時代の変化にともない、指標の見方も変わってきた
デジタルマーケティング施策を進める上で、最初に着手しなくてはならないことは、施策の目的と成果を測るための指標を設定することだ。だが、この指標作りに悩む企業は意外と多い。どのデータが何を表しているのか、特定のデータを見ているだけでいいのか、指標設定から分析や運用のやり方まで、悩むポイントはいろいろある。
広告効果測定ツール「アドエビス」を提供する株式会社ロックオンにも、「どんな指標を見れば良いのか」との相談が多く寄せられるという。同社 カスタマーサクセス部 課長兼コンサルタントの小岡崇氏は「追跡する指標を特定することは難しい」と話す。その理由は2つある。
1つは、企業の特性や案件ごとに、重要となる指標は異なるため、一概に「これを見ておけば大丈夫」と呼べるものはないこと。強いて言えば、コストの観点から成果を測るCPA(Cost Per Action/Cost Per Acquisition:獲得単価)はベーシックに使える指標だが、これはあくまでコスト面から見た評価でしかなく、実際の成果に直結するものではない。
もう1つは、メディア自体が大きく変化していることが挙げられる。広告メディアも、かつてはディスプレイ広告やリスティング広告が主流だったが、今は動画広告の勢いが強い。サイバーエージェントの調査によると、動画広告市場は、3年後の2020年には現在(2017年)の196%に成長すると見込まれている。また、その広告を視聴するデバイスも、PCからスマートフォンへとシフトし、これにともないインフィード広告などスマホアプリに特化したメディアも登場してきた。「こうした変化により、指標の質や見方が変化しています」と小岡氏は語る。
押さえておくべき「背景をあらわす」数値
こうした前提を踏まえ、小岡氏は「マーケターなら、絶対に見ておかなくてはならない数値があります」と説明する。それが「背景をあらわす」数字だ。
ここでいう背景とは、コンバージョンに至るまでのプロセスを指す。実際に自分の身を振り返ってみると理解できるが、コンバージョンに至るまでには、何度も同じ広告をクリックしてどうするべきか悩み、逡巡するのが普通だ。小岡氏によると、購買に至った件数のうち、67%が「複数の広告接触」によって生み出されているという。アパレルなどの消費財では、73%が複数の広告接触に寄るそうだ。
そこで押さえておくべきは、「何回、広告に接触したのか」という数値と、「初回の接触からコンバージョンに至るまで、どれくらいの期間がかかったのか」という数値だ。単純に、売上件数や金額ではなく、顧客にどのような変容をもたらしたのか、きちんと傾向を把握することで、初めて広告の成果を正しく把握できるという。
「今は、メディアの種類や広告に接触するデバイスが大きく変化しているので、自社の顧客にとってどのメディアがどんな効果をもたらすかを把握していないと、見当違いの投資に陥ってしまう可能性があります。背景をあらわす数値をしっかりと把握することで、より効果的な施策への投資が可能になるのです」(小岡氏)