ビューアビリティ(Viewability)とは
これまで、デジタル広告は、CPC(クリック単価)、CPA(顧客獲得単価)などの“刈り取り”を広告パフォーマンスの主要指標としてきたが、近年“ビューアビリティ”が注目され始めている。

ビューアビリティとは、ネット広告がビューアブル(閲覧可能)な状態で表示されているかを測る指標だ。米MRC(※1)とIAB(※2)は「広告の50%以上が、1秒以上(動画の場合は2秒以上)ユーザーが視認可能な状態」を提唱し、業界のスタンダードとなっている。
※1:MRC(Media Rating Council)メディア調査会社の監査や認定審査を行うアメリカの業界団体
※2:IAB(Interactive Advertising Bureau):米国のインターネット広告の業界団体
例えば、ページをスクロールしなければ表示されない広告は、読み込みは完了していても、広告掲載枠がモニター画面に出現する前にページからユーザーが離脱してしまうことが多くある。つまり、ユーザーが広告を見ていないにもかかわらず、課金されてしまう。
「見られることのない広告に価値はない。しかし実際には、現在運用されているデジタル広告の約半数は見られていない。デジタル広告技術が洗練されるに比例し、広告主はROIを確認するだけでなく、ビューアビリティに基づいた課金を望むようになった」(インテグラル・アド・サイエンス、以下、IAS)
このように、「見られること」の重要性が再認識される中、ビューアビリティ保証型で広告枠を取引する動画配信プラットフォームが注目され始めているのも自然な流れである。
「アドフラウド」(Ad fraud)とは
アドフラウドは広告詐欺とも呼ばれるもので、広告が“ボット”(ネット上の操作を自動で行うプログラム)によって閲覧・クリックされることを指す。つまり、ビューアビリティが確保されており実際に広告が視認可能な状態で表示されていても、それを見ているのが人ではない可能性があるのだ。
アドフラウドのボット技術は進化しており、ビューアビリティのほか、広告主の関心の高い指標である視聴完了、クリックなどユーザーの行動を模倣して、広告のエンゲージメント指標を操作できるほど洗練されている。
また、信頼できるメディアであっても、多段階に連鎖したアドネットワークなどが原因で、メディア自身が預かり知らぬところでボットが混じり込むリスクがある。
というのも、CPCやCPAを追求する広告主が大量のメディア広告枠をできるだけ安いコストで獲得するよう、エージェンシーにプレッシャーをかけ続けた結果、メディアは広告枠の価値を高めるために、第三者のオーディエンス拡張プログラムを設定してより多くのトラフィックを獲得しクリック率を高い水準に保つインセンティブが働く。
皮肉なことに、その拡張した先の第三者パートナーネットワークに、収益を目的に不正を働くボットが潜んでいる可能性があるのだ。
このように、いくらアドフラウド業者が悪質だとはいえ、広告主自身にも反省すべき余地がある。なぜなら、ボットが生まれた背景には、広告主が大量のメディア広告枠をできるだけ安いコストで獲得するようエージェンシーにプレッシャーをかけ続けた事実があるからだ。費用対効果を追求する広告主の姿勢が、マネタイズを追求するメディアが不正に手を染めるように追い込んだともいえる。
