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MarkeZine Day 2017 Autumn(AD)

その成果指標では役に立たない! デジタルマーケティングで見るべき指標とは

 アナログマーケティングに比べ、成果の数字を把握しやすいといわれているデジタルマーケティング。だが最近は、メディアの多様化や、デジタルマーケティングの役割が変化してきたことにより、指標の見方や必要なデータも変化している。こうした時代の変化に合わせ、デジタルマーケティングの成果指標をどう見るべきか。MarkeZine Day 2017 Autumnにて、株式会社ロックオン カスタマーサクセス部 課長兼コンサルタント 小岡崇氏が語った。

時代の変化にともない、指標の見方も変わってきた

株式会社ロックオン カスタマーサクセス部 課長 兼 コンサルタント 小岡崇氏

 デジタルマーケティング施策を進める上で、最初に着手しなくてはならないことは、施策の目的と成果を測るための指標を設定することだ。だが、この指標作りに悩む企業は意外と多い。どのデータが何を表しているのか、特定のデータを見ているだけでいいのか、指標設定から分析や運用のやり方まで、悩むポイントはいろいろある。

 広告効果測定ツール「アドエビス」を提供する株式会社ロックオンにも、「どんな指標を見れば良いのか」との相談が多く寄せられるという。同社 カスタマーサクセス部 課長兼コンサルタントの小岡崇氏は「追跡する指標を特定することは難しい」と話す。その理由は2つある。

 1つは、企業の特性や案件ごとに、重要となる指標は異なるため、一概に「これを見ておけば大丈夫」と呼べるものはないこと。強いて言えば、コストの観点から成果を測るCPA(Cost Per Action/Cost Per Acquisition:獲得単価)はベーシックに使える指標だが、これはあくまでコスト面から見た評価でしかなく、実際の成果に直結するものではない。

 もう1つは、メディア自体が大きく変化していることが挙げられる。広告メディアも、かつてはディスプレイ広告やリスティング広告が主流だったが、今は動画広告の勢いが強い。サイバーエージェントの調査によると、動画広告市場は、3年後の2020年には現在(2017年)の196%に成長すると見込まれている。また、その広告を視聴するデバイスも、PCからスマートフォンへとシフトし、これにともないインフィード広告などスマホアプリに特化したメディアも登場してきた。「こうした変化により、指標の質や見方が変化しています」と小岡氏は語る。

押さえておくべき「背景をあらわす」数値

 こうした前提を踏まえ、小岡氏は「マーケターなら、絶対に見ておかなくてはならない数値があります」と説明する。それが「背景をあらわす」数字だ。

講演資料より

 ここでいう背景とは、コンバージョンに至るまでのプロセスを指す。実際に自分の身を振り返ってみると理解できるが、コンバージョンに至るまでには、何度も同じ広告をクリックしてどうするべきか悩み、逡巡するのが普通だ。小岡氏によると、購買に至った件数のうち、67%が「複数の広告接触」によって生み出されているという。アパレルなどの消費財では、73%が複数の広告接触に寄るそうだ。

 そこで押さえておくべきは、「何回、広告に接触したのか」という数値と、「初回の接触からコンバージョンに至るまで、どれくらいの期間がかかったのか」という数値だ。単純に、売上件数や金額ではなく、顧客にどのような変容をもたらしたのか、きちんと傾向を把握することで、初めて広告の成果を正しく把握できるという。

 「今は、メディアの種類や広告に接触するデバイスが大きく変化しているので、自社の顧客にとってどのメディアがどんな効果をもたらすかを把握していないと、見当違いの投資に陥ってしまう可能性があります。背景をあらわす数値をしっかりと把握することで、より効果的な施策への投資が可能になるのです」(小岡氏)

デジタルマーケティングの役割は、刈り取りから育成へ

 もう1つ、マーケターが理解しておくべき変化がある。それはデジタルマーケティングの役割が、刈り取りから育成へと変化していることだ。

講演資料より

 「かつてデジタルマーケティングといえば、SEMやSEOで、ニーズを持つユーザーに対してダイレクトに広告を当て、コンバージョンにつなげるやり方が主流でしたが、今は動画など様々な表現や、自社の独自メディアを使って潜在層に働きかけ、態度変容を喚起する育成型マーケティングへと変化しています。そのため、コンバージョンの件数や登録者数、売上額を単純に集計するのではなく、その後ろにある『認知』から『情報収集』『比較検討』『申し込み=コンバージョン』に至るプロセスの中で、数値を把握することが必要なのです」と小岡氏は説明する。

 実際、先進的なアドエビスのユーザー企業の中には、こうした変化を踏まえ、独自の評価指標を作り、効果を上げている企業もあるという。

テレビCMがネット広告に与える効果を検証

 先進ユーザーとして小岡氏が紹介したのは、看護師用白衣や衣料品の通販サイト「Nursery」だ。

 同社では、今年の3月から5月にかけ、認知度向上のため初めてテレビCMを展開した。ただ、テレビCMがWebにどのような影響を与えているのか、またネット広告も含めて様々な広告の間接効果をどう計ればいいのか、悩んでいたという。

 そこでこの会社では、アドエビスを利用して3つの観点で効果測定を行った。第一に、テレビCM出稿期間中における自然検索やGoogle AdWordsなどを含めた各媒体の評価、第二にテレビCM連動広告を経由したユーザーとしていないユーザーの行動をトレース、第三に広告別に「アクション喚起率」を定義・測定し、今後の広告運用の参考にしたことだ。ちなみにここでいうアクションとは、「広告経由で初めて接触、サイト来訪し、その後自然検索で再来訪した」と定義したという。

 結果として、テレビCM配信中に出稿したテレビCM連動広告をクリックしてサイト来訪したユーザーは、その後のコンバージョン率も20%超と通常広告に比べてプラスの影響を与えていたことがわかった。またテレビCM連動広告を見たユーザーは、見ていないユーザーに比べてコンバージョン率だけでなく売上単価も高いという結果が出た。これに加え、広告接触後のアクション喚起率の高い(=自然検索を多く誘発させている)広告を洗い出すことで、サイトの流入数・獲得件数も増加しやすいことがわかり、今後の広告投資の判断基準となったという。

広告ごとの貢献度を把握し、広告運用をより戦略的に

 これに対し、人気アパレルのDIESELは、認知度向上からコンバージョン直結を目的とするものまで、カスタマージャーニープロセスに則って様々な広告を展開していた。そのため広告効果の成果が断片的にしか把握できず、最終的にどれだけ売上金額に影響を与えているか、把握しきれなかったという。

 この状態を解消するため、同社はまず保持している広告データを整備し、広告単体ではなく、ユーザーごとに「どんな広告接触経路をたどり、1回の広告接触がいくらの購入に貢献したのか」を把握できるようにした。その手法として、接触した広告の数で購入金額を分配し、1つの広告接触がどれだけ売上に貢献したのかを数値化し、投資対効果を可視化。これにより、広告ごとの売上貢献度がわかるようになり、次の広告運用をより戦略的に進められるようになったそうだ。

接触タイムスタンプを活用したアトリビューション分析

 小岡氏が最後に紹介したのが、求人マッチングサイトを展開するAtraeだ。同社では、通常のCPAやアトリビューション分析に際し、次のような課題を抱えていたという。

 「CPAの評価で運用すると、競争が激化している健在層向け施策(リスティング、リターゲティングなど)に偏ってしまい、アトリビューション分析をすると、評価したくないものまで評価してしまう……、そんな悩みを抱えていました。たとえばアトリビューションの場合、ユーザーが3ヵ月前にクリックしたものや、必要以上にビュースルーも効果にカウントされてしまうケースがあります。こうしたものを排除し、効果があったとされるものを洗い出すために、ユーザーごとに接触タイムスタンプがあるローデータを使いたいという要望をいただきました」(小岡氏)

 そもそもアトリビューション分析とは、間接効果を含めた広告効果の指標だが、通常のやり方だと、その間接効果自体がいつ発生したのかがわからない。Atraeではそこに着目し、接触した時間がわかるローデータをアドエビスから抽出して分析を行った。

講演資料より

 考え方としては、次のようなものだ。まず1年間蓄積したアドエビスのデータのうち、一定期間より以前のクリックについては無視。そしてビュースルーについては、コンバージョンパスにあるものについては「効果あり」とカウントし、最終コンバージョンに寄与した広告の接触回数を集計していく。小岡氏によると、これはあくまで考え方の例で、実際に同社が利用したロジックとは若干異なるが、「時間軸を含めて効果を検証することで、評価対象でない広告の評価を行わないことにより、正確な成果判断ができる」という。

正確な成果判断のため、今やるべきこと

 これらの事例を紹介し、小岡氏は、今マーケターが実践すべきことを次のようにまとめた。

 「できるところからで構わないので、Webの接触データやオーディエンスデータを蓄積・管理することから始めましょう。これまではコンバージョンデータだけでアトリビューションや間接効果を見ていましたが、今はユーザーごとのWeb上ですべての接触履歴が紐付いたデータが残っているので、できるならこれを活用すべきです。そしてコンバージョンしていないユーザーについては、むしろアンケートなどを取って『なぜ購入しなかったのか』を単刀直入にヒアリングし、その意見を踏まえて改善すること。この両方が整うと、より売れる仕組みが作れるようになります」(小岡氏)

 デジタルマーケティングは、データが把握しやすく、アナログの施策に比べて成果判断がしやすいといわれている。だがデータが多く、広告のメディアも役割も多様になると、むしろ多すぎるデータにおぼれて本質を見失いかねない。そうした事態を防ぐためにも、精度の高いデータをしっかり把握し、分析できるマーケティングプラットフォームを導入しておくことが必要になるだろう。

 また最後に、アドエビスはただのデータトラッキングツールから脱却する宣言もされた。

 「これからは、ユーザーごとの接触データを蓄積するだけで、取得したデータを分析・評価・クラスタリングまで簡単に行い、獲得可能性の高いアトリビューションを持ったユーザー群に絞ったターゲティング配信を行うまで、一気通貫してチェックからアクションまでつなげることが可能となります」(小岡氏)

 10月よりDSP(Logicad)との連携を果たし、アドエビスは更なるデータドリブンマーケティングの加速を狙う。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2018/01/22 16:07 https://markezine.jp/article/detail/27223