ジャーニーマップ作りのメンバーは役職で選ばない
押久保:ワークショップの60分が、チーム全員で顧客視点を問い直す場となっていました。顧客は、きっとこう考えるのではないか。ならば、こうしたフォローやケアをしないと顧客は快適に感じられないのではないか? と、時間軸に沿いながら具体的に考えることができました。
加藤:従来の、いわゆる企業内の共通言語は、たとえば社訓やクレドなどのスローガンだったかと思います。一方で、ビジネスの現場では年間のマーケティングプランがあって、複数の部署で、各部署の思惑が渦巻きながら施策化する現実があります。社訓やマーケティングプラン、さらには今後のビジョンといったこととブリッジできるものを、このカスタマージャーニーマップの作成過程で作ってほしいんです。
押久保:たとえば、どのような立場や役職の方が参加するといい、ということはありますか?
加藤:リーダーシップを発揮できる人に、ぜひチャレンジしてみていただきたいですね。たとえば、異なる部署間で橋渡し役になれるような人、マーケティングプランを実行していける人、プロジェクトがドライブしていく際に中心となる人が参加するといいですね。
というのは、単にみんなで集まってやればいい、というものではないからなんです。今回でいえば、全員が「マーケターに愛される存在としてのMarkeZine」という共通認識を持てたと同時に、共通認識に向けたアクションがリーダー、ファシリテーターとして参加した押久保さんの中で見えてきたと思います。しっかりリーダーが存在して、リーダーの中にとるべき方針が見えてくることが大切です。
押久保:なるほど、そうなると役職でどうこう、ではないですね。
加藤:そうですね。必然的に役職がやや上の方だったり、CMOだったり、場合によっては社長が、となってくる場合はあります。
「顧客とは誰か」を意識した人選が肝要
押久保:カスタマージャーニーマップ作りに参加したほうがいい部署や部門はあるのでしょうか? 営業部門はメンバーに1名入れておいたほうがいい、ですとか、法人営業担当と消費者向けのマーケティング担当がいれば、それぞれから出しておくべき、などは?
加藤:たとえば、法人向けビジネスと消費向けビジネスでは、設定するカスタマーが変わってきますよね。
最初のSTEP1で「マーケターに愛されるMarkeZine」とテーマを決めました。次のSTEPで、ペルソナを詰めていった際に、マーケージン読者 or 利用者という観点でジャーニーを考えていきました。それが広告主側、出稿主側、テクノロジーベンダーと立場を変えると、ペルソナの考え方が変わります。つまり、「愛される」ことの意味が変わってくる。
誰の、どの立場のジャーニーにするか、で視点が違います。どの立場のジャーニーを考えるか、何を考えるかによって、その部門を担っている人を連れてくるのが最善です。裏を返せば、営業担当を連れてくるなら、ペルソナは営業の視点を入れたほうがいいでしょう。営業の観点から、もっとサービスをよくしたい、パイを増やしたいという意見を出してほしいなら、来てもらったほうがいい。
押久保:ここまでに「長めのスパンを意識したゴールを決める」「誰のためのジャーニーであるかを決める」という話が出てきました。カスタマージャーニーマップを作る上で、注意すべき点はあるでしょうか?
加藤:きちんと時間を意識してファシリテーションする、ということです。ここで用意した作成キットは、8つのステップすべてを「60分」と時間制限しています。マップ作りはステップを進めるごとに、アイディアが膨らんでくるので、いつまでも続けられてしまう。ですが結局、拡散しすぎて収束が難しくなる。話すべきカテゴリが見えにくくなってしまうので、区切ることが重要なんです。