で、Customer Engagementってどうゆうふうに出来上がっているの?
最後に、この論文が示してくれている構成要素を筆者なりに図にしたものを見ていただき、この論文から得られる示唆を考察したい。

この図は私がこの論文を読んで思いついたエンゲージメントと売上の関係図だ。売上=CLVの上には3つの価値CRV、CIV、CKVが交わりあっている。
つまり、売上という最もわかりやすいものの上に、友人同士の「このブランドいいわよ!」(CRV)といった会話やお客様自らの営業力、SNSで自社商品の写真をアップしてくれて、お客様のライフスタイルの一部として商品利用を他者に自信を持って公開する(CIV)行為、お客様自ら貴重な時間をものづくりコミュニティや、サービス改善の要望投稿に使い、積極的にその企業と交流する(CKV)といった行為が重なりあって初めて「エンゲージメント」が生まれ、永続的な売上に繋がるのではないかと考えている。
ただ売上が上がれば良い。きっとお客様は満足してくれているはず。と考えるのは少し危険かもしれない。もちろん、CRV、CIV、CKVといった指標をどのように定量化して見て行くべきなのかはまだまだ議論の余地を残している。だがデジタルマーケティングに携わる我々は、売上だけを追いかけるのではなく、CRV、CIV、CKVと言った売上に間接的に寄与する指標を積極的に向上させるといったことにも貢献するべきではないか。「購買の時間」だけを見ていては、お客様との真の繋がりは生まれない。
もちろん、優れた商品を提供し続けてくれさえすれば、特に企業との繋がりは求めていない、黙々と購入を続けてくださるお客様もたくさんいらっしゃる。必ずしもエンゲージメントをお客様と構築しなくては商売に負けるわけではないだろう。
しかし、Beyond Purchase、つまり購買という行為を超えた先に本当にマーケターがもたらす価値があると思われるし、その価値を作り出すためのマーケティングに挑戦してもらいたい。これだけお客様のことがわかる時代に、「売上がよければ大丈夫でしょ」ではつまらないじゃないですか?
今回紹介した論文は以下の通りです
Kumar, V., Aksoy, L., Donkers, B., Venkatesan, R., Wiesel, T., & Tillmanns, S. (2010). Undervalued or overvalued customers: capturing total customer engagement value. Journal of Service Research, 13(3), 297-310.