CPSでリアルとデジタルのマーケティングがおもしろくなる
CPS化が進むと、生活の中でどんなことが起きるのだろうか?
たとえば、イベント会場にいた人の端末に対し「イベントのDVDが発売されます」という広告配信を後日行うことができる。また、デジタルサイネージを見た、近くを通りかかったという端末に対して、スマートフォン広告やプッシュ通知を配信することも可能だ。インターネットの世界と同じように、リアルの世界でも「人」を軸にして行動をトラッキングすることができるようになる。
また、位置情報を使ってリアル空間の調査も行いやすくなる。電通とシナラシステムズジャパン(以下、シナラシステムズ)は位置情報を活用し商業施設の客層を可視化する実証実験を行った。すると、実際の客層がカード会員をもとにした分析内容と大きく違っていたという結果が出た。また、ゾーン(フロア)ごとにどんな属性の顧客がいるのかも把握でき、カード会員の分析では見えなかった真の来店者が見えてきた。
シナラシステムズの技術は、Wi-Fiを通してセキュアに端末の位置情報を取得する。そのデータを活用すれば、モール系通販ではおなじみの買い回り施策など、デジタルマーケティングにおける各種施策がリアルマーケティングの場でも活用できるのだ。
位置情報の精度がオンライン媒体の価値を上げる
これまで、出店し集客をする際、リアルに行っていたエリアマーケティングとデジタルマーケティングは別物という感覚が強かった。リアルな商業施設、小売においてデジタル施策について及び腰な広告主が多かったこともこうした感覚に根差したものである。しかし、スマートフォンの普及とCPSの実現によってリアル空間の情報がデータ化されると、従来のデジタルマーケティングをリアル空間でも同じように考えることができるようになると朱氏は話す。
「オンライン広告で買いつけたインプレッションに正確な位置情報が付与され、コンバージョン(CV)として「来店」が測定できるということなので、考え方は従来のデジタルマーケティングと変わりません。さらに、オンライン広告のKPIが見直され再評価される傾向にあります。バナーや広告を見た人の来店計測ができるようになると、CTRやCPCなど広告へのアクションではなく、来店CVを軸として広告接触体験の価値を重視するようになりますよね。より質の高いインプレッションが求められてくるということです」(朱氏)
シナラシステムズは第三者配信にも対応しているので、他のネット広告の来店CVはもちろん、シナラシステムズ側のエリアデータと組み合わせてオフライン媒体の想定来店CVRが計測できる。すると、来店・購買に対しての費用対効果の可視化ができないことからオンライン広告を控えていた実店舗を持つ広告主も、明確なKPIを軸にしたPDCA型のデジタルマーケティングを行えるようになる。位置情報の充実と精度の向上が、オンライン媒体の価値を上げる要素となるのだ。