“デジタリアン”へのエバンジェリスト=MAベンダー

押久保:なるほど。ではなぜ、組む相手がMAベンダーだったのでしょうか?
鈴木:理由は2つあります。ひとつは、僕が特に動かしたい相手――デジタル環境に慣れて育った20代〜30代前半の若手マーケターを僕は“デジタリアン”と呼んでいるのですが、彼らにとってのエバンジェリストが、MAベンダーだったから。MAは近年マーケターの関心を集めていますし、ベンダーの側も情報発信に積極的です。
押久保:“デジタリアン”とは分かりやすいですね。彼らに届くPR経路として、MAベンダーに注目したと。
鈴木:ええ。もうひとつの理由は、MAベンダー自身がデジタル×アナログの最適な組み合わせについての情報を求めていたことです。彼らが標榜しているのはまさしくフルチャネルコミュニケーションの自動化ですが、アナログ施策の知見は決して厚くない。
同時にメール開封率の低下、アドブロックの拡大、さらにデジタル施策が計測できるがゆえに効率主義に陥って効果が縮小するといった課題もあり、デジタルだけに頼れないという危機感もありました。
先のような調査結果が出たところで、実際には各商材や業種業態によって、最適なシナリオは変わるでしょう。それは僕も答えを持っていません。なので、実験に賛同・参加いただける広告主とMAベンダーをつなげて、デジタル施策とDMを組み合わせた実証実験プロジェクトを通して事例をつくり、発信していこうと考えました。
事例を蓄積して最適なシナリオパターンを導く
押久保:`実際に、実証実験はどの程度まで進んでいるのでしょうか?
鈴木:MAベンダーは、現時点では、マルケト・日本オラクル・アドビ システムズ・エクスペリアンジャパンの協力を得ています。参加広告主は、1社目はクラウド名刺管理のSansan、2社目にサプリメント通販会社が進行中です。ほかにも様々な業種の企業と話が進んでいます。
プロジェクトではDMの送付先のターゲティングをデータドリブンで行い、当然その効果も数値で証明していくので、精緻なデータ解析には外部会社の協力を得ています。
押久保:今後のプロセスとして、具体的にどう展開されていく予定ですか?
鈴木:大きく3段階の展開を見込んでいます。フェーズ1は、実証実験で手応えのある結果が得られることが前提ですが、デジタル×アナログを組み合わせた施策に「効果がある」と、参加した広告主の口から語っていただくこと。他の広告主に気付いてもらうきっかけにしたいと思います。
フェーズ2は、とはいえ個別ケースになるので、複数の事例を蓄積して知見を抽出し、ある程度は汎用性のあるシナリオのパターンを導くこと。フェーズ3は、デジタル×アナログを組み合わせる価値が広がり、多くの広告主が自発的に実験をし出すようになる状況。
さらに最終段階が、僕の目指すゴールにもなりますが、マーケティングの潮流として「デジタル×アナログ施策」が最新トレンドになることです。