※本記事は、2018年9月25日刊行の定期誌『MarkeZine』33号に掲載したものです。
若年層向け商材の企業に広がる危機感
公益社団法人日本アドバタイザーズ協会 専務理事 鈴木信二(すずき・しんじ)氏
1956年生まれ。1979年一橋大学経済学部卒業後、味の素へ入社。執行役員健康ケア事業本部長、同ウェルネス部長など、健康関連事業の立ち上げを経て、2016年より現職。日本健康栄養食品協会副理事長も務める。
――鈴木さんは、2016年に日本アドバタイザーズ協会(以下、JAA)に来られたと聞いています。これまでのご経歴を簡単にうかがえますか?
新卒で味の素に入社して、30代前半のころから家庭用製品の事業部門で4マスを中心としたマーケティング・コミュニケーションに携わってきました。2005年にアミノ酸を利用したサプリメントの通販を立ち上げ、その後健康ケア事業本部長としてスポーツ系の商品や医療用商品のマーケティングを担当しました。ちょうどデジタル広告が通販事業から使われ始め、大きく変化していった時期でしたし、その後にはプログラマティック広告にも実務で触れたことは私にとって幸いでした。
ただ、今まで宣伝部や広告部に在籍していたことはないので、JAAは身近ではありませんでした。2016年、味の素の代表取締役会長だった伊藤雅俊がJAAの理事長に就任することになり、私にも声をかけてもらったため、同年2月に参画した次第です。
会員社の窓口である宣伝担当役員や宣伝部長クラスは50代前後が中心で、率直に申し上げてデジタルに明るくはありません。また残念ながら、広告の信頼性は広告会社が担保する、メディアの信頼性はメディアが考えることだろうという風潮がまだまだ大きい。
この意識改革なども含めて、2016年にデジタルメディア委員会を組織しました。デジタル広告をもっと活用・普及させることを推進する目的でしたが、直後にWFA(世界広告主連盟)が米国でのデジタル広告に関する調査を実施しアドフラウドの蔓延に対する警鐘を発表したこと、動画サイトで反社会勢力への広告費が流れていることなどの事件が起こり、我々のほうでもデジタル広告の信頼性といったイシューも検討していく流れになりました。
――デジタル広告に明るくない、というご指摘がありましたが、会員社ではそもそもデジタル広告の活用をどの程度重視しているのでしょうか? 有効な活用が急務だといった危機感はありますか?
業種によって差はありますが、危機感が強いのは、やはり若年層向けの消費財やサービスを提供する企業ですね。会員社は、現在もマス広告を多く出稿する企業が中心なので、昨今の若年層のテレビ接触の減少は重大な事項です。飲料や化粧品、また将来的な顧客育成が必要な自動車などの業種で、特にデジタル広告を使いこなすことへの焦りがあります。
シニアや主婦向けの商材や、BtoBの場合はまだデジタル広告にそこまで予算を割いていないと思います。それらのターゲットにはマス広告で認知を得て店舗での購買につなげていますが、今の10代や20代が将来の顧客になるのでなんらかのメッセージを届けることが重要です。デジタル広告の重要性は増すでしょう。