“デジタリアン”とDMが化学反応して生じる、新ビジネスのヒント
鈴木:業種は異なりますが、今回こうして実証実験に参加する会社同士の会話の中で、それぞれ共感する部分はありましたか?
上田:LIFULLさんのお話を聞いてDMから広がるビジネスの可能性を感じました。LIFULLさんがお持ちのデータには、住み替えや新居といったライフイベントの情報が入っていますよね。これをアンバサダープログラムと組み合わせられないかと感じました。
結婚、資格といったライフイベントは熱心な情報収集や発信につながりますが、たとえば結婚式を挙げた後は情報収集や発信がぱったり止んでしまうのが課題であり、家探しについても同様の傾向があると考えています。
しかし、家探しや引っ越しを考える中で、先人が経験したのと同じ課題を抱えている人はいるはず。そこで、住み替えを経験してきた人をアンバサダーとして、これから同じ経験をしようとしている人に向けて情報発信してもらうことで、双方のコミュニケーションが高まり、LIFULLという会社へのエンゲージメントが高まるのではないでしょうか。
具体的には、転居などのきざしをデジタルでキャッチして、「住まい探しについての経験を発信してください」という内容のDMを発送するとよいかもしれません。
野口:実は私も似たようなことを考えていました(笑) 私のミッションの1つに「ユーザーデータを活用してLTVを高めていく」というものがあります。
特定の期間に物件検索を熱心にしていて、その後HOME’Sを訪問しなくなった方を「引っ越し済み」とみなして家具や家電をレコメンドするというのもその一環なのですが、アンバサダーとして住み替えについての情報を発信していただくのも魅力的ですね。
特に、住み替えのようなライフイベントは、一生のうちに何度も経験するものではないので、自分で知識を高めていくというのは難しいだけに、アンバサダーの情報は貴重なはずです。
上田:住居情報は、ライフステージや家族構成によって見る視点がバラバラだと思うので、そこをセグメントして情報を出し分けるといいかもしれません。情報発信はデジタルでもできますが、デジタルだけだと顕在層にしかリーチできないので、やはりそこで潜在層へリーチするためにDMが有効なんですよね。
野口:今回の実証実験参加に当たり、鈴木さんとお話しした時に、全日本DM大賞の事例を紹介していただいたのですが、その際にDMならではの表現力や工夫にびっくりしたんです。当社のマーケティング施策はこれまでデジタルに寄っていたので、表現力といっても、広告枠の中で動画にするか静止画にするかということが中心だったんですよ。そういう意味でも、DMの訴求力や情報発信力には期待しています。
鈴木:そこに、人を動かすメディアとしてのDMの可能性があるのでしょうね。DM、言い換えれば「お手紙」には、デジタルではかなわない、ハイタッチな、お客様との親密な関係へとつながるコミュニケーションを形にする力があります。
また、デジタルコミュニケーションに反応する「ホットリード」と、反応がない「コールドリード」を分析すると、実はまったく違いがないということもあるんですよ。違いといえば、デジタル上で反応があるかないかということだけ。リーチできていないから「コールド」だと思いこんでいるだけで、アナログでリーチすると「ホット」だったとわかることは少なくない。実はこれ、BtoBでもBtoCでも同じです。
そこを埋める手段として、DMは大きな可能性を秘めています。ただし、かつてのように「数打ちゃ当たる」ではなく、デジタルと組み合わせて、適切なタイミングで必要な情報を正しい手段で送ることで、ユーザーの行動喚起につながっていく。
だから、チャネルだけではなく、広告や情報もオムニ化していかないといけないんです。今回の実証実験を通じ、アナログの可能性や、デジタルと組み合わせることで実現できる効果を、デジタル重視の“デジタリアン”の方に訴求できたらいいなと考えています。