メディアのコンテンツは鵜呑みにしてほしくない
MZ編集部:共感と拡散のデザインとは、具体的にどういうことですか?
春日原氏:わかりやすく説明するために、一旦企業の商品のPRという要素を抜いて考えてみましょうか。今回実施したイベントのテーマは「ミレニアル世代の働き方」です。Jonahさんの働き方について取り上げた記事に大きな反響があったので、このテーマを掲げるとともに、彼を起用しました。
そもそも我々は、読者には「HEAPS」に登場する人物や取り上げるストーリーを鵜呑みにせず、一度自分たちで体験・再現してから咀嚼・共感してほしいと思っています。というのも、「HEAPS」で取り上げるコンテンツは、マイナーで突飛なものが多い。さらにユニークな事柄をメディア独自の視点で発信していますから、読者それぞれで、もっと多角的な捉え方があるはずなんです。
今回のイベントは、読者がメディアのコンテンツを実際に体験・再現することで自分なりのストーリーを完成させる場です。こういった場を提供することでメディアにより深く共感し、またそれを発信してもらうことで拡散にもつながると考えています。
MZ編集部:となると、共感を得た後の“発信”が重要になってくると思うのですが、どのように実現したのですか?
春日原氏:イベントでは、写真・動画・文章など表現の方法も含めて、参加者には自由に表現・発信してもらっています。我々の読者には、ミレニアル世代である25~35代の方々と、それと同数の35~45代の方々が多くいらっしゃいます。読者の特徴は、クリエイティブでアントレプレナーシップを発揮している方々が多いこと。この点から“発信”についても、期待できると考えておりました。
MZ編集部:イベント参加者に自分たちのストーリー・共感を発信してもらうことで、共感を量産するということですか?
春日原氏:そうです。今は、生活者のリテラシーがどんどん向上していて、ミレニアル世代では特に、広告色の強いコンテンツは嫌われる傾向があります。我々ではなく、実際にイベントに参加した読者に拡散に寄与してもらうことで、よりリアリティのある情報になりますし、情報を受け取る人を巻き込む力も格段に上がります。
拡散を求める手法は今様々にありますが、先述した通り、拡散するだけではファンは創造できません。この点で、今回のイベントは一般的なインフルエンサーマーケティングよりも成果につながりやすいと考えています。
また今後は、企業の商品・サービスとメディアのコンテンツを絡ませて、PRイベントも開催する予定です。今回も、このイベントのスタイルに興味を持ってくださった企業の方が見学にいらしていました。企業ごとにイベントをカスタマイズしたり、イベントの一部のコンテンツとして取り上げるなど、色々なやり方があると思っています。
ペントハウスなどで開催しているディナークラブを再現
MZ編集部:1~2日目のディナー会の様子はどうでしたか?
春日原氏:大盛況でしたよ!ディナー会を開催した意図は、Jonahさんの提供する「ソーシャルダイニング」を体験してもらうことです。メディア的には、Jonahさんを取り上げたコンテンツを体験してもらうことが目的です。
 MZ編集部:どのような方が参加されたのですか?
春日原氏:参会者には、一般応募と招待者、コントリビューターの3枠がありました。招待者は、これまでにメディアに対して何かしらのアクションを起こしていることを条件に、インフルエンサー・ナノインフルエンサーを招待しました。メディアと無関係の方を招待しても、イベントに巻き込むことはできないので、この条件は必要不可欠です。
一般応募、コントリビューターの枠にも、れっきとしたインフルエンサーの方が応募してこられましたね(笑)。音楽や食器、食材など、イベントを色々な形で一緒に創り上げていくコントリビューターと一般応募でそれぞれ約10人、合計20人程度の枠を設けていたのですが、その枠に対して280人の応募がありました。その中から我々で選抜させていただいた方と、イベントを共創しました。
MZ編集部:開催されたディナー会は、パーティーのようなイメージでしょうか?
 
 春日原氏:Jonahさんがニューヨークでやられているサパークラブというディナークラブを再現しました。彼は今、ニューヨークのペントハウスに間借りしていて、そこでよくサパークラブを開催しているので、それをイメージして表参道のホテルの一室と、青山のキッチンスタジオで実施しました。
MZ編集部:予約4,000人待ちのシェフの料理を食べることができるなんて、とても貴重な体験ですよね。SNSなどでイベントのレポートを発信した人も多かったのでは?
春日原氏:イベント参加者を応募する段階からカウントして、全体的なリーチは28万程度まで到達しています。総勢124人が定員のイベントにも関わらず、大きな成果を出せたと考えています。
