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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

定期誌『MarkeZine』特集

売り手ではなく生活者と自然の論理に則って

無印良品のファンはどうやって広がっているのか

――そのぶれないロジックとは具体的にどういう内容なのでしょうか?

 賛同者を増やすステップには、三段階あると考えています。まず、理念を発信して共感してくれる人を見つける。次に、共感してくれた人とつながる。そして、つながった人たちに対して会話を繰り返していく。人と人との関係で考えると、当たり前のことですよね。

 特に最初のステップが、肝心の理念が関わる部分になります。以前TEDに登壇して話題になったコンサルタントのサイモン・シネック氏の、ブランドやリーダーが周りをどう動かすかを図式化した「Golden Circle」のフレームワークに照らし合わせるとわかりやすいのですが、無印良品で起点となる「WHY:なぜ存在しているのか」は、前述の理念で世界を変えることです。ここでは例として「足なり直角靴下」について解説していますが、「HOW:どうやって表現するか」と「WHAT:何をもって伝えるか、解決するか」はそれぞれ図のようになります(図表2)。

図表2 「Golden Circle」のフレームワークに照らし合わせる
図表2 「Golden Circle」のフレームワークに照らし合わせる

 大事なのはオンラインでも、オフラインでもWHYからコミュニケーションが始まることだと思います。たとえばいちばん大事な店頭において、特徴的なのは商品のタグで、一つひとつに商品が生まれた“理由(わけ)”を書いており、店頭で配布している「TheWhy of MUJI(無印良品の理由)」という冊子にもまとめています。それから、とにかく売りたいという企業の都合主導の過度なPOPなどはつけていません。本当に生活に必要な商品を納得して買って欲しいと思うこうした姿勢は、それに共感する人が集まってくれる要因だと思います。

 店頭以外だと、ネットが登場する以前は、企業が言いたいことを広く伝える役割は広告が担っていました。でも今は、WebサイトやSNSもある。アプリ「MUJI passport」は今5ヵ国で展開し、累計DL数は1,400万になりました。SNSも350万ファンがいるFacebookをはじめTwitterやInstagram、中国圏だとWeChatなども活用しています。直接つながることのできる手段ができたのは、とても大きいです。

アプリ「MUJI passport」のトップページ
アプリ「MUJI passport」のトップページ

大事にしているのは人と人との当たり前の対話

――以前と比べると、確かにファンとつながり対話を重ねることを大切にしていると言えますね。Webサイト「くらしの良品研究所」の、商品の改善や新規アイデアを投稿できるコミュニティも、ネットがあるからこそですし。

 そうですね。ファンが可視化される場が増えたので、結果的にファン同士もつながりやすくなったと思います。ファンの方々との直接のつながりは、結果的にすべてブランド資産となり、後々に効いてきます。なので、理念を伝える活動は未来への投資と言えます。そうやってつながったら、あとは常に対話を繰り返していく。企業から顧客へ、ではなく、企業も一人のかたまりと捉え、人と人とのコミュニケーションを心がけています。

――企業も一人の人間のような振る舞いが求められているということでしょうか。

 そもそも企業は生活者の集合体です。良品計画だと私を含めて一人ひとりが、無印良品が好きで働いているので「無印良品ファンの集まり」とも言えます。だから価値観やライフスタイルを発信していくときの揺れや方向性の違いがあまりないのかもしれません。

 広告のコミュニケーションは大抵、まず100万人に伝え、そこから購買ファネルへ落とし込んで最終的に何%がコンバージョンしたか、という考え方をすると思います。一方無印良品は、無印良品が好きな内部の人間から一番近い100人へ、その100人からまた知人友人の100人へ伝わっていく、そんな波及を重ねてここまできました。決して、一斉に空から100万人に網をかけるようなコミュニケーションで広がったのではなく、地道なものです。商品のスペックや価格ではなくストーリーを伝えて、「いいね」と思ってくれた人からつながっていく、という。

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ブランドや顧客のストーリーを伝える

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この記事の著者

市川 明徳(編集部)(イチカワ アキノリ)

MarkeZine編集部 副編集長
大学卒業後、編集プロダクションに入社。漫画を活用した広告・書籍のクリエイティブ統括、シナリオライティングにあたり、漫画技術書のベスト&ロングセラーを多数手がける。2015年、翔泳社に入社。MarkeZine編集部に所属。漫画記事や独自取材記事など幅広いアウトプットを行っている。
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※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/06/07 10:52 https://markezine.jp/article/detail/27639

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