バズを起こす6つの原則と80の切り口
実際、資生堂の「メーク女子高生のヒミツ」も、最後に明かされる仕掛けが人に伝えたいモチベーションを高め、SNSを中心に大きく波及した。阿部氏は「答えがわかったときのカタルシスが、Web動画が提供する快感のひとつになっている。テレビ番組でも昔からある手法だが、24時間連続的に情報が回ってくることで拡散力も高まる」と解説。
続いて、栗林氏が自身の方法論「バズのツボ」を紹介。栗林氏は“Buzz Machine”という肩書きに、3つのミッションを込めているという。それは、バズは不安定で販促には効かないというイメージがあるが、絶対に“売り”に効くものにすること。
テレビというメディアのプロはたくさんいるが、ソーシャルメディアが発展して人が情報発信の中心になった現在、人というメディアのプロになること。そして、これまで培われてきた感性によるクリエイティブにデータを掛け算して、確実性を高めることだ。
栗林氏も世界的に拡散した動画を分析し、独自にUNIVERSAL、DISCUSSION、WOW、INSIGHT、1st CATCH、1 WORDという「6つの原則」に集約。
アイデアを思いついたら、まずこれらすべてを満たすかどうかをチェックする。「たとえば日産自動車の自動駐車機能のPR動画『Intelligent Parking Chair』なら、会議室のイスが自動で動く驚きは誰にでも伝わるし、イスを片付けるのが面倒だというのは国や文化を超えたインサイトだと考えた」。
6原則を前提に、さらにYouTubeやFacebookなど各メディアの得手不得手を踏まえた「80の切り口」を当てはめて、広がりを持たせていく(参考:HRナビ)。


バズづくりのいちばんの栄養は、データ
実名文化のFacebookでは、公共性の高いトピックの拡散力が高い。Instagramはセンスが高い動画がフィーチャーされ、Twitterではライトな話題が広がりやすい。タイムラインを持ち、シェアボタンでの拡散が見込めるこれらのSNSに対し、YouTubeは検索性が高く長期的にも有効で、メディアの目にも留まりやすい。
Vimeoはクリエイティブにこだわり、縦型動画もきれいに見られるので、先のMV「RUN and RUN」を広げる舞台に選定した。それぞれの特徴を加味して、どこで主に拡散させるかを想定しながら、同時進行でコンテンツを考えていく。
そうして固めたアイデアを、より大きな話題にしていくために必要不可欠なのが、データだ。栗林氏は「データを貪ることは、アイデアを考え続けるのと同じくらい重要。僕にとっていちばんのバズづくりの栄養はデータ」と話す。
「どんなにすごいクリエイターでも、世の中と感覚がずれていると、その度合いが大きいほどコンテンツが“スベる”ことにつながる。とにかくデータを見て、自分の感覚を補正し続けることが大事だと思っている。とはいえ難しいデータを見る必要はなく、毎日見ているのはビュー、シェア、ライク、タイム(視聴時間)。これらを見続けて世の中の反応を感覚的につかみ、なぜこの動画が広がったのかなどの仮説を立てて要素分解したりすると役に立つ」。
ちなみに栗林氏のチームが日々の作業や打ち合わせをするスペースでは、テレビ6局と各種データが表示された計12のモニターが稼動。常にデータに触れる環境を整え、さらにデータマイニングツールを8つ活用し、トレンドを把握しているという。
