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MarkeZine Day 2025 Retail

世界のマーケティング学者から学ぶ「勝てる」マーケティング思考

なぜ、オムニチャネルの前に、買物価値なのか 「買物の快楽性」を問い続けよう

買物価値とオムニチャネルの関係

 これら3つの買物価値が、店舗での買物、ネットでの買物、そしてモバイル活用しての買物でより多く満たされているとOmni-Channel Shopping Valueが高いと言えるのです。図3のモデルをご覧ください。

図3 ヒューレ先生等が構築したOmni-Channel Shopping Valueの測定モデル
図3 ヒューレ先生等が構築したOmni-Channel Shopping Valueの測定モデル

 そしてこの研究で興味深いのは、お客様に対して「Omni-Channel Intensity」、つまり「オムニチャネル度(オムニチャネルの完成度合い)」を聞いていることです。この要素が買物価値に対する媒介変数として存在します。簡単に言いますと、企業が提供するオムニチャネル戦略の完成度が間接的にお客様の買物価値に影響をしているということです。

  この研究では3つある買物価値のうち、モバイルによる買物価値はオムニチャネル化による買物価値に影響を与えないとの結果が出ています。

 これはおそらくモバイルにおける買物価値は、モバイルにお客様との有効なタッチポイントとして明確な機能を与え、ネットストアにおける買物価値と差別化しないと、モバイルによる買物価値をネットストアにおける買物価値と混同して理解してしまうからではないかと思います。

 つまり、買物体験におけるモバイルの役割を明確にしておかないと、お客様はモバイルでの買物機能を使わないし、使ったとしても価値を感じないということでしょう。

  またオムニチャネル度に関してもおもしろい示唆が出ています。多くのオムニチャネルの定義では、「買物体験においてネットとリアルをスムースに行き来することができること」とあります。これをオムニチャネルの特徴のひとつとして買物の「シームレス」化と説明しますが、この研究ではシームレスという要素はお客様にとって全く意味をなさず、「知覚された一貫性」の方がオムニチャネル度に影響を与えていることがわかりました。

  これは私もよく提唱しているのですが、お客様のカスタマージャーニーがいくらオムニチャネル化しても、1回ごとの買物は、ある時は店舗、またある時はネットとなります。同時に複数の場所で商品を買うことはできないのです。

 つまり、お客様はどのチャネルで買っても良いが、たとえば、「返品はネットで買っても店舗で可能」、「ネットで店舗在庫がわかる」、「ネットも店舗も同じ価格、プロモーションで販売している」、「決済方法が豊富」、「商品クレームはネットでも店舗でも受付」といったことを気にしているのです。

 ネットでもリアルでも買えるが、サービスに差がない、どちらでも安心して買える、企業とつながれるということを理解(知覚)していることがなによりも重要なのです。まさにオムニチャネルとはそのようにお客様の個別のニーズを取りこぼさないように企業とのタッチポイントを配置することなのです。

  シームレスであるかどうかは、あくまで企業側がお客様のカスタマージャーニーをレビューする際に重要なポイントなのです。つまり、お客様に「弊社の体験はシームレスですか?」などと聞くことに意味はないし、マーケティングメッセージにはならないと理解すべきでしょう。

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オムニチャネル化による「買物価値」の変化

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この記事の著者

奥谷 孝司(オクタニ タカシ)

オイシックス・ラ・大地株式会社 専門役員COCO(Chief Omni-Channel Officer)
株式会社顧客時間 共同CEO 取締役
株式会社イー・ロジット 社外取締役
株式会社Engagement Commerce Lab. 代表取締役

1997年良品計画入社。3年の店舗経験の後、取引先の商社に出向しドイツ駐在。家具、雑貨関連の商品開発や貿易業務に従事。帰国後、海外のプロダクトデザイナーとのコラボレーションを手掛ける「Worl...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/03/22 08:00 https://markezine.jp/article/detail/28087

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