コミュニケーションビジネスの本質がある
なぜ、カンヌ・ライオンズは常に新しいチャレンジを続けるのか? それは、コミュニケーションビジネスの本質がそこにあるからだ。これまでと同じ発想・手法・表現で同じ内容を発信しても訴求力を持ち得ない。
その一方で、変わらないものもある。それは、時代と空間を超越する価値観である。カンヌでは、2010年頃から「for good」(人類の普遍的価値)が大事にされるようになった。つまり、人類が昔から大事にしている価値である。
この背景には、グローバリゼーションの流れがある。グローバリゼーションは、欧米文化の世界的な浸透にともなったブランド(P&Gやユニリーバ、アディダス、ナイキなど)のグローバル化を招来し、かつ、GoogleやFacebookなどに代表されるようにコミュニケーションのグローバル化を生み出した。
時系列で確認してみるとわかりやすい。
1992年:マーストリヒト条約(欧州連合条約)
1995年:Windows95
1998年:Google創業
2004年:Facebook設立
2006年:Twitter設立
2008年:AppleのiPhone登場
2010年:「アラブの春」(欧米中心のグローバリゼーションへの反動)
2016年:Brexit(イギリスの欧州連合離脱を問う国民投票)
現代史・業界史を確認すると、なぜ、2010年頃からカンヌ・ライオンズでは「for good」(人類の普遍的価値)を重視するようになったかがみえてくる。それは、ブランドとコミュニケーションのグローバル化によって、一部の地域・国だけで通用する価値観では、世界的には受け入れてもらえなくなるからだ。ちょうど、2010年に「アラブの春」が勃発したことがそれを如実に示している。
カンヌ・ライオンズに参加して思うのは、日本には最前線で戦っている真の意味でのグローバルブランドは少ないという事実だ。
「ガラパゴスにならない。グローバルにビジネスを展開したい。そのために、どのような価値を大事にするべきか」。カンヌのセッションの中でも、特に、毎晩のように実施される「Award Show」に参加することで、日本人にとっては多くの学びがあると思う。
実際の作品に触れ、また世界的著名人の話を直接聞けるチャンス
私自身がカンヌに行く最大の理由は、単純に、好きだからだ。実際の作品に触れるのも好きだし、セッションで世界的な著名人の話を直接聞けるのも好きだ。
たとえば、2016年には Will Smith氏が登壇したし、Oliver Stone氏も登壇した。また、国連事務総長が登壇するかと思えば、CNNのAnderson Cooper氏も登壇した。とにかくゲストが豪華で、コミュニケーションビジネスが好きな人には楽しくて仕方がないと思う。