大手プラットフォーマーの活用が重要
ここまで紹介してきた「ローカライズ」「パブリッシング」に関するポイントを踏まえ、次に解説したのが「マーケティング」についてだ。
「Baidu、Alibaba、Tencentの頭文字を取った『BAT』と呼ばれる中国有数のプラットフォーマーを押さえたマーケティングが必要です。中国では、モバイル端末からのネットユーザーによる使用時間の約7割がBATのサービスとなっています。
また、プログラマティック広告の約9割がこの3社のサービス上で行われています。つまり、BATの提供するサービス上でアプリの認知、インストールを獲得していくことが、非常に重要になります」(井料氏)
また、劉氏によれば、Tencentの提供するメッセージングアプリ「WeChat」と「QQ」はHTML5のゲームをアプリ内で提供しており、カジュアルゲームをHTML5化した後、両アプリのプラットフォームに展開することも検討すべきだという。
「WeChatは月間アクティブユーザーが10億人を超えるアプリで、その中でゲームプロモーションに活用するのはもちろん、アプリ内でHTML5ゲームを展開することができます。HTML5ゲームで課金してもらうことができ、月間の課金収益が50万人民元(約837万円)以下の場合はその収益のすべてがデベロッパー側に支払われます。50万人民元を超える場合は、超えた部分の40%の収益をテンセント側が得る仕組みとなっています。
またバナー広告と動画広告をゲーム内に掲載し広告マネタイズを行うこともできます。これだけ膨大なアクティブユーザーが集まる中でゲームがヒットすると、得られる利益はとても大きいと思います」(劉氏)
日本語なのに大ヒットした事例も
ここまでで、ポイントを押さえて進出すれば、非常に大きなリターンが得られる可能性のある市場であることはわかった。しかし、日本企業のゲームは中国に本当に受け入れられるのだろうか。
「現在中国では、アクションやアドベンチャー、RPGといったものよりも手軽に楽しめるカジュアルゲームに人気があります。日本は携帯電話が主流だった時代からシンプルかつ短時間に遊べるゲームを多く開発し、ヒットさせてきた実績がありますから、参入のハードルはそれほど高くないと思います」(劉氏)
実際に、中国上でヒットした日本のゲームアプリもある。それは、京都のベンチャー企業であるヒットポイントが開発した『旅かえる』だ。同アプリは2017年12月にiOS版をリリース後、中国語に対応していないにもかかわらず約5ヵ月で累計約3,800万ダウンロードを記録。その内の8割弱が中国からのダウンロードだったという。
「『旅かえる』が中国で異例の大ヒットを記録した要因を推測すると、放置しておくだけでゲームが進行できるシンプルさと、いかにも日本らしい絵柄と雰囲気にあると思っています。この2つを評価するSNS上での投稿は多く見られます。このようにSNS上で拡散されていくと、中国の場合日本以上にものすごいスピードで拡散していくので、SNS上での話題創出も効果的です」(井料氏)
日本語のままでのヒットは異例のことかもしれないが、『旅かえる』の例からは日本のゲームが中国で受け入れられる可能性が十分にあることが示されている。インタビューの最後、井料氏に今後日本のアプリパブリッシャーに対しどのように支援をしていきたいか聞いた。
「変化と革新のスピードが桁違いに速いのが現在の中国市場です。私たちは中国発のアドテクノロジー企業として、ゲーム領域はもちろん、中国の最新動向に関して毎日ウォッチしています。また、ローカライズから、パブリッシング、マーケティングまでトータルプロデュースできる体制を持つ数少ない企業ですので、中国進出を目指す際はぜひ相談いただければと思います」(井料氏)
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