつつ高速に処理するデータプラットフォームや、高度な分析でのレコメンデーション提供によりマーケティングを強力に推進できる機能を揃えている」と説明する。

 特に機械学習の機能としては、クラウドで機械学習を提供する「Azure Machine Learning」がある。非常にリーズナブルな価格で、さまざまなクラス分析やクラスタリング、相関分析を通してレコメンデ―ションの精緻化や各種予測に活用できる。

 相澤氏は「濱野様がおっしゃっていた機械学習をはじめ、データ分析やレコメンデーションなど今後も良品計画のデジタルマーケティング推進をトータルでサポートしていきたい」と語り、講演を終えた。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2016/05/16 10:00 https://markezine.jp/article/detail/24206