流行だから飛びつくのではなく、目的が重要
安成:山崎さんからクラウド型サービスの登場によって、導入ハードルが低下し、マーケターにとっても機械学習が身近なものになったというお話がありましたが、アサヒビールさんでは機械学習の普及は進んでいますか?
山本:普及したとまではいえませんが、実際に使う局面は増えてきました。
安成:使う局面が増えてきているということは、社内での理解も浸透しているのですか?
山本:理解度という意味では、何ができるか理解している人は少ないと思います。ただ、機械学習がトレンドワードになるにつれて、「何かできないのか?」という話は増えましたね。とはいえ、使う目的が明確でないと効果的に活用できないので、本当に機械学習がベストなのかということは常に検討が必要だと考えています。
安成:また、先ほどの濱野さんのお話では、予測精度がかなり高く出ていたと思うのですが、山本さんのお話だとまだ正確にはほど遠いとのことでした。その原因はいったい何なのでしょうか。
山本:所有するデータ量が圧倒的に違うということが大きいように思います。ただ、30年分ためればいいかというと、そういうことでもない。データを蓄積するのにもコストはかかりますし、データがあっても、30年前と現在では市場環境が全く違います。どんなデータをどれだけのボリュームまでため込むかは考える必要がありますね。
また、自社データだけで予測の精度を上げるには限界があるので、それこそ電通さんや楽天さんなど様々な企業が提供するデータを活用していきたいと思っています。
今後も様々な領域での活用を推進
安成:最後に、今後どういう風に機械学習を活用していきたいか、展望をそれぞれお話しください。
山本:今は需要予測のみでの活用となっていますが、売上予測やマーケティングでもどんどん活用して、お客様の特性を把握していきたいですね。また弊社は酒類の会社ですが、グループ全体ではベビー用品から介護用品まで多岐にわたる商品を取り扱っています。最終的には、グループで取り扱っている商品を適切なタイミングでお客様に提案できるようにしていきたいです。
濱野:楽天のデータを活用して、精度の高い予測ができる世界をいかにつくっていくか。もちろん、顧客データはセンシティブなものなので、慎重に扱わなければなりません。あくまで顧客のニーズありきの活用を今後も行っていきたいですね。
山崎:やはり、クライアント様のためになるようなソリューションを提供したいということが第一にあります。弊社ではパネルデータや広告の接触データなど多く保有しており、電通グループでは、7月に電通デジタルという新会社を設立しますので、更なるデジタル領域の強化を進めていきたいです。
安成:パネラーの皆様のお話から、機械学習をマーケティング領域で活用するためには、有用でかつ大量のデータと明確な目的が不可欠だということがわかりました。
今後は楽天さんのように膨大なデータを保有する企業、電通さんのようにクライアントに最適なソリューションを提供する企業、そしてアサヒビールさんをはじめとした多くの広告主が手を取り合って機械学習の活用が進めば、マーケティングは新たな領域に進化するのではないでしょうか。