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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

定期誌『MarkeZine』特集

定額制サービス成長の鍵は “パーソナライゼーション”

特定のファンを抽出し+αの企画を提供

――では、有料会員の継続促進や、他のサービスへの乗り換えを防ぐ工夫などは?

 Spotifyは有料会員の継続率が90%以上と高く、退会がほとんど起きていないんです。有料会員になる方のほとんどは無料プランを試しているので、サービスの理解とともに無料プランで自分が物足りない点、歯がゆい点も認識して移行しているからだと思います。

 また、前述のような有料プランの特徴に加えて、アーティストのトップリスナーである熱心なファンに特別な体験を提供するプログラムなども用意しています。たとえばそのアーティストの特別なイベントへのご招待や、関連商品の先行販売のような特典を提供しています。こうしたアーティストとのエンゲージメント機会が得られることも、Spotifyユーザーで居続けるモチベーションになっていると思います。

――ちょうど1周年を過ぎたところですが、マーケティング施策の変化はありますか?

 ローンチから1年で熱心な音楽ファンを中心にユーザー基盤が固まってきましたので、昨年10月からは、より多くの方に知っていただくため、王道の大々的なマーケティングプロモーションをスタートしました。日本を代表するアーティストであるDREAMS COMETRUEのニューアルバム発売に合わせてタイアップして、テレビCMに楽曲を使用させていただいたほか、各界の著名人に“私のドリカムプレイリスト”を選曲してもらって公開しています。世代を超えて愛されるドリカムの名曲群を、こうしたプレイリストを通じて改めて発見・再発見していただけたらと思っています。

 また、12月下旬より、新進気鋭の女性ラッパーとして注目されるあっこゴリラさんの曲を使用した第二弾CMも投入し、エントリーユーザーも大きく伸びました。

再生回数を伸ばしてアーティストを支援する

――先ほど日米の音楽市場の違いなどをうかがいましたが、そもそも国によってストリーミングサービスの浸透や成熟の仕方はかなり異なるのでしょうか?

 ええ、そうなんです。同じアジアでも本当にそれぞれ違います。たとえば2016年に日本よりも先にサービスを開始したインドネシアでは、若者の人口も多く、一気にストリーミングの視聴が広がりました。また、「再生すればするほどアーティストに還元される」という理解も広がっています。なので、たとえば日本でも人気がある韓国の男性アイドルグループ・BTS(防弾少年団)が新曲をリリースすると、ファンがSpotifyでも他のストリーミングサービスでも、その曲をとにかく聴くんですね。そうすればアーティストに還元されるのはもちろん、そのムーブメントに私たちのキュレーターが目を留めて他国に紹介したり、人気のプレイリストに積極的に取り上げたりして広がることがわかっているんです。

――なるほど、日本でそこまで習熟するにはもう少しかかりそうですが、サービスの理解と浸透にともなって、ファンをはじめユーザーの行動も大きく変わるわけですね。最後に、定額制サービスのビジネスモデルを成長させるために大切なことをうかがえますか?

 まず、利便性が高いことは前提条件だと思います。毎回買わなくていい、自分から動く手間が省ける点は、定額制サービスの大きな特徴です。

 加えて、パーソナライゼーションがとても大事だと実感しています。ECサイトなどでも同様ですが、レコメンドが自分の考えに沿っていると、そのサイトの使用頻度が高くなりますよね。Spotifyだと、聴けば聴くほどAIが音楽の好みを理解して、好みに合致している“まだ聴いたことのない曲”を提案する精度が上がるので、その満足度はユーザーを引きつける大きな要因です。私たちのパーソナライゼーションにかける意気込みはとても強く、それを通してアーティストと音楽ファンをつなぎ、その関係性を深めることで、ユーザーに欠かせないサービスになれると確信しています。

 同時に、ユーザーの自由度も大きいですね。海外では音楽ファンは皆それぞれプレイリストを作成し音楽を楽しんでいますし、日々の生活や人生の特別な瞬間を彩るオリジナルのプレイリストはいわば記念写真のようなものになっています。私も2009年から使う中で、友人のウェディングパーティーのときに作ったプレイリスト、父親の60歳のバースデーに作ったプレイリストと、思い出に残るリストがたくさんあります。今、サービスを解約したらこれらは消えてしまうので、それは絶対にできません。そうしたユーザーの自由な関与を支援していく仕組みも、定額制サービスの満足度を高めると思います。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

市川 明徳(編集部)(イチカワ アキノリ)

MarkeZine編集部 副編集長
大学卒業後、編集プロダクションに入社。漫画を活用した広告・書籍のクリエイティブ統括、シナリオライティングにあたり、漫画技術書のベスト&ロングセラーを多数手がける。2015年、翔泳社に入社。MarkeZine編集部に所属。漫画記事や独自取材記事など幅広いアウトプットを行っている。
...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/26 17:39 https://markezine.jp/article/detail/27910

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