お客様との繋がりを意識するようになったのはSNSのお陰。
このように売上だけ、瞬間の顧客満足だけでは見えてこない、お客様との良質かつ永続的な関係性をどのように築けば良いのだろうか? 私は先述の事例を通して、改めて顧客満足の先、売上の先に、お客様との繋がりを可視化する「エンゲージメント」(Engagement)構築が大切になってきているように思う。

デジタルマーケティングではよくSNSを活用したお客様との繋がりを「エンゲージメント」という言葉で説明している。そもそもエンゲージメント(engagement)の意味はなんだろうか。辞書を引くと、「約束」「契約」という単語が出てくる。つまり、マーケティングにおいては企業とお客様との間に生まれる絆、繋がりということだろう。
一般的に、デジタルマーケティングの世界で言われるSNSのエンゲージメントとは、投稿や広告に対して、ユーザーが起こしたアクション全般を指す。たとえば、facebook上のいいね!の数や、シェア、ユーザーのコメント数だ。
筆者もSNS がマーケティングに活用され始めた6、7年前は、そのようなお客様のアクションをエンゲージメントと捉え、企業内で報告をしてきた。今でも多くの企業ではこのような指標を定期的にチェックしていると思う。
とはいえ、これだけでは本当にお客様と繋がりが生まれているのかはよくわからない。SNSでの活動は多様な消費者行動のごく一部だからだ。ただし、学術的にもエンゲージメントの指標化は大変難しく、「企業やブランドとの繋がり」というかなり個人差がありそうな指標をどのように可視化すれば良いのかという問いに対する明確な答えは出ていないといえる。
一方で、エンゲージメントが重要視され、小生も実務家として、そしておじさん学生としても(!?)オムニチャネル時代の消費者行動に学術的興味を持つきっかけとなったのは、ネット上の購買行動や、SNSでのお客様の企業に対するコメントや評価の可視化が進んだからだろう。
SNSやネットがここまで普及する前は、企業はテレビや新聞・雑誌、ラジオなどといったマスメディアや、ダイレクトメール、カタログ送付といった一方通行のコミュニケーション手段によってお客様に自社のブランドやサービス、製品について知ってもらうことしかできず、その反応を見ることは困難だった。
ところが、インターネットとSNSが普及することで、企業側からお客様にアプローチすることが容易になり、お客様からのフィードバックも受け取れる双方的コミュニケーションができるようになった。
であれば、もちろん、実務家としてSNSを活用したエンゲージメントの可視化も大切だが、なんとかしてエンゲージメントをもっと高い精度で可視化できないか、オンラインからわかることに加えて、リアル、オフラインでの定性的なエンゲージメントの可視化ができないないか? そう考えて、色々な先行研究を読み漁っていたところ、考え方として大変参考になる論文を見つけたので紹介したい。