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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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マーケティングを経営ごとに 識者のInsight

消費者・顧客を最もよく知る企業に ビジョン実現への花王の実践

重要なのは顧客理解の先にある仮説と提案

――鈴木さんは、その4つの側面を持つデジタルを活用することで、マーケティングはどのように変化すると考えていますか?

鈴木:これまでよりもお客様理解が進み、より速く正確に一人ひとりを理解できるようになると思います。ということは、そのお客様により適切な提案が、すなわち必要とされているコンテンツを迅速に届けることができるようになりますよね。これがデジタルの強みではないでしょうか。

――マスの最大公約数ではなく、一人ひとりの顧客を理解し、迅速な提案につなげていくわけですね。そうすると、やはり顧客理解にはデータの活用が欠かせないですね。

鈴木:データ分析のメンバーがいつも例えとして出す写真があります。福田重雄さんという方の作品なんですが、848本のフォークやナイフを溶接したものを、ある光源から映し出すとバイクの形の影絵になるんです。そのメンバーは、データ一つひとつはフォークやナイフと同じで、光源つまり分析の視点が大事だということを、この写真を使って説明します。どう見るかでお客様理解が違ってくるということです。

 「こんなお客様だな」ということがわかったら、次は「ブランドとして、どのような提案をするか」が重要になると思うんです。ここでポイントになるのが、お客様像から導かれるインサイトや仮説です。そして、その仮説に基づいて、お客様への提案=コンテンツを作る。だから、仮説と提案は常にペアで考える必要がありますが、「そうそう、そういうの欲しかったんだよ、今。気が利くね」というアイデアとタイミングでないと、気持ちよくは受け取ってもらえない。ここが難しいところです。

 デジタルの最大のメリットは、この仮説・提案から検証に至るPDCAを回せること。マスコミュニケーションは最大公約数の価値ですし、修正しながら施策を実施するにはコストも時間もかかりすぎます。

 もちろん、デジタル活用は口で言うほど簡単ではなく、弊社内でもデータから何を見出すかで苦労しているブランドもありますし、提案に苦慮しているブランドもあります。ですが、トライアル&エラーで顧客理解が進んで、提案をブラッシュアップできるのは、やはりデジタルならではの良さだと思います。

――逆に言えば、そのトライアル&エラーの検証がとても煩雑で面倒という見方もありますね。

鈴木:おっしゃるとおり、面倒です。現在は手間がかかります。ただ個人的に、昔からお客様の反応を直接見て考えることが楽しくって、大好きなんですよ。入社した当時から、ターゲットを集めたグループインタビューによく参加していました。お客様の反応と話している内容をずっと見聞きしていると、表情からその人の本音が見えますし、「こんな意見もあるんだ」と驚くような発見もあって、まったく苦にならなかったんですよ。

価値を伝えるために最適な手段は何か

――冒頭の話に戻りますが、マーケティングの本質はやはり「顧客を知る」ことで、デジタルはそれをより速く、良い提案につなげられるということですね。

鈴木:そうですね。マーケティングが本来目指すところを、デジタルの活用で実現できるようになったのだと思います。これからはデジタルに関する深くて細かい知識を持っているかどうかよりも、マーケティングの本質をしっかり理解して実践していくことが大事だと思います。

 ただ、そうは言っても、デジタルの知識が皆無だと、そもそもお客様が親しんでいるメディアやツールの理解もできないし、施策立案まで落とし込めません。私の部署でも、お客様理解と提案のために必要な手段=デジタルというスタンスで、デジタルの基本的な知見や理解を深めてもらおうと働きかけています。将来は、「デジタル」が付かなくても、デジタルを活用したマーケティングができていること、が目標ですね。

――今後、取り組みたいことを教えてください。

鈴木:究極的には、「お客様とどのようにコミュニケーションを取って価値を伝えるか」になると思うので、すべての接点がデジタルでなくていいと考えています。たとえば化粧品の場合、柔らかな指でタッチアップしてもらったほうが、なんとなく気分がいい、とかありますよね。一人のお客様の生活のいろいろな場面で、お客様が我々に望むことを本当に理解して、最適な提案に結び付けていきたいと思っています。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

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MarkeZine(マーケジン)
2021/02/26 17:59 https://markezine.jp/article/detail/28412

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