新たに音声対話というUIが大きく発展
有園:直近のメディア環境でいうと、テレビ番組のネット同時配信というテーマに象徴される放送と通信の融合と、IoT化の中でスマホに取って代わるインターフェースが出てきそうだという、大きな二つの流れがあると思っていて。アレクサは、二つ目のほうを大きく牽引しそうです。

森:同感ですね。ちなみにその二つの流れに加えて、5G(第5世代移動通信システム)の発展も注目です。映像視聴の環境を大きく変えると思います。
有園:ああ、確かに。通信の太い土管が新たにできるようなものですからね。これが一般にも広がって、かたやIoT文脈ではアレクサみたいなものでUIががらっと変わっていくと、本当に現実味を帯びて生活が変わる感じがします。
先ほど、CESでは何百ものアレクサ搭載製品が発表されていたという話がありましたが、そもそもなぜそんなに広がったのでしょうか?
森:開発プログラムが極めて優れていることと、それを元々あるAWS(Amazon Web Service)という開発コミュニティが支えていること、これに尽きます。
アレクサでは、エコーへの“命令”を制御する「Alexa Skills Kit」と、デバイス側の音声を制御する「Alexa Voice Service」という二つの開発プログラムを提供しています。これらが使いやすく、困ったらAWSで相談できる、その結果、CESでアレクサ搭載の家電や自動車が数多く発表され、たった1年でアレクサが音声対話の主役になった。これは誰も想像していなかったと思いますね。
音声対話のプラットフォームへの対応が必須に
有園:各社の製品にアレクサが入っているというと、たとえば冷蔵庫ならトビラを開けずに「卵何個ある?」と話しかけて答えてくれるとか?
森:そうですね。どこまで複雑なことに対応できるかはわかりませんが、付属ディスプレイにレシピを表示させるとか、ECで注文するといったことは先の開発プログラムで可能だと思います。
モノだけでなく、サービスへの実装も進んでいます。たとえばアメリカの大手銀行キャピタル・ワンでは、エコーに話しかければ対話でのネットバンキングができますし、ドミノピザも音声注文ができます。さらにマイクとスピーカーさえあれば、スキルとボイスを使ってエコーと同じものをつくれるので、フォードが自動車のテレマティクスの中に音声対話機能を搭載したりもできるわけです。各社が音声対話を発展させ続ける、そういうエコシステムができています。
有園:なるほど。言い換えれば、Googleが提唱しているマイクロモーメントが、スマホを介さなくても生活のあちこちで実現するイメージですね。すると、そのいろんな接点のマネジメントもしないといけない。
森:それ、わかりやすいですね。まさにアレクサはそういうプラットフォームを形成しそうです。
有園:で、卵を注文する先はもちろんAmazonだと。
森:まあ連動するでしょうね(笑)。だからマーケターは、音声対話というコミュニケーションが一般化したとき、そのプラットフォームに対応していないと選択すらされないという危機感を持つ必要はありますね。
