ICT市場で拡大する非IT事業部門の投資に対応
セッションの最初、狩野氏は「今世界各地で、デジタル革新が進んでいます」と語り、あるデータを見せた。
それは2017年2月、富士通が世界15カ国の経営層を対象に行った調査で得られたデータだ。「デジタル革新に取り組んでいるか?」という質問に対して、デジタル革新を実施、トライアル、具体的な検討に入っていると回答したのは約9割で、日本も北米もあまり変わらない数値だった。
業種別に、デジタル革新への取り組み状況を聞いてみても、金融や医療、製造など多くの業種で約半数がそうした取り組みをしていると回答している。非常に多くの企業がデジタル革新に取り組んでいることは明白だ。
「取り組む背景として多いのは、新しいプレーヤーに自分の領域が侵されていて、それに対抗する手段がデジタルであったというケース。富士通自身が、デジタルマーケティングに取り組み始めたのは、今までお付き合いしていたお客様の急速な変化が最大の理由です」(狩野氏)
富士通調べの米国の調査データによると、米国ICT市場でのIT投資の8割が、非ITの事業部門(Line Of Business=LOB)へとシフトしており、デジタル化により市場の顧客が拡大しているという。
「富士通のお客様でも、非IT部門のお客様が増えており、これまでのマーケティングの仕方では通用しなくなっています。彼らへのアプローチの仕組みを作っていち早く積極的にアプローチを行っていかなければなりません。
加えて、それまで営業、事業部など組織ごとに管理していた顧客から様々な接点で得られるデータを、一元化して“見える化”していかなければならないという課題もありました」(狩野氏)
富士通3つのチャレンジポイント1:「コンテンツ」
では、実際にどのような取り組みを実践しているのか。狩野氏が束ねるマーケティングコミュニケーション本部の活動方針は、オンライン・オフラインを組み合わせたコンテンツ起点でのマーケティングコミュニケーションと、デジタルマーケティングの実践により、拡大する非IT部門へのアプローチを強化していくこと。
この活動方針のもと、同部は2017年4月より、プランニング、コンテンツ、プロモーション、デジタルマーケティングといった機能で構成された新体制で、施策を展開している。
同社の取り組みにおけるチャレンジポイントは、「コンテンツ」「デジタルマーケティング実践」「グローバル」の3つだ。
一つ目のコンテンツについて狩野氏は「色々な仕組みを用意しても、コンテンツ勝負ということに帰結する」と主張する。同社のコンテンツを起点としたデジタルマーケティングへのシフトは、2014年頃から進められてきた。
オウンドメディア「FUJITSU JOURNAL」を大幅にリニューアルし、2015年には、SNS公式アカウントを立ち上げた。さらに、2016年には社内にプロジェクトチームを作り、MAやプライベートDMPの活用をスタート。並行してモバイルアプリをリリースし、イベント等との連動も行ってきた。そして現在は、デジタルとアナログを組み合わせたコンテンツマーケティングを実践している。
具体的には、ターゲットごとにシナリオを策定し必要なコンテンツを制作。顧客検討ステージに合わせ、デジタルではSNSや広告、オウンドメディア、メルマガ、アプリといった施策を展開する。
アナログではイベント、セミナーに加え、年間数百回のワークショップを開催。営業用の冊子で、デジタルとアナログを上手く組み合わせ、早いタイミングで様々なコミュニケーションを取っている。