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リゾームマーケティングの時代

土俵際の既存放送ビジネス、起死回生の鍵はテレビ同時配信/プログラマティックTV/マイデータにあり


既存のテレビ広告とも併用できるアイデア

 さて、広告主であるトヨタの視点に話を移そう。結果的には、投下した金額は3,600万円の広告費と3,000万円のマイデータ使用料の合計で6,600万円だ。ただ、これでも割りがいいのはわかるだろう。現状のテレビ広告では1億円で1万2,000台を売るのに対して、6,600万円で1万2,000台を売る訳だから。

 この「同時配信/プログラマティックTV/マイデータの三位一体」のビジネスモデルは、既存のテレビ広告のビジネスモデルと併用する想定だ。

 ブランディング目的でオールターゲットの全世代を狙いたい広告主は、これまでの既存の広告配信を使ってもいいし、コンバージョン目的の広告主なら新しいモデルを使えばいい。結果的に、ブランディング目的でもコンバージョン目的でも、GoogleやFacebookよりも競争優位性を維持できれば、テレビ局は安泰だ。

 このモデルの良いところは、ブランドセーフティ・アドフラウド・アドブロッキングにも対応していることだ。そもそも、テレビ局のコンテンツなのでブランドセーフティは問題ない。GoogleやFacebookは、自社でコンテンツを作っていないので、ブランド毀損するコンテンツをアドネットワークから完全に排除することが困難だ。なので、テレビ局に競争優位性がある。

 また、リーチ単位で課金されるモデルであれば、不正クリックは問題にならないし、かつ、マイデータで登録されているのでリーチする人が特定できる。変なアクセスをしてくる生活者にはマイデータ提供の対価、配分金をストップすればいい。アドブロッキングはナンセンスだ。なぜなら、広告接触でお金が貯まる訳だから。

 最も心配なのは、GoogleやFacebookなどもマイデータを使ったら同じではないか、という懸念である。これについては、次の機会に詳しく書きたいが、簡単にいえば日本でもEUと同じように、GDPR的な法律を作ることが対応策として挙げられる。

 他にも、プログラマティックTVで広告在庫をすべて売り切れるかという懸念や、肝心の個人情報をみんな共有してくれるのかという懸念なども想像できる。

 その一方で、暗号通貨やトークンエコノミー、そして、評価経済やシェアリングエコノミーの仕組みと連携することで、テレビ局の収益構造をより強固なものにすることもできるだろう。ついでに言えば、ラジオ・新聞・雑誌にも、同様に、マイデータを使って新しいビジネスモデルを作ることができると考えている。

 さて、その辺の話は、次回以降の連載に譲るが、やはり、重要になるのは、情報ビジネスや広告ビジネスがリゾーム化社会の中でどのように変化していくのか、その特徴を見極める洞察力だろう。

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この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/10/17 13:49 https://markezine.jp/article/detail/29377

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