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トリプルメディアを一歩進めた、“PESOオーダー”という新発想

トリプルメディアと呼ぶのは、日本だけ。 POEMとPESOと“PESOオーダー”。


POEM(トリプルメディア)はいかにして生まれ、なぜ広まったのでしょうか?

 POEMと呼ばれるこの分類は、2009年5月に当時フロッグデザインという有名デザインカンパニーのCMOであったティム・レベレヒトが、WebメディアのCNETのコラム『Multimedia 2.0 : From paid media to earned media to owned media and back』で提唱したものです。

 筆者の記憶では、2009年6月のカンヌライオンズの英語によるセミナーでは既に取り上げられていて、その年の冬くらいからセミナー等で日本でも紹介されるようになり、翌2010年6月発刊の『トリプルメディアマーケティング』(インプレス、横山隆治著)で広く知られるようになりました。

 それ以前から“広告と広報の融合”といった形で議論されていた事象に、自社Webサイト等の重要性を加味して、発信者である事業会社(広告主)側からの視点で3タイプに整理し、その組み合わせの重要性を説いた点で、POEMには大きな意味がありました。3タイプを並べることによって、我々が従来“広告”と呼んでいたものは、メディア社に対して対価を支払っている(Paidな)メディアなんだとハッキリ認識できたのです。そして、我々はPaid=広告だけではなく、OwnedとEarnedも同じように視野に入れるべきだと、認識できました。

 こういったことが語りだされた背景には、“マーケティング・メッセージの乗り物としてのマスメディア”のパワー低下があります。20世紀においてはマスメディアが、マーケティング・メッセージ露出のための、ほとんど唯一の手段だったと考えられます。当時、この手段としてのインターネットもソーシャルメディアも、ほとんど存在しなかったのです。マス広告は唯一の手段だっただけではなく、それなりに有効だと考えられていました。

 ところが21世紀に入り、デジタルシフト&ソーシャルシフトが勢いを増すにともないマスメディアのパワーが低下すると、“マス広告が効かない”と言われ始めます。つまり、マーケティング・メッセージの乗り物としてのマスメディア=マス広告という乗り物の“燃費悪化”が起きて来るわけです。しかし、発信側である事業会社としてはどうにかしてメッセージを届け、自分達のプロダクトやサービスに興味をもってもらい好きになってもらい買ってもらわなければなりません。マス広告の燃費が悪くなったのなら、他の方法を模索しなければならないのです。

 そうして、広告と広報の融合や、戦略PRや、口コミ活用や、効果的な自社Webサイトの構築など、様々な試みがなされます。そうした状況の中で、発信者側から見た視点で、すなわちマーケティング・メッセージの乗り物としての視点で、メディアを3タイプに分類したことは、言われてみれば当たり前なのですが、なかなかに画期的であり、広く知られるようになったわけです。

 大手広告代理店の皆さんも、こぞってこの考え方を取り入れます。POEMを上手く組み合わせた“統合型マーケティング・ソリューション”が、各社の提案のスタンダードになっていきます。注意しておきたいのは、従来の定義からすれば、“広告”とはPaidのことを指していたわけです。OとEまでをも守備範囲にすることで、広告代理店はもはや“広告”代理店とは言えない存在になっていくのです。

 私自身も好んで使っているのですが、「広告コミュニケーション」という言い方がこの頃から一般的に使われて行きます。ここで使われている“広告”という言葉の意味は、Paidに限定されているわけではなく、“マーケティング・メッセージを乗せる乗り物”全般といった意味合いです。その意味で、「広告コミュニケーション」は、POEMの3タイプのメディアすべてを視野に入れ取り扱ったものと考えることができます。

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そして、“PESOオーダー”という新提案

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この記事の著者

佐藤 達郎(サトウ タツロウ)

多摩美術大学教授(広告論/マーケティング論/メディア論)。2004年カンヌ国際広告祭フィルム部門日本代表審査員。浦和高校→一橋大学→ADK→(青学MBA)→博報堂DYMP→2011年4月 より現職。
受賞歴は、カンヌ国際広告祭、アドフェスト、東京インタラクティブアドアワード、ACC賞など。審査員としても、多数参加。個人事務所コミュニケーション・ラボにて、執筆・講演・研修・企画・コンサルなども。また、小田急エージェンシーの外部アドバイザー、古河電池の社外取...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2017/12/25 16:14 https://markezine.jp/article/detail/27606

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