施策の軸は「ママリ体験を拡げること」

今回、施策全体を企画・実行した同社 企画部の増田早希氏は、施策の具体的なプランニングに当たって、「軸」作りを意識したという。
「テレビCM放映は昨年末に決まりましたが、単に放映するだけでなく、ゴールに向かって相乗効果を上げるため、いろいろな施策を複合して実施することになりました。ただ戦略の軸がないと、具体的に何をすれば良いか決められませんし、施策でズレが生じる可能性もあります。そこで今回は、『ママリ体験を拡げる』という軸を作り、この軸に沿って施策の実施を決めました」(増田氏)

テレビCMでママリというアプリを訴求し、その体験をInstagramを使って収集・拡散する。そして、ママリ体験を拡げるため、母親の一般的な生活動線を洗い出し、その動線に沿ってママリ体験を訴求することにした。一例を挙げると、「自宅」や「病院」でママリのテレビCMを視聴してもらうほか、ママリの紹介チラシをポスティングし、動画と紙媒体の2軸でアプローチした。また幼稚園や保育園も動線の重要なフックと捉え、チラシを配布。これと同時に、ママリのリアル体験とInstagramを絡めたキャンペーンもいくつか実施した。
そのひとつが「ママリ漫画大賞」だ。これは、ママリを使った体験エピソードを漫画化し、Instagramでハッシュタグを付けて応募するというものだ。「もともとInstagram上では育児漫画が人気コンテンツ。漫画というだけで関心を呼びますし、漫画好きな母親なら好んでママリの体験談を読んでくれます。応募作品の中から受賞作を決定し、作品を転載したチラシも配布してプロモーションに活用しました」と増田氏は話す。なお、受賞作家13名の作品は、6月2日(土)より川崎のショッピングモール「ラ チッタデッラ」で公開する予定だという。

『コウノドリ』22巻など出産・育児をテーマとした作品に挿入した。
もうひとつは、ママリを使った体験談とあわせてハッシュタグを付けてInstagramに投稿する漫画家以外の一般ユーザー向けのキャンペーンだ。増田氏によると、Instagram上ではかねてより「#ママリ」というハッシュタグを付けて子どもの写真をアップするユーザーが多いという。ママリの公式Instagramアカウントが「#ママリ」がついている写真を許可をとった上で投稿・拡散したり、ママリ主催のリアルイベントで写真が掲出されることがあるからだ。
通常、マス広告やリアル施策と、デジタル施策を組み合わせる場合、「マスで幅広くアプローチし、デジタルでターゲティングして施策を補完する」というスタンスになることが多い。だが今回の場合、「ママリはネットリテラシーの高い人だけが対象ではないので、『ママリをダウンロードしたら、こういう体験が得られる』という体験談をデジタルで収集・拡散し、各生活動線のポイントで打ち出していく、そして集まった体験談のコンテンツを次のリアル施策につなげるというサイクルを作りました」(増田氏)という。
インスタのハッシュタグに見る「ママリ」の浸透度
リアル施策はデジタルと異なり、トラッキングもできなければ、オーディエンスのセグメントを切ることもできない。大湯氏はこの点について、「近しいサービス同士で、デジタルでパイを取り合っていても限界があるのは事実です。むしろ効率性に囚われず、他社がやらないリアル施策で爆発的にシェアを取っていく戦略です」と説明する。
ただし、リアル施策で体験したことや見たものは、デジタルで拡散されやすい。たとえば、ママリ主催のリアルイベントで自分の子供の写真が選ばれた場合、イベントに家族そろって来場し、その体験をさらに拡散することも多い。過去のイベントでは、子どもの写真が掲出された29組中9組が来場し、Instagramに再投稿した。実際、Instagramの赤ちゃん写真や子どもの写真では、「#ママリ」というハッシュタグを付けることが当たり前になっている。
ちなみにハッシュタグでいえば、「いま、『#ママ』というハッシュタグより、『#ママリ』というタグを付けてお子さんの写真を拡散する件数が増えています。それは必ずしもママリのアプリユーザーや、ママリに取り上げられたいというモチベーションがある方だけではなく、ほかのInstagramユーザーが自分の子どもの写真に『#ママリ』と付けているのを見て、”子どもの写真には『#ママリ』と付けるのが当たり前”と思って付ける方もいます」と増田氏は語る。
2018年5月現在、「#ママリ」投稿数と「#ママ」投稿数を比べると、ママリの方は200万件以上も多い。たとえママリを知らなくても、子どもの写真に「#ママリ」というハッシュタグを付けることを当然とする層が出てくる。大湯氏は「ママリが、子育てのインフラとなってきていることの表れかもしれません。期待しています」と述べる。