デジタルマーケティングの役割は、刈り取りから育成へ
もう1つ、マーケターが理解しておくべき変化がある。それはデジタルマーケティングの役割が、刈り取りから育成へと変化していることだ。
「かつてデジタルマーケティングといえば、SEMやSEOで、ニーズを持つユーザーに対してダイレクトに広告を当て、コンバージョンにつなげるやり方が主流でしたが、今は動画など様々な表現や、自社の独自メディアを使って潜在層に働きかけ、態度変容を喚起する育成型マーケティングへと変化しています。そのため、コンバージョンの件数や登録者数、売上額を単純に集計するのではなく、その後ろにある『認知』から『情報収集』『比較検討』『申し込み=コンバージョン』に至るプロセスの中で、数値を把握することが必要なのです」と小岡氏は説明する。
実際、先進的なアドエビスのユーザー企業の中には、こうした変化を踏まえ、独自の評価指標を作り、効果を上げている企業もあるという。
テレビCMがネット広告に与える効果を検証
先進ユーザーとして小岡氏が紹介したのは、看護師用白衣や衣料品の通販サイト「Nursery」だ。
同社では、今年の3月から5月にかけ、認知度向上のため初めてテレビCMを展開した。ただ、テレビCMがWebにどのような影響を与えているのか、またネット広告も含めて様々な広告の間接効果をどう計ればいいのか、悩んでいたという。
そこでこの会社では、アドエビスを利用して3つの観点で効果測定を行った。第一に、テレビCM出稿期間中における自然検索やGoogle AdWordsなどを含めた各媒体の評価、第二にテレビCM連動広告を経由したユーザーとしていないユーザーの行動をトレース、第三に広告別に「アクション喚起率」を定義・測定し、今後の広告運用の参考にしたことだ。ちなみにここでいうアクションとは、「広告経由で初めて接触、サイト来訪し、その後自然検索で再来訪した」と定義したという。
結果として、テレビCM配信中に出稿したテレビCM連動広告をクリックしてサイト来訪したユーザーは、その後のコンバージョン率も20%超と通常広告に比べてプラスの影響を与えていたことがわかった。またテレビCM連動広告を見たユーザーは、見ていないユーザーに比べてコンバージョン率だけでなく売上単価も高いという結果が出た。これに加え、広告接触後のアクション喚起率の高い(=自然検索を多く誘発させている)広告を洗い出すことで、サイトの流入数・獲得件数も増加しやすいことがわかり、今後の広告投資の判断基準となったという。
広告ごとの貢献度を把握し、広告運用をより戦略的に
これに対し、人気アパレルのDIESELは、認知度向上からコンバージョン直結を目的とするものまで、カスタマージャーニープロセスに則って様々な広告を展開していた。そのため広告効果の成果が断片的にしか把握できず、最終的にどれだけ売上金額に影響を与えているか、把握しきれなかったという。
この状態を解消するため、同社はまず保持している広告データを整備し、広告単体ではなく、ユーザーごとに「どんな広告接触経路をたどり、1回の広告接触がいくらの購入に貢献したのか」を把握できるようにした。その手法として、接触した広告の数で購入金額を分配し、1つの広告接触がどれだけ売上に貢献したのかを数値化し、投資対効果を可視化。これにより、広告ごとの売上貢献度がわかるようになり、次の広告運用をより戦略的に進められるようになったそうだ。