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有園が訊く!

「YouTube買収は晴天の霹靂。たまげたよ」元Google副社長村上氏が縦横無尽にあの時を語った

「民放連としての見解は出さない」

有園:ただ、訴えがあったら対応しないといけないんですよね?

村上:そう、だから「バイトの皆さんから通報していただかないと動けないんです」と。ま、当然だけど怒りは収まらないよね(笑)。結局、スティーブたちが「正規コンテンツを預けてくれたら自動検出して削除する仕組みを、1年以内に作る」と申し出てまとまって、実際に半年ほどでできてきました。

有園:それもまたすごいスピードですね。

村上:そのあたりから、テレビ各局の雰囲気も変わってきてね。あるとき、当時の民放連の会長で大分県人会のつながりもあったテレビ朝日の広瀬さんに呼ばれて行くと「民放連としての統一方針は出さないから」とひとこと、言ってくれました。これがよかった。

 民放連としてまとまると、一気に一寸も動かなくなるけど、ばらけると各社が「ネット配信の抜け駆けはされたくないけど……できたら抜け駆けしたいな~」と足踏みをし出すから。それが、今日に至るわけですよね。

 でももっとすごいのは、電通だよね。東京では高田さんがテレビ・キー局の手前、怒った顔をしながら、YouTubeの最初の広告枠はしっかり電通関西が押さえて、大和ハウスのCMが流れてたよ。恐れ入ったね(笑)。

有園:まだまだ裏話が出てきそうですが(笑)、最後に、近未来の働き方はどうなるのかというご意見を聞きたいんです。たとえばAIが広がると雇用が減るから、ベーシックインカムもあながち現実味のない話でもない…という論説もあります。

村上:たとえば2017年5月にハーバード大の卒業式でザッカーバーグが述べた祝辞では、ユニバーサルベーシックインカムのような制度を検討すべきと語っていました。今のまま技術ばかりが進むと、未来は単にバラ色なだけじゃない、という話も聞かれますね。

今が次の人類史のはじまりのはじまり

村上:僕が関わっている総務省のAIネットワーク社会推進会議や、相変わらず下手くそな英語で議長させられた日独ハノーバー宣言調印時の在日ドイツ商工会議所主催のAI会議でも、そんなことが話されたりしました。

 技術が発展すると、何らかの理不尽な立場に追い込まれる人が出てくることは、今に始まったことではないんだけど、ただし今回はかなり大規模な変化だから、あくまでひとつの方法として、ベーシックインカムのような仕組みを社会制度にすることもあるかもしれない。相当、時間はかかると思いますが。

有園:政府としては、どういう見解なんでしょうか?

村上:政府はIoTやロボット、AI、ビッグデータなどの新技術を取り入れて起こる第四次産業革命によって、新たに発展する社会を「Society 5.0」と呼んでいます。

 これは人類史的な区分けで、ざっと振り返ると1.0が自然物採取の時代、2.0が定着した農耕社会、3.0が工業社会、4.0が情報社会。今は、その次の、はじまりのはじまりに来ているのだろうという感じはしますよね。僕はもう70ですから、それに立ち会える若い皆さんはうらやましいですよ。

内閣府サイトより掲載
内閣府サイトより掲載

有園:でも、村上さんは150歳くらいまでお元気そうですよね(笑)。

村上:よくぞ言ってくれました、もう対策してある(笑)。『シンギュラリティは近い』を書いたAI研究の権威のレイ・カーツワイルと、実は1980年代にボストンで会っています。

 そのときに彼は、いずれ傷んだ手足や臓器を置き換えて人間はサイボーグ化すると話していました。会ったのは人工知能学会で「ノリオ、脳みそがいちばん置き換えにくいんだ」という。彼と僕とは同い歳なんだけど、その彼が僕が辞めた後に65歳にしてGoogleに入って、今X(Google X)をやっている。あ、これは自分がサイボーグになる研究をしているんだなとわかったから、僕が最初の実験台になろうと思ってるんです。

有園:……と、村上さんの話は尽きませんがこのあたりで失礼して、2018年も本連載によろしくお付き合いいただければ幸いです!

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2018/01/12 14:00 https://markezine.jp/article/detail/27708

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