日本市場をよく知るパートナーが必要
――大阪のアメリカ村に進出した際は、商品が売れすぎて欠品して、いったんお店をクローズしたことがまた話題を呼んでいましたね。
そこが、難しいなと彼らが痛感した部分だったと思います。結果的にはPRにもなりましたが、やはり日本市場をよく知るパートナーが必要だということで、候補のひとつになったのがサザビーリーグでした。
当時、新規事業の責任者をしていた、現Zebra Japan代表取締役の山本浩丈は、東日本大震災のあとだったので、日本を元気に明るくできる事業を探していたようです。ただ、サザビーリーグは過去にスターバックスをはじめ外資事業の日本進出を多数手がけてきたこともあり、多くのブランドからジョイント打診があるのですが、フライングタイガーもその中のひとつでした。ジョイントで大事なことは、大切にする価値観を本音で共有できるかどうか。
そこで山本が初めてレナートに会ったとき、持参したフライングタイガーのジャンボ鉛筆でメモを取ったそうです。するとレナートが爆笑して、お互いに周囲を楽しませたいと真摯に考えている姿勢がわかった。そうしてサザビーリーグとしても腹をくくり、フィフティー・フィフティーの資本で合弁会社がスタートしました。
ちなみに私は2014年11月からジョインしています。前々職のスターバックスで山本と知り合い、その縁で誘われたときも、このブランドを通して日本を元気にしたいと延々語られました(笑)。
――そうなんですね(笑)。柘野さんが今マーケティングを統括されていますが、どんな体制なのですか?
当社は本部機能全体でも30人ほどで、マーケティング機能はストア販促、デジタル、ソーシャルに一人ずつと私を含めて4人です。
デジタルまわりは本国との兼ね合いで、正直言ってかなり遅れています。ユーザーは商品情報を知りたいニーズが強いものの、商品の入れ替わりがかなり激しい中で、やっとその点も含めて情報発信ができるスマートフォンにも対応したプラットフォームの整備をしたところです。
「Everyday Magic」毎日の幸せを提供するために
――先ほども、レナートさんとブランド哲学を共有したパートナーと組むというお話がありました。フライングタイガーのブランド哲学をうかがえますか?
私たちはミッションとして「We are catalyst for your dreamand ideas.」と掲げています。カタリストとは触媒のことで、「フライングタイガーはお客様の夢やアイデアを実現するきっかけになります」といった意図ですね。あくまで主役はお客様だという発想です。
このミッションの下に、6つの行動指針があります。常識にとらわれない、失敗を恐れない、愛を込めて人を巻き込む、心のドアを開け続ける、仲間を思いやる、顧客を優先する。それぞれの部門と役割でこれらを解釈し、行動に落とし込んでいきます。私たちスタッフは、業績と、これらが職位に応じてどのくらい実現できたか、言い換えれば「どれくらいブランドらしく仕事ができたか」の両方を組み合わせて評価されます。

また、ミッションとともに大事な点があります。顧客に対する約束である「Everyday Magic」というタグラインです。これも重要な要素ですね。意味は、たとえば年に1回の誕生日やクリスマスなら、皆さん特別な日として時間やお金をかけて準備しますよね。そうではなく、フライングタイガーはちょっとした工夫や発想、相手への思いやりで、皆さんの毎日が昨日と違うハッピーな日になる“Magic”をかけたいと考えています。
そうすると、おのずと手に届きやすい商品でなければいけない。安いことが支持されるひとつの要因だとは思っていますが、それは毎日幸せを感じていただきたいからなんです。