データ活用と透明性の担保は切り離せない
押久保:広告事業も多岐にわたると思いますが、具体的なアクションとしては、どんなことをされるのですか?

中村:まずは、三方良しになるためには、まずは「データがどうあるべきか」を考え、整備したいと思っています。広告領域だけではなく、広告主の戦略レイヤーを支援するにはどんなデータをどのように活用すればいいのかまで着手するつもりです。
広い視座から入った上で広告領域に関しては、アドプラットフォーム自体がどういう機能を持っていると広告主にとっていいのかも並行して考えていきたいですね。今はまだ、Supershipの持つアセットのポテンシャルを発揮し切れていないと思うので、データを活用しながらクライアントのブランディング領域をしっかりサポートできるようにしていくのが第一歩です。
宮本:僕らもデータを使ったマーケティングをずっと重視してきて、それこそ個々のCPAの改善といったことも大事な要素として取り組んでいますが、そこだけに留まるとデジタル広告の中に閉じた話で終わってしまう。中村さんの知見を得て、支援の領域をもっと広げたいですし、その先では広告主やメディアとのデータ連携や、ソリューション開発も計画しています。
肌感としても、もっと上流領域でデジタルを活用したいという要望が多くなり、データが大事だというコンセプトの時代から、実用ベースに移っている感覚があります。
中村:広告主との関わりでいうと、デジタルマーケティング業界自体の透明性の担保という点が大きいですね。データを使いこなす上で、広告主の今の関心事を考えると、透明性が重要なキーワードになっています。
押久保:なるほど。確かに、今はもうわざわざ「デジタルを使ってマーケティングをしましょう」と掲げる時代でもなくなって、デジタルが一般化した分、ちゃんとやりましょう、というか。
業界の一人ひとりに求められる誠実性
中村:そうなんです。「透明性の担保」って、広告主の事業をお手伝いする上では当然の話なのですが、デジタル領域は本当にすごいスピード感で成長しているので、対応できる技術を持っていても、ビジネスに直結しないけれど本来あるべきインフラの実装が後手に回っていた部分はあると思います。
押久保:いわれてみれば、年末に起こったメディアの信頼性の問題しかり、アドフラウド(Ad Fraud/広告詐欺)の問題しかりちょっと目に余る事態が続いてますね。
宮本:ちゃんとやろうという事業者個々の意志はあったと思いますが、ようやく、業界全体で取り組むべき課題として共通認識がされてきたように感じます。デジタルがここまで生活者に浸透して、世の中の中枢を支えるようなものになりつつある今だからこそ、このスピード感の中でしっかりと品質も担保していく必要がある。事業者の意識も広告主の意識も、そういった方向に変わってきていると感じます。
中村:僕はいっときWebの媒体社に在籍していたので、メディアの信頼性の問題は本当に身につまされました。でも、こういう言い方をすると誤解を招くかもしれませんが、課題認識を持って誠実に運営してきたメディアは残っている。つまり、Webだから気軽・気楽に、ではなくて、ちゃんとすればビジネスは成立して維持することができるんです。
今まではサブ的な存在だったデジタルが、本流になったことで、不誠実なことがあると途端に叩かれるようになりました。だから、透明性や誠実性が注目されて本来あるべき姿に向かおうとしているんだと思います。メディアに限らず、デジタルの仕事をする人の全員に、そんな意識を持つ必要があると感じています。