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小学館とディーエムソリューションズの事例に学ぶ、メディアマネタイズの種を見つける方法

 小学館とディーエムソリューションズは、インタースペースとクオントが協業してリリースした、アフィリエイトの成果につながるユーザーの行動や特徴を分析する新サービスを導入した。その狙いやデータによるアフィリエイトの新しい活用法を、4社の担当者に取材した。

メディアの新たなマネタイズの形に取り組む4社

MarkeZine編集部(以下、MZ):今回の取材では、インタースペースとクオントが協業で生み出した新サービスについて、提供企業である両社と導入企業の小学館、ディーエムソリューションズの方をお招きし、話を聞いていきたいと思います。

 では最初に、インタースペースの塚田さんとクオントの足立さんから事業の紹介をお願いします。

塚田:インタースペースは、2001年から提供している、アフィリエイト広告のプラットフォーム “アクセストレード”を主力事業として展開しております。アクセストレードには、現在約50万の提携メディアが登録し、約18,000の広告キャンペーンが動いています。

左から、クオント株式会社 代表取締役社長 足立和久氏
株式会社インタースペース 取締役 広告事業管掌 塚田洋平氏
ディーエムソリューションズ株式会社 バーティカルメディア事業部 取締役 事業部長 木村和央氏
株式会社小学館 広告局 デジタルメディア営業センター 主任 河村英紀氏

足立:当社は、読者IDといったオーディエンスデータを約4億保有し、記事が効果的に読まれているかどうかなどのデータを、システムを使ってメディア各社に対し提供しています。

MZ:では、続いて今回両社の支援を受けているディーエムソリューションズの木村さんと小学館の河村さん、職務を含めた自己紹介をお願いします。

木村:私は、 3年前に立ち上げたバーティカルメディア事業部に所属し、メディア運営を担当しています。バーティカルメディアとは専門性の高いサイトを意味しています。

河村:小学館というと出版事業のイメージが強いと思いますが、私はその中でもWebメディア、アプリのマネタイズやビジネス開発を担当しています。

アフィリエイトがメディアマネタイズの手法に

MZ:皆さんのプロフィールはわかったところで、今回の取り組みについてお聞きします。まず、インタースペースとクオントが協業した背景について、塚田さんから教えてください。

塚田:日本では、アフィリエイトはネットビジネスのイメージが強く、アフィリエイトサイトのほとんどは個人の方や、法人でもニッチな分野に知見のある企業が運営しています。しかし、海外では大手ニュースメディアでもアフィリエイトを正当なマネタイズ手段として活用しています。弊社はこの背景から、メディアの皆様にアフィリエイトによるマネタイズ手段を提供しようと考えました。

 ただ、我々は広告効果に関するデータはあるものの、専門性の高いアフィリエイトメディアと異なり大手のニュースメディアなどはユーザーの興味や関心がわかりにくく、メディア内のユーザーの動きやどれだけコンテンツが読まれているのか、再訪問が起きているのかといったエンゲージメントを視覚化できていませんでした。

 そこで今回クオントさんと協業することで、メディア内のユーザー行動やエンゲージメントデータと広告クリックや購入などのアクションによるマネタイズの相関性を把握して支援を強化したいと考えたのが、今回の取り組みの背景です。

MZ:日本のメディアにアフィリエイトをマネタイズの手段として提供する狙いがあったのですね。足立様はいかがですか。

足立:昨今、キュレーションメディアの信頼性が問われる事件があって以降、各メディアでコンテンツの質を高める動きが進んでいます。その結果、制作コストが高騰し、既存のアドネットワークだけでは収益確保できなくなっているという状況が起こっています。

 そこで、テクニカルなマネタイズ方法としてアフィリエイトなどが模索され始めたのが2017年前半のトレンドでした。しかし、コストをかけてクオリティを上げた記事を制作しても、高額なアフィリエイト成果につながるのかというのが疑問視されていました。

 それを証明できるかどうかはさておき、やはり明確な可能性を示していく必要があるのではと塚田さんにご相談しました。

求めていたのは、ユーザー行動の見える化

MZ:今回サービスを導入されたお2人は、どういった背景のもと新サービスを導入されたのですか。

河村:私たちは、ネットワーク広告、タイアップ広告以外のマネタイズ手法としてアフィリエイトによる広告収入に注目しており、それをスケールさせたいと考えていました。

 加えて、コンテンツの質が重視される流れがある中で、伝統的な出版社である小学館としては「質の高いコンテンツ」と雑誌に紐づいた「メディアのブランド」を強みにしてきましたが、今回の取り組みでそれがどのようにWebサイトのエンゲージメントやコンバージョンに結びついているのか見える化したいと考えました。

木村:我々は、リスティング広告やアドネットワークの運用を支援しており、分析ツールも見ていますが、まだ見えていないことが多いと考えています。

 物を買う行為1つ取っても、人によって様々な感情がともなうと思います。たとえば、あるコンテンツの読了率が100%でも必ず購入するとは限らない。反対に読了率30%でも、同じ商品について違う切り口の記事をいくつか読むことで購買につながったというケースもあるはずです。そういったユーザーの動きの意味をもっと知りたいと思い、導入しました。

データでこれまでの仮説を実証

MZ:では小学館とディーエムソリューションズの取り組み状況について教えてください。

塚田:ディーエムソリューションズ様が5月末から、小学館様は6月中旬からデータを蓄積していて、現在分析を進めているところです。

MZ:導入されてみて、現段階での印象はいかがですか?

木村:これまで培ってきた様々な感覚、たとえば「滞在時間が長いユーザーを増やせば良い」といったようなものが、本当に購入やサービス申込みにつながってるとわかったのが大きいですね。

 これまでに、広告ですぐにLPに飛ばす、コンテンツで理解を深めてから送客する、など様々な取り組みをしてきました。ただ、これをCTRや滞在時間などだけではどの施策が本当に良いのか判断がしづらい。

 しかし、今回の取り組みで読了率なども把握できるようになったため、コンテンツで理解を深めてから送客したほうがCVRは高いことを証明できました。当たり前の話かもしれませんが、それを事実に基づいて証明できたのはとても嬉しかったです。

河村:これまでのGoogleアナリティクスでも様々なデータを見ることはできましたが、今回の取り組みによって、どのくらいエンゲージメントがコンテンツによって深まったか可視化されてわかりやすくなりました。それをどう収益化につなげるかは、試行錯誤している段階です。

データ活用でコンテンツを金のなる木に

MZ:塚田さんと足立さんとしては、今後どういった支援を行いたいですか。

塚田:両社共に今後、もっとデータがたまってくるはずなので、様々なご提案をしたいですね。今回の協業による分析結果では、良くコンテンツが読まれていたり、1ユーザーあたりの閲覧数が多いエンゲージメントが高いとされているユーザーほど、広告をクリックしたり、その後の購入などのアクション、つまり収益可に貢献する傾向があることがわかっています。

 あるメディア様では、サイト内のコンテンツをエンゲージメントの高さとマネタイズの貢献度の2軸で検証した結果、ユーザーのエンゲージメントは高いが、収益可できていないコンテンツが多く存在することがわかりました。

 これは、広告クリックや購入アクションを生み出す可能性のあるコンテンツともいえるので、アフィリエイトやアドネットワークなどの収益可につなげる動線を加えるといった施策を打つことができます。つまり、これまで培ってきた資産の有効活用ができるので、両社にもそういった提案ができると良いですね。

足立:導入メディアが自分たちの持っているデータを開示することで、広告主のタイアップ出稿につなげるといったこともでき始めています。

 昨年のキュレーションメディアの騒動以降、広告主企業の中にはリスクを考えてオウンドメディアを持たず、代わりにメディアのタイアップ広告でマーケティングに取り組むというケースが増えています。その際にメディアがデータを開示することで、広告主もより最適なメディアを活用し、ターゲット層の認知獲得状況を定量的に把握できるようになります。

MZ:確かに印象論ではなく、データで自社に合ったメディアを選べたら良いですね。小学館さんではそういったデータの開示は進めていますか。

河村:営業にセールストークで活用してもらうことはありますね。“この記事は読了率がすごく高い”といったことをフックに、広告主に合った提案ができていると思います。我々としても、今後もデータは活用していきたいですね。

編集者の感性とデータを上手く組み合わせる

MZ:では、最後に今後の展望を聞かせてください。木村さんからお願いします。

木村:コンテンツのフォーマットによってコンバージョンがどう変わるのかわかるようになるとおもしろいですね。昨今動画がフォーマットとして注目を集めていますが、果たして本当に購買につながるものなのか。動画のコストはテキストの数十倍、数百倍かかるので、成果もそれに比例して上がらないと割に合いませんので、検証できたらおもしろいですね。

 また、先述のマネタイズに至っていないがエンゲージメントの高い、金のなる木になる可能性の高い記事を、どう見せ方を変えてコンバージョンを生み出すコンテンツにするかを考えたいですね。これもデータを蓄積していくと取るべき施策が見えると思うので、分析に励みたいと思います。

MZ:まさにコンバージョンを科学していますね。河村さんはいかがですか。

河村:雑誌が主業の小学館は、発行している雑誌の数だけWebサイトもあります。しかし、それぞれがセグメントされたバーティカルなメディアが多く、規模感を追い求めるには限界があります。

 「数」だけではなく、「質」の面で、それぞれが個性を放ち、ユーザーと深いエンゲージメントで繋がれたサイト群にグロースさせていく必要があります。そのためにもデータ活用を今後も積極的に行っていく必要性を感じています。

 あとは、「編集力」や「編集者の感性」といった今まで可視化することが難しかった出版社の持つ人的な資産にデータの力をかけあわせることで、サイトグロースやマネタイズの良いサイクルを作っていきたいです。

マネタイズにつながるフォーマット、クリエイティブ開発にも注力

MZ:サービスを導入された2社に展望を語っていただきましたが、サービス提供側の両社にも今後の展望をお伺いします。塚田さんはいかがですか。

塚田:データの可視化によって、マネタイズのチャンスを発掘することはもちろん、先ほど木村様がおっしゃったような、マネタイズにつながるフォーマットやクリエイティブも開発したいですね。

 また今後、アフィリエイトは単なるアドのネットワークではなく、マネタイズ手段として、より言葉の意味が変わってくると思います。そのため、アフィリエイトをマネタイズの手段に採用するメディアを増やしていき、多くのデータを分析して、各メディアがコンテンツという資産を有効活用できる新たな方法を提供できればと考えています。

 コンテンツ制作に対する投資回収効率を高め、コンテンツの価値をより高め、ユーザーの満足度も向上させることでメディアに人が集まってくる。その循環を、データを使って作って行きたいです。

足立:我々は記事型メディアだけでなく、動画メディアやゲームアプリの相互送客プラットフォームを運営する企業のお手伝いもしています。それで比べてみると、記事型メディアのユーザーリーチの幅広さというのは圧倒的です。

 たとえば動画は若年層が中心となって相当な再生回数を生み出してますし、ゲームにしても、一部の人がすごく熱狂的にお金を落としている世界です。それに比べ、多くの人が大なり小なり触れる記事型メディアは、ユーザー接点の創出という点ではものすごくポテンシャルがあります。

 我々としては、ゲーム、動画、記事、すべてのコンテンツに関わるデータを取得して、コンバージョン、マネタイズまでの勝ちパターンを生み出し、各メディア様をご支援していきたいですね。

MZ:アフィリエイト自体はデジタルマーケティングの黎明期からある手法ですが、ここにきて、活用の幅が広がっているように感じます。今後、各メディアがどのように活用を進めるのか、期待しましょう。

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この記事の著者

東城 ノエル(トウジョウ ノエル)

フリーランスエディター・ライター 出版社での雑誌編集を経て、大手化粧品メーカーで編集ライター&ECサイト立ち上げなどを経験して独立。現在は、Webや雑誌を中心に執筆中。美容、旅行、アート、女性の働き方、子育て関連も守備範囲。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2017/10/23 09:00 https://markezine.jp/article/detail/27212