休眠顧客の掘り起こしはニーズが高い
MZ:加えて、先ほど江川さんが言われたようなオーディエンス拡張ができると。
矢吹:ええ。YDNはインターネットの広告プラットフォームなので、基本的にオンラインの行動データから類似拡張することはできます。それに加えて、ハッシュ化したメールアドレスや広告識別子(IDFA/Advertising IDなど)を活用することで、休眠顧客の掘り起こしや、過去の購入ユーザーから類似ユーザーを特定し配信するなどが可能になります。
江川:休眠顧客の掘り起こしには、特にアプリのパブリッシャー様やベンダー様がかなり意欲的です。今まさにYahoo! DMPと効果計測系のツールのつなぎ込みを積極的に行っており、これからYDNでリテンション施策を実施していこうという段階です。
MZ:CRMが有する情報を参照できると、クッキーよりもずっと特定的な訴求が可能になりますね。実例などはありますか?
江川:たとえば全日本空輸(ANA)様が、自社保有のIDベースでの購買履歴などの分析と、クッキーベースの最新の行動データを掛け合わせて、お盆や年末年始しか飛行機を利用しない人にタイミングを計った広告配信を行い、大きな成果を上げています(参考情報)。こうした訴求は、クッキーベースだけだとなかなかできなかったので、Yahoo! DMPでターゲティングしてYDNを運用する好例だと思います。
膨大なデータを活かせるヤフーならではの強みを発揮
MZ:まさに、今までそれぞれ点で訴求していたのがつながり、面でユーザーを捉えられるようになる印象です。Yahoo! DMPとYDNの活用で、見込みの高いアクイジションとリテンションが同時に実現できる。これは、膨大なデータを保有するヤフーならではの展開ですね。
矢吹:そうですね、我々ならではの強みを活かした仕組みだと思います。
江川:Yahoo! DMPはデータを蓄積する箱でもあるので、Yahoo! DMPと連携しておけば、たとえばYDNでキャンペーン運用開始後に調整したい場合、過去のデータをもとに再設計することも容易です。
MZ:では、今後の展望と、MarkeZine読者へのメッセージをお聞かせいただけますか?
矢吹: 2014年にYahoo! DMPを立ち上げたときから、近いうちにYDNとどういう形で連携すればいいかは議論してきましたが、まだ現状は第一弾と考えています。これから段階的に、連携できる範囲を広げる方向で検討しています。レポーティングや計測系の強化を通して、データの可視化にも注力し、柔軟なクロスデバイスマーケティングのサポートをしていきますので、ぜひご期待ください。
江川:デバイス横断的に動くユーザーを、ようやく面で把握できるようになりましたが、ターゲットをしっかり定めて、その人たちに響く施策を展開するための前提が整っただけとも言えます。
まさにこれから、そんな精度の高いコミュニケーションのパターンを増やし、クロスデバイスでのシナリオ設計の定石を探りたいですね。同時に、マーケターの方々の要望が強い機能やツールを拡充していければと思います。