SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

直近開催のイベントはこちら!

MarkeZine Day 2025 Retail

リゾームマーケティングの時代

土俵際の既存放送ビジネス、起死回生の鍵はテレビ同時配信/プログラマティックTV/マイデータにあり


プログラマティックTVという光明

 資生堂でメディア統括部長を務める小出誠氏は、「プログラマティックTVが現実に テレビ広告の進化と未来」の取材の際に、プログラマティックTVへの期待を口にした。たとえば、以下のような発言だ。

「視聴率15%前後をとっているバラエティやドラマなどは、大体オールターゲットで全年代と男女が均等に含まれると明確にわかってきました。20代女性が総視聴者に占める割合は約10%なので、ターゲット視聴率は1.5%になります。<中略> 理想はターゲットのみに配信したいですが、画面の向こうにいるのが男性なら当社においてもメンズ化粧品の広告が流れるという男女の出し分けだけでも、広告費の半分を有効活用できます。

デジタルで行われているターゲティングに近いことがテレビでできれば無駄がない、というのが、やはり最終結論ですね。デジタルも、閲覧サイトなどからのターゲットの類推などを含むとブレもあると思いますが、響く人が約10%しかいないという状況と比べると大きな違いです」

 資生堂の小出氏のように、広告主の間では次世代のテレビ広告への期待は高い。仮にリーチ単価が上がっても、効率が良ければ高い値段で広告を買うという意見は多い。つまり、同時配信とプログラマティックTVを組み合わせれば、単価が上がって、テレビ局も儲かるとみている人は意外と多いのだ。

 一方で、テレビ局の人たちにプログラマティックTVの話をすると、広告単価が値崩れするのではないかと懐疑的な人が多い。

 ネット広告と同じようなビジネスモデルでプログラマティックTVの領域に足を踏み入れても、GoogleやFacebookなど技術的に優位な企業と横並びになってしまう。コンバージョン効率で対抗できなければ、単価が値崩れすると懸念する。それは、もっともな意見だ。

 ただ、今のペースで視聴率が落ち続けるなら、収益は悪化する一方だ。既にリーチ数が減少している訳で、認知やブランディング目的でテレビ広告を利用する広告主も減少している。

 逆にいえば、テレビ局は、リーチ数を維持しながら、コンバージョン効率を上げることができれば、かなり優位に立てるはずだ。というのは、コンテンツパワーはまだまだ強い。さらに、GoogleやFacebookがやっていないビジネスモデルで、かつ、そう簡単に彼らが参入できない環境を構築できればベストだ。

 私は、そのキーになるのが、マイデータとGDPR(General Data Protection Regulation:EU一般データ保護規則)だと考えている。マイデータについては前回の記事で書いた。ここでは、マイデータやGDPR、プログラマティックTV、そして、リゾーム化社会などについて、理解のある前提で、テレビ局がどのようなビジネスモデルを構築していくべきか、私の考えを提示してみたい。

次のページ
既存の民放テレビビジネスを置き換えると、どうなるか

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
リゾームマーケティングの時代連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

有園 雄一(アリゾノ ユウイチ)

Regional Vice President, Microsoft Advertising Japan

早稲田大学政治経済学部卒。1995年、学部生時代に執筆した「貨幣の複数性」(卒業論文)が「現代思想」(青土社 1995年9月 貨幣とナショナリズム<特集>)で出版される。2004年、日本初のマス連動施策を考案。オーバーチュア株式会...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2018/10/17 13:49 https://markezine.jp/article/detail/29377

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング