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企業の「売りたい」が見透かされる時代に「買いたい気持ち」を作るには? 西井敏恭さんに訊く

 とかく新しいものに注目が集まるデジタルマーケティング。しかし、オイシックスの西井敏恭さんは、「デジタルマーケティングには順番がある」と語ります。10月23日に発売となった西井さんの新著『デジタルマーケティングで売上の壁を超える方法』に託した思いについてうかがいました。

企業の「売りたい」が見透かされる時代に

――新著『デジタルマーケティングで売上の壁を超える方法』は、西井さんが読者に直接話しかけているような文章で、非常に楽しく読むことができました。

西井:ありがとうございます。もともとECzine主催の読者イベントでのトークショーをもとにして加筆していったので語り口調になっています。「デジタルマーケティングって難しそう」と思っている人にも読んでほしかったので、わかりやすく説明することを心掛けました。

――いま、デジタルマーケティングについての入門書を執筆されたのはなぜですか?

西井:日本全体がもっとデジタルに強くなってほしいという思いがあるからです。デジタルと聞くだけで尻込みする人もいるかもしれませんが、基礎を押さえればそんなに怖いものではありません。とりわけ経営層はついAIのような流行り物に目が向いてしまいがちですが、ウェブやアプリを上手に使って成果をあげましょうというのがまずスタート地点。デジタルマーケティングの領域が拡大している現在、その全体像をとらえることは難しいですが、本書はそんなときにまず読んでおけばいい本になれればと思っています。

西井敏恭さん

西井敏恭さん:オイシックスドット大地 執行役員 CMT(チーフ マーケティング テクノロジスト)

――本書は、スマホの登場で消費者行動が変化したことから話が始まります。具体的にはどう変化しているとお考えですか?

西井:たとえば旅行。僕が十数年前に旅行していたときはネットに情報がなく、ガイドブックが大事な情報源でした。そのガイドブックに載っている情報も決して多くはありません。少ない情報の中で現地に辿り着き、何も知らない状態で旅行を楽しむわけです。スマホはないので迷子になりますし、待ちぼうけを喰らうこともよくありました。でも、そのときは辛くても、結果的に楽しかったなと思えたんです。

 今ではネットに情報がたくさんあって好きなように取捨選択できます。行きたいところだけに行けますし、変な失敗もしないで済むようになりました。つまり、旅行に出かける前にいろんな情報を得られるんです。さらに最近は、インスタ映えするかどうかがその場所を訪れる基準にさえなっています。いずれも十数年前にはありえなかったことです。

 そうしたお客さんの変化を考えると、かつてのテレビCMやダイレクトメールをそのままオンラインに持ってくることをデジタルマーケティングだと言うことはできません。また、企業だけでなく、消費者も情報を発信し共有できる時代になったことで、企業の「売りたい気持ち」が見透かされるようになってきました。その中で「買いたい気持ち」になってもらうにはどうしたらいいか。そのことにも重点を置いて説明しています。

――本書のタイトルだけを見ると「売上の壁を超えるならAIが必要だろうか」と飛び道具を考えてしまいそうです。

西井:(笑)僕は多くの会社のデジタルマーケティングを支援しているのですが、仕事柄、デジタルに投資したのに効果が出ていないという相談を受けることがあります。しかし、よくよく分析すると、デジタルに効果がないのではなく、きちんとしたモデルができていなかったり、基礎的な部分が疎かになったりしている場合が多いんですよ。広告を打って効果がないときも、広告が悪いとは限らず、他の部分に問題があるかもしれないんです。

 デジタルマーケティングには順番がある。なので、まずは全体像を把握して、何からやっていくのかを知ること。そして、どこに課題があり、どのチャネルでどんな施策を打てばいいのかを検討し、目標とする売上を実現していく。デジタルはいろんな考え方やツールがそれぞれつながっていて、しかもそれぞれ奥深い。本書を読んでいただければ、一人で仕事を回している人も、チームを組んでいる会社も、自身のやるべきこと、見るべき数字を理解できると思います。

企業は当たり前のように「結婚しよう」と言ってしまう

――印象的だったのは4章の「CRMは心理学である」です。そこではCRMを「恋愛」にたとえています。

西井:恋愛を取り上げたのは、CRMでどんなコミュニケーションを設計すればいいのかをわかりやすく説明するためです。LINEで気になる相手にメッセージを送って1日以上返信がないなら、普通は脈なしだと判断しますよね。反応がないからと何度もメッセージを送れば余計に嫌がられます。あるいは、最初はご飯に誘うところからですが、いきなり「結婚しよう」とメッセージを送るのはおかしいです。

 なのに、ビジネスだと企業はお客さんに最初から「結婚しよう」と言ってしまうんですよ。しかも何度も。このように恋愛に例えてみると、知らず知らずやってしまっている問題点も見つかるんです。いきなり結婚は受け入れられなくても、あいさつくらいなら嫌がれないでしょう。CRMはそうやって少しずつ関係構築していくことが肝要です。

西井敏恭さん

マーケターはどうやってレベルアップすればいいのか

――最後に、マーケターがどんな勉強をしていけばいいのか教えていただきたいです。

西井:いろんなことに興味を持ち、アイデアをいつも考えておくことですね。僕はゲームが好きなんですが、優れたゲームの心理的な側面はマーケティングにおいても参考になると思います。ソーシャルゲームに月10万円使う人もいますが、そこにはやっぱり「ハマる」とか「熱狂する」といった心理があります。どの企業でも、お客さんに熱狂してほしいと思っているはずです。

 どんな商品も他社と似てくるのは避けられず、誰が作っているのかが重要になっていきます。そうなったとき、商品はお客さん自身が持つ企業との関係性でしか選ばれなくなります。そこでキーになるのが「ハマる」ということです。継続的なコミュニケーションがいかに大事か、想像するのは簡単でしょう。金銭的なインセンティブでお客様をつなぎとめるだけではなく、持続的な関係構築を望むなら、ゲームから学ぶところは大きいと思います。

 デジタルマーケティングはとにかく実践が大事。フェイスブックでどうやったら「いいね」をたくさんもらえるか、どうやったら多くの人にフォローしてもらえるかを1年間真剣に取り組んだら、フェイスブック広告の運用でもトップになれる可能性がある。自分のアカウントで試すことはすぐできるのでそういうところからやってほしいですね。

 あとは、副業でアフィリエイトをやってみるのもいいと思います。3か月以内に1個でもいいので商品を売ってみてください。簡単なようで、けっこう難しいですよ。アフィリエイターになると、何が売れるのか、どう売ればいいのかとまずビジネスモデルを考えますよね。サイトやブログを作るにもHTMLやCSSの知識、魅力的なカラーやレイアウトを実現するデザイン力が必要です。買ってもらうためには、情報の拡散も必要です。たった1個の商品を売るために、やるべきことがたくさんあるんですよ。

 この過程で大事なことはビジネスの全体像を理解すること。本書では、その全体像の中で各種施策がどういう位置づけにあるのかを繰り返し解説しています。「何のためにやるのか」。これを常日頃意識することで、自分が勉強すべきことも見えてくると思います。

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デジタルマーケティングで売上の壁を超える方法

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デジタルマーケティングで売上の壁を超える方法

著者:西井敏恭
発売日:2017年10月23日(月)
価格:1,944円(税込)

本書について

いわゆる「新規とリピート」の観点から顧客について多角的に分析。デジタル時代における、新規顧客と継続顧客、さらにはロイヤルカスタマーをどのように生み出し、デジタルの接点を通じてコミュニケーションし、強固な売上の土台を築いていくか、その基本的な考え方をまとめました。

 

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この記事の著者

渡部 拓也(ワタナベ タクヤ)

 翔泳社マーケティング課。MarkeZine、CodeZine、EnterpriseZine、Biz/Zine、ほかにて翔泳社の本の紹介記事や著者インタビュー、たまにそれ以外も執筆しています。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2017/10/30 07:00 https://markezine.jp/article/detail/27172