ブランドマーケティングにおけるデジタルマーケティング
MZ:たしかに、この10年はデジタルならではの刈り取り施策が発展し、ネット系広告会社も主立ったところが絞られてきた状況かと思います。直近のテーマとして「ブランドマーケティングにおいてデジタルをどう活用するか」と指摘されましたが、ネット専業ではなく総合広告会社としてそれに応える……という目的も、今回の動きの背景にはあるのでしょうか?
辻:ええ、それも大きいです。“デジタルマーケティング”という言葉はしばしば、それ単体で効果的だとか有用であるように語られますが、私は的を射ていないと思っています。あくまで、マーケティングという大きな概念の中にある、ひとつの手法だというのが本来の姿です。
20年の歴史を振り返ると、手法の精鋭化や精緻化、あるいは新規プレーヤーの台頭などは必然だったかもしれませんが、状況は変わりました。デジタルマーケティングありきではなく、ブランドマーケティングを実践する上で、デジタルが必須になってきています。我々は総合広告会社の使命として、改めて「マーケティングにおけるデジタル化」を極めようと考えています。

石川:新会社として独立し、専門性を高めるのは、グループ経営の強化という意図もあります。博報堂や読売広告社、大広というブランドエージェンシーを、これまでHDYMPがメディアサイドから支えてきました。今後は同社とともに我々が、メディアのデジタル化とマーケティングのデジタル化を支援しながら取り組んでいきます。
デジタルプラットフォームの中心にあるのはデータ
MZ:なるほど。博報堂などの各グループ会社とHDYMPの間を、博報堂DYデジタルがデジタル領域でつないでいくようなイメージですか?
辻:そうなれれば、とは思いますね。デジタルをプラットフォームとして捉えられるようになったのは、データが厚みを増し、それが中心になったことが大きいと思います。データがマーケティングをつなぎ、メディアも変えていくので、当社はデジタルを司る組織として具体的にはデータ活用を徹底的に模索し、それを起点にグループで連携してクライアントのマーケティングを進化させていきます。
MZ:では、現在の組織体制を教えてください。
石川:大きくは、プロデューサーの集団とスペシャリストの集団から組織しています。前者は、キャンペーンプラニングなどを得意とする制作系と、メディア系に分かれます。後者にはデータ、メディア、クリエイティブの3要素それぞれの専門家が属しており、クライアントや案件ごとにプロデューサーとスペシャリスト群のチームで対応します。
コミュニケーションはマーケティングとクリエイティブの両輪で成り立つと考えていますが、デジタル化やデジタル起点の発想は、マーケティングに比べるとややクリエイティブのほうが追いついていないと感じています。なので、プロデューサーもデータサイエンティストも含めて全員がクリエイティブの視点を持って、目前の課題に柔軟に取り組むことを促しています。
