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MarkeZine Day 2017 Spring レポート

“ブランド横断”の資生堂“商品ブランド”のポッカサッポロ、両社に見るファンコミュニティ運営の姿勢

コミュニティ自体が自走していく

武田:コミュニティ内の消費者のネットワークを可視化したソシオグラムを見ると、まるで生き物のように成長していきますよね。それを見るたび、「コミュニティは生きてるなぁ」と思います。

資生堂のソシオグラム。大きな円が、コミュニティの公式トークテーマを通じたネットワークを表したもので、右側に突出しているのが、公式トピックだけでなく、ユーザー同士でのコミュニケーションもあるユーザーのネットワークを表したもの。時間の経過とともにネットワークが成長し、ユーザー同士のやり取りも活発になっていることがわかる。
資生堂のソシオグラム
大きな円が、コミュニティの公式トークテーマを通じたネットワークを表したもので、右側に突出しているのが、公式トピックだけでなく、ユーザー同士でのコミュニケーションもあるユーザーのネットワークを表したもの。時間の経過とともにネットワークが成長し、ユーザー同士のやり取りも活発になっていることがわかる。

大槻:本当に生きていますね。しかも話題が偶発的なほうが、場は活性化する印象があります。

仙田:ファン同士が活発化すると、誰かの質問に我々が答えるまでもなく、コミュニティの別の方が回答してくれる。そうすると、さらに活発化する。そうして、コミュニティ自体が自走していく感じがします。

武田:消費者が横でつながり合って、一つの生き物のようになり、企業がそれに触れられる時代になったと言えるかもしれません。この状況で、企業はどうあるべきなのでしょうか。

大槻:日本企業の特徴は、長い時間をかけて事業に取り組み、そのなかで人を育み、社会のなかで生かされることだと考えています。私ども、ポッカサッポロは、2013年の経営統合後新社になって丸4年であり、そういう意味では、まだコーポレートブランドで勝負できる会社ではありません。企業の個性を決めているのは個々の商品ブランドです。商品ブランドを光り輝かせることが社会で認められること。商品が認められ、感謝されることで、結果として利潤につながるのです。

 消費者コミュニティを作るときに考えたのは、社会のなかで生かされることを第一に考えて事業をすることでした。短期の関係性ではなく、長期にわたっての絆づくり。たとえばサッポロビールが協賛している箱根駅伝のように、次の世代にたすきをつないでいくようなコミュニティサイトにしていきたいですね。

武田:大槻さんや仙田さんのような方が経営者だったら、消費者コミュニティにも取り組みやすいと思いますが、短期的な利益を見せないと、サスティナブルな消費者コミュニティの運用は難しいケースも少なくありません。その点はどうお考えですか?

仙田:私が所属している部署はECもやっていますので、仰るとおり短期的な売上も求められる現実があります。プロモーショナルな広告的なアプローチと、定常的なファンとのコミュニケーションをバランスよく行っていく必要がありますね。

つながり方は様々/急がば回れで関係を作っていく

武田:最後の質問です。コミュニティをはじめ顧客とつながるために必要な視点は何だと思われますか?

大槻:「お客様は神様」ではありますが、私はすべての声に対して迎合的に受け入れてはダメだと思います。「このブランドをもっとよくしたい」という想いを持った人たちが集まって、良質なコミュニティのなかで意見を持って共創していくことに価値があるのではないでしょうか。

仙田:コミュニティを作ることを考えている企業はたくさんあると思いますが、売上を直接的な目的にすると厳しい。まずは目的を明確にすべきだと考えています。また、コミュニティだけが消費者とつながる方法ではありません。アプリやFacebook、Twitterでファンとつながってコミュニケーションしていく方法もあります。コンテンツ自体も動画や記事だけではなく、ゲームかもしれないし、マンガかもしれない。いろいろなやり方があると思います。目的を考えながらつながる方法を考えることが大切だと思いますね。

大槻:実は、私どもには業績的に苦しいフェーズがありました。業績はかなり立ち直っているんですけど、そのとき何をしたのかと振り返ると、目先の損得を追うのではなく、苦しいときほど原点に返ることが大事なのだと思います。コミュニティサイトを作れば「売上にすぐ直結する」「簡単なエンゲージメントができる」のではなく、自分たちの企業、ブランドのコアバリューを見直し、「お客様と良質な関係を長い時間育んでいける」と考えたほうがいい。時間はかかりますが、「急がば回れ」だと思います。

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この記事の著者

元永 知宏(モトナガ トモヒロ)

1968年、愛媛県生まれ。立教大学野球部4年時に、23年ぶりの東京六大学リーグ優勝を経験。ぴあ、KADOKAWAなど出版社勤務を経て、フリーランスに。『本田宗一郎 夢語録』、『羽生結弦語録』(ぴあ)などを編集。2016年10月に『期待はずれのドラフト1位』(岩波ジュニア新書)を上梓した。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/04/13 11:00 https://markezine.jp/article/detail/26288

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