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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究

リアル店舗の商流が太いブランドも、SEMに取り組むべき理由

「検索広告」の捉え方

 「すべての情報のタッチポイント」にブランド情報を貼り付け続けることは広告主側が体力的に厳しい上に、フリークエンシーコントロールも難しく、費用対効果が悪くなります。

 しかし、「検索広告」においては、過去の検索データに基づいて必要なキーワードを見極めることで、適切な予算設計のもと、生活者に情報を届けることが可能だと考えています。

 現在、検索行動が頻繁になされる場は「検索エンジン」「ECサイト」「SNS」の3つが主要であり、AmazonのAMS(Amazon Marketing Service)といったECサイト内検索広告を筆頭に検索エンジン以外の検索広告の重要性は高まっています。

 ですが、そんな中でも、筆者は「検索エンジン」の重要性にスポットライトを当てたいと考えています。

 なぜなら、ECサイト内検索については過去のキーワードごとの検索量や周辺クエリなどの情報が十分ではなく、事前設計を詳細に落とし込むことができません。

 また、SNS検索はリアルタイム性やユーザーの生声が重要だとすると、製品情報を広告で届けるよりも、実直にコツコツとブランド公式アカウントから旬に合わせた情報を出し続けることの方が重要だと考えているからです。

店頭購買されるブランドがリスティング広告に期待していること

 自社ECを展開しているブランドや、予約・資料請求などオンライン上でのコンバージョンが明確に定義されているサイト事業者であれば、広告管理画面でCPC最適化やCV最適化で広告掲出する方が費用対効果は良いかもしれません。

 しかし、店頭購買されるブランドにおいては、ブランドが重要だと考えているコア・キーワード(≒ブランドのコアバリュー)に関わるキーワードを検索したユーザーが、ブランドから発信されている情報に触れることで、検索したキーワードとブランドとの結びつきを強化することが重要になります。

 たとえば、「キュレル」という乾燥肌や敏感肌にフォーカスした商品であれば、「乾燥肌」や「敏感肌」あるいは、それらに関連しそうな「肌荒れ」などで検索したユーザーのSERP(Search Engine Result Pages、検索結果画面)の一番上にキュレルが表示され続けることで、「キュレルは敏感肌(乾燥肌)の人向けのブランド」というイメージが生活者へ蓄積されていくと考えられます。

 もちろん、理想はただSERPの最上位に広告が表示されるだけでなく、しっかりとクリックされブランドの発信する情報がお客様に届くことですが、検索はお客様が「能動的に情報を知りたい」時に発生することを考えると、SERPの最上位インプレッションを取り続けることの価値はあると考えられます。

 この主張を支えてくれるのが、2017年の1月にハーバード・ビジネスレビューにて掲載されていた "Customer Loyalty Is Overrated"という記事です。この記事は、"Cumulative Advantage"という表現で生活者の中での「ブランドの蓄積」の重要性を説いています。

出典:A.G. Lafley and Roger L. Martin (2017). Customer Loyalty Is Overrated: Harvard Business Review.

 誤解のないようにお伝えすると、"Customer Loyalty Is Overrated"は検索について語られている記事ではなく、行動経済学的アプローチから、「ブランドを選ぶ」という体験を重ねることで、消費者が無意識に(自動的に)特定のブランドを選択するようになるまでブランドとの体験の刷り込みが重要であると説いている記事です。

 したがって、詳細は検索の重要性とは全くことなるものの、検索結果にブランドが出ることでお客様の選択肢にのり続けるという意味で、通ずる部分があると考えています。

「KPIは?効果検証できるの?」という疑問

 上述の話をすると、必ずこの問いかけを頂きます。

 確かに、検索連動広告のインプレッションが購買行動に及ぼす影響を数値的に検証することは難しく、実行までは落とせていません。

 現状はブランドが重要視しているキーワードのインプレッションシェアと掲載順位をKPIとしています。

 しかし、先述したように「ブランドイメージの蓄積」が重要な指標だとすると、今後は広告インプレッションによるブランドリフト効果(純粋想起やブランド認知)といった中間指標の取得をする必要があります。

 中間指標がある程度規定できてくると、アトリビューション分析も併せて実行することで、検索が生活者に及ぼす影響はより一層可視化できると考えられます。

 ただし、筆者はこういった分析や効果検証の結果は、あくまで社内の意思決定機関(ブランド担当者間)における「確からしさ」という合意形成ツールだと捉えています。

 分析を何もせずにすべてを担当者の勘に任せるよりは、上記のような分析や検証を行うことでその勘を確からしいものへ変換し共通言語化した方が良いですが、KPIや効果検証の結果の解釈については、各社で納得できる閾値が異なります。

 したがって、広告に対してシビアにP/Lを追求されている場合は、上記のような考え方での広告投資判断は難しいかもしれませんが、店頭購買されるブランドにとって重要なことは、コアバリューとブランドの結びつき、そしてその蓄積だと筆者は考えています。

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広告の仕組みの急速な進化

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この記事の著者

廣澤 祐(ひろさわ ゆう)

花王株式会社 DX戦略部門

2015年に花王株式会社へ入社し、デジタルマーケティングを経験したのち化粧品ブランドのマーケティングに従事。2021年からDX担当部門としてデジタル活用の推進に従事。2020年より公益社団法人日本アドバタイザーズ協会デジタルマーケティング研究機構 U35プロジェクト幹事を務め...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/03/06 08:00 https://markezine.jp/article/detail/27794

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