買物価値とオムニチャネルの関係
これら3つの買物価値が、店舗での買物、ネットでの買物、そしてモバイル活用しての買物でより多く満たされているとOmni-Channel Shopping Valueが高いと言えるのです。図3のモデルをご覧ください。

そしてこの研究で興味深いのは、お客様に対して「Omni-Channel Intensity」、つまり「オムニチャネル度(オムニチャネルの完成度合い)」を聞いていることです。この要素が買物価値に対する媒介変数として存在します。簡単に言いますと、企業が提供するオムニチャネル戦略の完成度が間接的にお客様の買物価値に影響をしているということです。
この研究では3つある買物価値のうち、モバイルによる買物価値はオムニチャネル化による買物価値に影響を与えないとの結果が出ています。
これはおそらくモバイルにおける買物価値は、モバイルにお客様との有効なタッチポイントとして明確な機能を与え、ネットストアにおける買物価値と差別化しないと、モバイルによる買物価値をネットストアにおける買物価値と混同して理解してしまうからではないかと思います。
つまり、買物体験におけるモバイルの役割を明確にしておかないと、お客様はモバイルでの買物機能を使わないし、使ったとしても価値を感じないということでしょう。
またオムニチャネル度に関してもおもしろい示唆が出ています。多くのオムニチャネルの定義では、「買物体験においてネットとリアルをスムースに行き来することができること」とあります。これをオムニチャネルの特徴のひとつとして買物の「シームレス」化と説明しますが、この研究ではシームレスという要素はお客様にとって全く意味をなさず、「知覚された一貫性」の方がオムニチャネル度に影響を与えていることがわかりました。
これは私もよく提唱しているのですが、お客様のカスタマージャーニーがいくらオムニチャネル化しても、1回ごとの買物は、ある時は店舗、またある時はネットとなります。同時に複数の場所で商品を買うことはできないのです。
つまり、お客様はどのチャネルで買っても良いが、たとえば、「返品はネットで買っても店舗で可能」、「ネットで店舗在庫がわかる」、「ネットも店舗も同じ価格、プロモーションで販売している」、「決済方法が豊富」、「商品クレームはネットでも店舗でも受付」といったことを気にしているのです。
ネットでもリアルでも買えるが、サービスに差がない、どちらでも安心して買える、企業とつながれるということを理解(知覚)していることがなによりも重要なのです。まさにオムニチャネルとはそのようにお客様の個別のニーズを取りこぼさないように企業とのタッチポイントを配置することなのです。
シームレスであるかどうかは、あくまで企業側がお客様のカスタマージャーニーをレビューする際に重要なポイントなのです。つまり、お客様に「弊社の体験はシームレスですか?」などと聞くことに意味はないし、マーケティングメッセージにはならないと理解すべきでしょう。