ネットが生活者主導の時代を切り拓いた
押久保:MarkeZineでは2006年の立ち上げから現在まで、デジタルマーケティングの発展を追ってきましたが、最近ようやくデータドリブンやユーザーファーストの考え方が浸透して実践フェーズに入った感があります。ところが、吉松さんはそれらに早くも1999年に着目して口コミサイト「@cosme」を開設し、その慧眼で事業を伸ばし続けていらっしゃいます。特に、最近の成長は著しいですね。
吉松:直近で2月に第2四半期決算発表をしましたが、売上と営業利益ともに前年同期比165%の伸びとなりました。おかげさまで、アイスタイル創業以来の連続増収を達成しています。
押久保:御社では、創業時から「生活者中心の市場創造」をビジョンに掲げられています。ただ、@cosmeの構想ありきの創業ではなかったんですよね?
吉松:ええ。元々は、メーカーが持っていない横断的な購買データを取れないかという発想があり、そこから、商品を買って使った人が書き込む口コミをユーザー間で役立ててもらいながら、疑似顧客データとして収集する化粧品口コミサイトを考案しました。
押久保:そもそも、生活者中心の発想やデータドリブンな観点はどこから生まれたのでしょうか?
吉松:大きくいうと、ネットが「情報を皆で流通する時代」を連れてきたと捉えています。今ちょうど、ビットコインやブロックチェーンによって、通貨がディセントリック(脱・中央集権)する時代に突入していますよね。これが20年前と重なって、すごく既視感があるんです。
ネット以前、ブロードキャストは紙媒体や放送権を有するマスメディアの特権であり、メーカーが情報発信を主導していました。それが90年代後半にネットが普及して、個人にパワーが移り、一方通行だった情報の非対称性が崩れた。その時点で、これからは生活者が情報発信を主導する時代になるし、そこでやり取りされるデータが大きな価値を持つはずだと強く感じました。
GoogleとAmazonを皆が認めた瞬間
押久保:そこから20年の間に、ネット広告をはじめとしてデジタル市場はどんどん拡大しています。吉松さんから見て、潮目が変わったと感じたポイントはどこでしょうか?
吉松:ピンポイントに示すのは難しいですが、GoogleやAmazonが評価されるようになったことが大きいと思っています。
押久保:その存在が認められた、といった意味ですか?
吉松:そうですね。Googleは最初こそ検索エンジンとして認識されましたが、Google EeathやYouTubeなど検索以外のサービスが広がるうちに、「彼らが持っているのはポータルのようなメディアではなく、その先のデータなんだ」と皆が理解し始めたタイミングがあったと思います。その瞬間が、僕にはすごくゲームチェンジが起きた感がありました。
同様にAmazonも、早くからデータに注目していました。でもしばらくはECプラットフォームとして捉えられていて、Amazonはデータでビジネスをしている・していくのだと皆が感じ始めたのはかなり後ですよね。Amazon GOにしても、表面的には店頭のスマート化といった観点で語られがちですが、それはちょっと本質がずれていると思う。Amazonは持てる情報を総動員して売り場を作り、“How to Sell”ではなく“What to Sell”を突き詰めていくと思います。