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COLUMN

元プロ野球選手が2年間ツールコンサルをやってわかったこと

デジタル時代でも「リアル」で考えることが大切

 江尻さんの現在の仕事内容について詳しく聞いてみると、ベテラン営業マンのようにマーケティング用語が次々と飛び出してくる。

「ビジネス業界へ転向した選手の最前線にいると思って仕事をしています」(江尻さん)

「現在、私が担当している仕事は、マーケティングオートメーション(MA)ツールや、SNS管理ツール、FAQツールなどを取り扱っています。これらツールの販売だけでなく、販売代理店との協業や、マーケティング会社、メーカーなどへのコンサルティングなどを行い、お客様の成長に貢献するのが私のミッションです」(江尻さん)

 つまり、デジタルマーケティングにおける花形の製品を担当していることになる。この2年間で学んだ、マーケティング業界で仕事をする上で大切にしていることはなんだろうか。

「弊社では多数のツールを取り扱っており、MAツールを導入される場合にはデータ管理ツールもご紹介したり、サイト構築やアプリ開発をご検討であれば、それらを支援するツールのご紹介もしています。また、コンサルティング企業と一緒に戦略を考えたりといったこともしており、デジタル領域の何でも屋さんと言ってもいいかもしれません。

 私自身がこの仕事をしていて感じるのは、デジタルだけに目を向けるのではなく、目の前のクライアントさんをまず大切に、寄り添ってお手伝いをすることが大切だということです。世の中には素晴らしいサービスやツールはたくさんあって、お客様に会わなくても商品が売れる時代になってきています。たとえば、Amazonさんのサービスはネット上だけでも素晴らしいわけです。そのような時代にBtoBで差をつけていくためには、人としてお客様に合った商品や解決策を一緒に考えて、私たちしかできない価値を提供することが大切だと思っています。

 デジタル領域の商品を扱っていると、現実をおろそかにしがちです。たとえば、クライアント企業に単にMAツールを導入すればいい、ということではなく、実際に売上を伸ばす方法はなんだろうと考えながら、日々目の前のお客様の声を聞くようにしています。やはり重要なのは目先の売り上げではなく、クライアント企業の成長です。代理店、マーケティング会社とのコミュニケーションをとり、現場の声や要望を大切にして仕事をしています。もしこれからこの業界で働いてみたいという人がいたら、こうしたリアルの声を大事にしてほしいと思います」(江尻さん)

野球もマーケティングも「戦い方」は似ている

 37歳で新しい世界に飛び込むことは誰にでもできることではない。新しい情報が発信され、進化していくIT業界で生き残ることもまた難しい。それでも江尻さんにはビジネスマンとして結果を残さなければならない理由がある。

「私はプロ野球選手だったから、ビジネスマンとしていい結果を残したいという思いがあります。『あいつは野球しかしたことないから仕方ない……元プロ野球選手だから、まだできなくても仕方ない……』とは言わせたくない。私は『プロ野球選手だったからビジネスもできる』と思っています。ビジネスでもプロ野球でも、“自分の働く場所を死に物狂いで獲りにいかなければならない”のは同じ。私がプロ野球を引退するときにホークスの役員にこう言われました。『経歴やこれまでの経験を武器にしなさい』と。先ほどプレゼンの話にもありましたが、私の場合は、元プロ野球選手ということで、まず皆さんに興味を持って頂くことができます。元プロ野球選手ではなくても、それぞれ自分の強みを最大限に使うことが非常に大切だと思いますね。

 ソフトバンクC&Sという会社には、約1,500人の社員がいます。全員が協力しながら、同時に競争しながら戦っています。これだけの人数がいる中でビジネスマンとして生き残るためには、しっかりとした戦略がなければならない。私はプロ野球で3球団に在籍し優勝も経験しましたが、強いチームは仲間同士の競争が激しかった。思えば、プロ野球選手のとき、楽しいことばかりではありませんでした。日々のトレーニングは地味ですし、練習をしてもすぐに成果が出るわけでもない。それでもコツコツと積み上げていくことが結果に繋がるということは、現在の仕事と共通する部分かもしれません」(江尻さん)

 この2年間、プロ野球のルーキー時代と同じように突っ走ってきた江尻さんの前にはたくさんの課題が転がっている。ノートPCを片手にさっそうと会議室を出るその姿を見て、彼が2年前までプロ野球選手だったと気づく人は少ないだろう。誰の目にも、IT企業のできるビジネスマンに映るはずだ。

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この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

元永 知宏(モトナガ トモヒロ)

1968年、愛媛県生まれ。立教大学野球部4年時に、23年ぶりの東京六大学リーグ優勝を経験。ぴあ、KADOKAWAなど出版社勤務を経て、フリーランスに。『本田宗一郎 夢語録』、『羽生結弦語録』(ぴあ)などを編集。2016年10月に『期待はずれのドラフト1位』(岩波ジュニア新書)を上梓した。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/02/27 08:00 https://markezine.jp/article/detail/26031

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