メディアに期待するのは本質的な情報の報道
――先ほど、メディアを介した広告的なアプローチは前時代的で、今は直接つながれることに価値があるといったお話がありました。元々御社はメディアへの広告出稿をほとんどされていませんが、この時代にメディアに期待することはなんでしょうか。

そうですね、確かに「広告枠」としては重視していないのが正直なところです。
それ以外だと、一つはパブリシティです。それは単に商品PRを載せてほしいといった意味ではなく、あくまで中立の第三者視点で当社を取り上げていただけることに意味があると思っています。中立だから、信頼性がある。
もう一つは、当たり前かもしれませんが、メディアのジャーナリズムに期待しています。BtoCのメディア、BtoBのメディアにかかわらず、やはり正しい情報を報道してほしい。一過性の現象を取り上げるのも、メディアの役割のひとつかもしれませんが、私も含めて生活者にとっての価値を考えると、ブームの表層だけでなく本質を伝えることに重きを置いてほしいと思います。
――では、テクノロジーに期待することは?
単に効率化という方向だけで進むと、少なくとも無印良品だと本当に大切なことを見失ってしまうと思います。我々も実は以前、有楽町の旗艦店に商品検索端末を置いたことがありました。お店でスタッフが聞かれるのは、商品の場所や在庫がほとんどですが、お待たせすることもあるので、ご自身で調べてもらうほうが早いのではと考えました。
でもこれはうまくいかず、端末はほとんど使われないまま撤去しました。お客様は商品の在庫を早く知りたいだけで、ややこしい端末の操作を望んでいないのです。こうした機械が有効な店舗や業態ももちろんありますが、お客様が無印良品に期待することとは違ったのです。なのでお客様が質問したいときにすぐスタッフに聞けて、聞かれたらその場ですぐ答えられるように、情報端末など、裏側の仕組みにテクノロジーを活用してお客様の体験をより良いものにしていければと考えています。テクノロジーありきで考えるのではなく、理想的な顧客体験を起点に、すべてのサービス開発をしていきたいと思います。その結果、無印良品の活動への参加者が増えることにつながると信じています。