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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

定期誌『MarkeZine』特集

人は応援したいものにお金を払う “応援経済”の時代を味方につけたファクトリエの挑戦

応援したい意図でお金を払う時代が追い風に

――「何が伝わるべきか」の主題は、やはり理念なのでしょうか?

 そうですね、僕らの存在意義は、工場がもの作りを担ってくれている分、その思いも含めて顧客と深くコミュニケーションすることです。興味を持ってくれた方、いいものを長く使いたいと思う方に、ファクトリエの商品は価格以上の価値があるとわかってもらえるコミュニケーションをどう取るかという点にはすごく注力しています。結果的に、イベントやSNSの充実があるのかもしれません。

 他にも、前述の「モノづくりカレッジ」の企業版として、日本のモノづくり文化を企業の皆さんに知っていただく講演会を毎晩のように行ったり、僕らと同じ価値観を持つ企業とコラボした商品開発をしたりと、挙げてみると確かに活動の幅は広いですね。

 ただ、理念が伝わることは大事ですが、もちろんその手前にあるのは商品に対する満足感です。いくら健康になるからといっても、まずい食品を食べ続けるのは苦痛ですよね。僕らの商品も、着ることでかっこよく見える、素敵になれるのは大前提です。どんな服を選ぶのも人の自由ですが、それぞれが人生を歩む上で、週に1日でも2日でもテンションの上がる服を着るほうが人間らしいなと思うんですよね。だから、デザインにも非常にこだわっています。

 その上で、僕らの商品を買ったりイベントに来てもらったりして仲間になることが、日本のもの作り文化を支え、ひいてはよりよい社会を作ることにつながると感じてもらえたらと思っているんです。

 クラウドファンディングしかり、ふるさと納税しかり、今は“応援経済”の時代です。普通の消費でも、人が何かにお金を使うというのは支持を表すことですが、この傾向がすごく強くなっている。これは、僕らの成長には追い風でした。

周囲に流されずリズムを保てる企業が残る

――山田さんの意志が、台風の目のように熱狂の渦の起点になっていることがよくわかりました。自分の中から、やるべきだと考えて始めた施策が、結果的にマーケティングのトレンドと重なる点も非常に興味深いです。何か、そのあたりを客観的に捉えてお感じになることなどありますか?

 どうなんでしょう、でも今の“自分の中から”というのは、大事な気がします。人が生きていく上で重要な要素として、僕は感度と行動力があると思っているんですね。行動のほうが目に見えやすいですが、実は感度のほうがずっと重要で。感度が高くなければ、いくら行動力があっても「他社がやっているからすぐやろう」といった少しずれた方向で動いてしまうと思うんです。

 感度を高く保つのに、座禅を組んで瞑想するみたいな極端な方法もありますが、僕が意識しているのは“動的瞑想”です。動きながら、自分で決めたルーティンをこなしながら、気持ちを鎮めていく。よく、武道で強い人が朝早く道場に来てぞうきん掛けをしているといったエピソードも聞きますが、僕も出張などで毎日のルーティンが崩れると調子が悪いんです。

 今、本当に毎日膨大な情報が入ってきますよね。それを正しく捉えて取捨選択するにも、自分の状態を一定にコントロールすることがすごく大事だと思います。それができていれば、たとえば「ライブコマースが流行っている」と知れば、なぜかというとインタラクティブなものを皆が求めているから、それはスマホが常に手の中にあって親しいもので、すぐに反応がくるのに慣れているから、だからすぐ反応が得られるライブコマースなんだ、と自分で因数分解して考えていける。だから仮説が立てられるし、失敗しても検証できる。マーケティングの情報も含めて、あまりに目まぐるしい時代だからこそ、心を一定に保てる人やリズムが狂わない会社が残るんじゃないかと思います。

――最後に、今後の展望をうかがえますか?

 僕が自分の考えに迷いなく進んできたのは事実ですが、今これだけ支持いただいているのは自分の功績でもなんでもなく、ただ“天のとき”だったのだと思っています。工場が衰退していたから僕の話も聞いてもらえたし、ECやスマホの普及や、SNSで口コミが伸びたのも僕の働きじゃない。このタイミングにたまたま僕という人間が掛け算されて、今の事業があります。それでも、創業時に描いていたより今の進みはずっと遅いんですが……。

 僕らを応援したいと思う人が増える分だけ、日本のもの作り文化が残り、社会がよくなっていく。ひいては、その原動力として、社員一人ひとりが世の中に感謝されるようにしていきたいです。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/25 18:02 https://markezine.jp/article/detail/28069

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